増え続ける非正規雇用者 日本のワーキングプア問題

非正規雇用問題に見る日本企業のオワコン度


非正規労働者が増えて企業の業績は上がったのか?

 

やりがい搾取の構造

非正規雇用が増えて企業の内部留保は過去最高に

小泉政権下で進められた規制緩和政策の一環として、「労働者派遣事業」が多くの業種に解禁されたのが2005年です。これはその前年の2004年から2017年までの非正規雇用率と企業内部留保の推移を比較したグラフです。

 

非正規雇用率と企業の内部留保

 

昨年(2018年)秋ごろに、2017年の企業統計調査が発表されると、新聞各社は一斉に「企業の内部留保は過去最高の446兆円!」と報道しました。

2005年の内部留保が200兆円ですから、わずか12年で2倍以上に膨れ上がったことになります。

グラフを見れば一目瞭然ですが、非正規雇用率と企業の内部留保は比例して増加しています。

 

 

 

非正規が増えても企業の生産性は上がっていない

企業の内部留保が増えたのは「経営努力によって生産性が向上したから」と見る向きもあるかもしれません。そこで国内全産業の中で、最も非正規労働者の多い小売業の生産性と非正規雇用の関係を比較してみました。

 

非正規雇用と小売業の生産性

 

生産性と非正規雇用率を単純比較することは難しいので、2015年を「100」として、その前後の年を指数化してみました。

元々、非正規雇用の多い小売業においても、さらに非正規雇用化が進んでいることがわかると思います。

一方、生産性は2008年の世界同時不況によって店舗業務の合理化が進んでいったん急上昇しますが、2013年には頭打ちとなり、以降はむしろ低下しています。

また客単価は2009年の買い控えで一時的に落ちましたが、全体的には横ばいです。つまり非正規雇用の増加が、必ずしも企業の業績に貢献しているとは言い難い、ということになります。

 

 

企業の好業績は経営努力ではなくただの賃金カット

企業の内部留保は過去最高を更新し続けていますが、それは非正規労働者の活用による生産性向上のおかげではなく、単に正規雇用を低賃金の非正規に置き換えたことによる人件費削減効果に過ぎません。

この時期はJRの事故や企業の不祥事が相次ぎました。そして個別労使紛争が年々増加していることを考えると、むしろ経営の質は悪くなっていると考えられます。

 

 

 

非正規労働者の増加によって貧困化する国民

 

生活困窮する国民

下がり続ける家計消費水準

労働者側にはどのような影響が出ているのでしょうか?

本来であれば賃金データと比較するのがベストなのですが、厚生労働省の不正統計事件のおかげで労働関係のデータは信用できませんので、総務省の「サラリーマン家庭の消費水準データ」を用いて検証してみます。

 

非正規雇用と家計消費水準

 

これも2015年を指数100として、前後の年を比較してみました。非正規雇用が増えるにつれて、サラリーマン家庭の家計消費水準がどんどん下がっていることがわかると思います。

労働者が低賃金かつ雇用が不安定な非正規に大量に置き換わったことで、給料を消費よりも貯蓄にまわす人が増えたためです。

 

 

 

非正規雇用によって激増する生活保護

これは非正規雇用率と生活保護率の推移を比較したグラフです。

 

非正規雇用と生活保護率

 

派遣解禁後から生活保護率がジワジワと上昇していますが、2008年の世界同時不況後に、非正規雇用率も生活保護率も急増しています。

 

 

 

非正規雇用問題の元凶

ひとりの男の私利私欲に騙された日本

 

企む男

派遣労働者の対象職種を拡大したのは、当時の小泉政権下で総務大臣を務めていた、現パソナ会長そして東洋大学教授の竹中平蔵氏です。

彼は米国留学時代にフリードマンらのネオ・コンサバティブ思想にどっぷり浸かり、「能力のあるヤツがリッチになって何が悪い」といわんばかりに、当時のオリックスの宮内会長やパソナの南部会長と結託して、派遣事業を解禁してしまいました。

ネオ・コンサバティブは市場原理こそが正義です。能力ある者は栄え、無能な者はさっさと世の中から退場してしまえという思想です。少なくとも竹中氏の頭の中には、社会福祉といった概念はありません。

 

その後、多くの労働集約型産業において、非正規雇用が拡大していった理由は、以前にこのシリーズで解説した通りです。

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戦略性の無い日本企業の経営マネジメント

 

社員を使い捨てにする日本企業

平成不況後の失われた10年の間に、日本の多くの企業は身を切る覚悟で経営の合理化を進めたはずでした。

しかし結局のところ、その実態は仕事の生産性を改善したのではなく、正規社員を低賃金の非正規に置き換えて人件費を浮かし、その利ザヤをタンス預金(内部留保)しているだけです。

ムダな内部留保を止めて自社の人材に投資すれば、社員の離職率が下がって人材不足が解消し、さらにサラリーマンの消費が増えて、企業自身も不毛な価格競争から脱却できるのですが、なぜか多くの偉い人達はその単純な理屈が理解できません。

本来、非正規雇用制度は、硬直化した旧来の人事制度を破壊し、人材の流動化を促進して、企業にとっても、労働者にとってもウインウインの関係を構築できるはずのシステムでした。

しかし日本の多くの企業に戦略性が無いことから、小手先の雇用調整の手段としてチープな使われ方をされているのが実情です。

 

 

 

さっさと国外脱出した方が話が早い

竹中平蔵氏は「無能な人材が正社員として会社にぶら下がっているのは社会にとっても大きな損失…」と述べています。

確かにそれは間違っていないのですが、「ぶら下がり社員」のような労働者を生む土壌を作ってきたのは、日本の教育であり、日本の独特な就職制度や雇用慣行です。

それを棚上げして個々の労働者に対して一方的に責任を背負わせるのは酷というものです。

 

非正規雇用制度を有効活用するには、まず「非正規労働者=いつでも使い捨てにできる安くて都合の良い人材」という、誤った考え方を社会から一掃することです。

使いたい時だけ労働者を低賃金で酷使し、不要になったら一方的に切り捨てるような現在の非正規雇用制度は、雇用システムというより、単なる奴隷制度でしかありません。

 

最近、若手識者の間で「日本企業はオワコン」と言われて久しいです。

このまま非正規問題を放置しておくと、そう遠くないうちに有能な人材は国外脱出してしまうでしょう。

現在は国外でもネット環境さえあれば、日本から仕事を受注できる時代ですので、これは決しておおげさな話ではないのです。

END

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