この記事のポイント
賃金支払5原則
賃金は、労働者が会社で働いた対価として支払われるものであり、労働者は、賃金で生活を維持しているため、労働基準法では、使用者が適正に労働者に賃金を支払うように、5つの原則を定めている。
通貨払いの原則
原則
賃金は通貨によって支払わなければならない。
例外
労働者の同意を得た上で、労働者が指定する金融機関への振込みの方法で賃金を支払うことができる。また労働組合のある職場では、労働協約を締結することにより、例えば通勤手当の支給に代えて、通勤定期券を支給することができる。
なお、キャッシュレス決済の普及にともない、令和4年11月の法令改正(施行規則)によって、電子マネーによる賃金支払いも認められることになった。
直接払いの原則
原則
賃金は労働者に対して直接支払わなければならない。
例外
労働者が病気により欠勤している時に、その家族に賃金を手渡したり、派遣元事業者が、自社の派遣労働者に対して、派遣先の事業者を通じて賃金を支払うことなどは認められている。
全額払いの原則
原則
賃金はその全額を支払わなければならない。
例外
社会保険料や源泉所得税など、賃金控除によって徴収する旨、法令に規定されているものや、社内積立金や親睦会費などについて、労使協定を締結したものは、賃金から控除できる。
なお、従業員のミスに対して罰金を徴収するブラックバイトが問題になっているが、民法では、使用者は従業員の仕事を通じて利益を得るのだから、故意または重過失がない限り、従業員のミスによる損失も当然に負担すべき(報償責任の原則)としている。
毎月1回以上払いの原則
原則
賃金は毎月1回以上の頻度で支給しなければならない。
例外
賞与や臨時手当、また精勤手当や勤続手当など、1ヶ月以上の算定期間により支払われるものを除く。
一定期日払いの原則
原則
賃金は一定の支給日を決めて支払わなければならない。
例外
賞与や臨時手当、また精勤手当や勤続手当など、1ヶ月以上の算定期間により支払われるものを除く。
賃金支払5原則の対象外
端数処理
賃金計算の過程で行われる端数処理は、全額払いの原則に違反しないものとされている。
- 時間外勤務、休日出勤、深夜勤務等の実績の集計において、1時間未満の端数を30分未満切り捨て、30分以上を1時間に切り上げとすること。
- 時間外手当、休日手当、深夜手当等の金額の計算において、1円未満の端数を50銭未満切り捨て、50銭以上を1円に切り上げとすること。
- 1ヶ月間の時間外手当、休日手当、深夜手当等の金額の計算において、1円未満の端数を50銭未満切り捨て、50銭以上を1円に切り上げとすること。
調整的相殺
誤って賃金を過払いしてしまった場合に、翌月の賃金から、過払い分を控除して相殺することは、相殺する時期、金額、方法などが労働者の経済生活を不当に脅かすものでない限り、全額払いの原則に違反しないものとされている。
賞与支給の在籍要件
賞与は一般的に過去の勤務成績に応じて算定されるものですが、賞与の支給対象者を、賞与支給日に在籍している労働者のみとする就業規則は、有効であるとされています。
罰則
労働基準法では、賃金支払5原則への違反に対し、30万円以下の罰金を規定している。また賃金支払5原則違反の原因が、時間外手当の未払いだった場合には、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金刑も科される。
<当サイト利用上の注意>
当サイトは主に小売業に従事する職場リーダーのために、店舗運営に必要な人事マネジメントのポイントを平易な文体でできる限りシンプルに解説するものです。よって人事労務の担当者が実務を行う場合には、事例に応じて所轄の労働基準監督署、公共職業安定所、日本年金事務所等に相談されることをお勧めします。