新入社員の教科書

新入社員の教科書㉗ 知っておきたい給与支払の大原則


給与の支払方法は法律で決まっている

 

給与明細

給与とはなんだろうか?

みなさんは「給与」とは何か、具体的に説明できますか?

それにはまず雇用契約を思い出して頂きたいのですが、雇用契約とは「労働者が使用者に対して労働サービスを提供し、使用者はその対価として給与を払う」ものです。

つまり給与とは、みなさんが「使用者に販売した労働サービスの代金」ということになります。

 

給与は雇用契約の根幹

本シリーズの「㉕赤字決算より怖い資金ショート」でも説明したように、企業間取引では代金の支払いが不能になると取引契約を解除されます。

これは給与についても同様で、給与は労働者の大事な生活の糧であると同時に、雇用契約の根幹にかかわる重要事項です。そのため給与の支払いや計算方法については、法律で細かくルールが定められています。

今回は2回にわけて「給与」の支払いルールと計算のしくみについて解説します。

 

 

賃金支払の5原則

 

労働基準監督署

「給与」は法律上は「賃金」といいます。そして「賃金支払の5原則」によって、賃金の支払い方法が法律で具体的に定められています。(労働基準法第24条第1~2項)

 

通貨払いの原則

給与は通貨でもって、現金渡しもしくは振込で支払わなければなりません。

これは給与支払いにかこつけて、自社の製品や商品券によって「現物支給」することを禁止したものです。

「労使協定」を結べば、通勤手当を通勤定期券で現物支給することは可能です。(「労使協定」=労基法が例外を認めている条項について、労使が協定した例外ルール)。

 
 

全額払いの原則

給与はその全額を労働者へ支払わなければなりません。

これは経営者が「罰金」などの名目で労働者の給与をピンハネしたり、また「社内貯金」を強制して、給与を運転資金に流用したりすることを禁じたものです。

 

毎月一回以上払いの原則

給与は最低でも、月に1回以上の頻度で支払わなければなりません。

給与の支払い期間が長期化することで、労働者の生活が不安定になり、また労働者を不当に拘束して、転職の自由を奪うことになるからです。

 

一定期日払いの原則

給料日を具体的に決めて支給しなければなりません。(「具体的」とは「毎月25日」などのように、給与日を明確に特定することです)

「毎月第三金曜日」など、月によって支給日が変わると、労働者の家計の管理(ローン返済や公共料金の支払い等)が大変になるからです。

 

直接払いの原則

給料は労働者本人に対して直接支払わなければなりません。

これは使用者と労働者の間に、人材ブローカーなどが介在して、給与をピンハネすることを防止するためです。

給与を銀行口座振込する場合は、親や配偶者など、労働者本人以外の口座名義では振込できません。

 
 
 

就業規則(給与規定)

 

就業規則

常時10人以上の労働者を雇用する使用者は、「就業規則」を定めて労働基準監督署に届け出し、従業員にその内容を周知しなければなりません。

そして就業規則には、必ず規則内に明示しなければならない「絶対的記載事項」というものがあり、給与に関するルールもその中に含まれます。(労働基準法第89条)

 

給与の決定方法

基本給や各種手当の金額の決め方についてのルールです。多くの企業では「等級号俸表」、「支給手当一覧表」などが、補足資料として添付されています。

 

給与の計算方法

給与計算の対象期間(毎月1日~月末日)や、時間外割増手当(残業手当)や欠勤控除などの計算方法についてのルールです。

 

給与の支払方法

通常は、現金で支給するか、労働者の指定する金融機関の口座に振り込む方法を採ります。

 

締め切り日と支給日

給与計算の対象期間と支給日についてのルールです。

具体的には「固定的手当(基本給や住宅手当)は当月支給とし、変動的手当(時間外手当)を翌月支給とする」等です。

時間外などの変動的手当は、月末で締め切らないと勤務実績が確定しないので、当月中に支給することが不可能だからです。

 
 

昇給に関するルール

定期昇給の時期と昇給額の決定方法についてのルールです。ただし定期昇給制度の無い企業であれば、就業規則に条項を定める必要はありません。

 

 

その他の給与関係法令

 

正規雇用と非正規雇用の処遇格差

同一労働・同一賃金

同一労働・同一賃金ガイドライン

「同一労働・同一賃金の原則」とは、同じ仕事内容なら、賃金も同じであるべき、という考え方で、欧米先進国では古くから当たり前でした。

しかし日本では非正規雇用者が正規雇用者と同じ仕事をしているのに、給与や賞与、退職金などの労働条件において大きな格差が生じており、社会問題化していました。

このような背景から、日本においても平成32年の「改正労働基準法」の施行に合わせ、「同一労働・同一賃金」が適用されることになります。

また「同一労働・同一賃金」以外にも、「公正な処遇」について、いくつかの法令が定められています。

 

労働契約法

労働契約は、労働者と使用者が、就業の実態(雇用身分ではなく仕事内容)に応じて、均衡(処遇の公平性)を考慮しつつ結ばなければなりません。(労働契約法第3条2項)

 

パートタイム労働法

使用者は、正社員と同じ仕事をするパートタイマーに対して、パートであるという理由で、賃金、その他の待遇について、差別してはなりません。(パートタイム労働法第9条)

 

男女雇用機会均等法

使用者は、募集、採用および採用後の配属、昇進降格、教育訓練などについて、労働者の性別によって差別的な取り扱いをしてはなりません。(男女雇用機会均等法第5~6条)

 

最低賃金法

給与は「最低賃金法」でもって、地域別、職種別に「最低賃金額」が定められており、「最低賃金額」は毎年10月1日に改定されます。(最低賃金法第4条1~3項)

 

民法(債権保全)

先取(さきどり)特権

会社が倒産した場合は、弁護士が破産管財人となって、会社の残余財産を債権者(銀行や取引先)の取り分に応じて分配し、会社を清算します。

しかし未払いの給与(退職金と賞与は除く)については、債権者に優先して労働者に支払われることになります。(民法第308条)

 

消滅時効

未払いの給与や残業代、もしくは退職金については、会社に対して請求を行わないと、給与は給料日から2年間、退職金は退職日から5年間で請求権が消滅してしまいます。

これを「消滅時効」と言いますが、内容証明郵便などの方法でもって、会社に対してきちんと請求書を送る必要があります。(民法第167条)

 

 

ダブルワーク時代の給与管理

 

確定申告する男性

今後は複業(ダブルワーク)や副業(サブワーク)が当たり前の時代になります。

従来のように、いったん就職したら「給与の内容は会社にお任せ」ではなく、契約内容に従ってきちんと給与計算されているのか、事業者の目線でチェックした方がよいでしょう。

また給与に係る税金も、自分で確定申告するようになりますので、給与についての基本的な法令や社内ルールについて、きちんと理解しておきましょう。

END

 

参考

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