給与計算の仕組み
給与計算の基本構造
前回は給与支払ルールについて説明しました。そこで今回は具体的な給与計算のしくみについて解説してゆきたいと思います。
給与計算の基本構造はこのようになっています。
「総支給額」ー「控除額」=「手取り額」
給与計算とは、上記の金額を計算し、手取り額を確定させて、みなさんの銀行口座に振り込むまでの作業をいいます。
「総支給額(支給項目)」は「固定支給」と「変動支給」に、「控除額(控除項目)」は「法定控除」と「法定外控除」にそれぞれ分けられます。
基礎賃金の計算方法
「基礎賃金」とは、時間外手当や休日出勤手当、また欠勤控除など、変動的な支給もしくは控除額を計算する際のベースとなります。「基礎賃金」の計算方法は次の通りです。
「基礎賃金」={「固定的支給額(基本給+諸手当)」-「基礎賃金から除く手当」}÷「1か月の平均労働時間※」
※「一か月の平均労働時間」=「1日の所定労働時間」×「年間労働日数」÷12カ月
なお「基礎賃金から除く手当」は以下の7つです。
<基礎賃金から除く手当>
1.家族手当
2.通勤手当
3.別居手当(単身赴任手当等)
4.子女教育手当
5.住宅手当
6.臨時に支払われる手当(慶弔見舞金など)
7.賞与
給与の支給項目
固定的支給
「固定的支給」は基本給や住宅手当など、毎月一定額が固定的に支給されるものをいいます。
変動的支給
「変動的支給」は、時間外手当、休日出勤手当などのように、当月の勤務の実績に応じて、支給額が毎月変動するものをいいます。
固定的な手当は「当月締め切り、当月支給」とし、変動的な手当は「当月締め切り、翌月支給」としている会社が多いようです。
深夜割増手当
ここからは変動手当の基本的なものを、いくつか紹介します。
「深夜割増手当」は、22時から翌日5時までの深夜勤務について、基礎賃金の25%に当たる金額を支給するものです。
「深夜割増手当」は深夜勤務に対して支給される手当ですので、通常勤務か時間外勤務かを問わず、深夜時間帯の勤務であれば支給の対象となります。
時間外割増手当
「時間外割増手当」は、1日8時間もしくは1週40時間を超える勤務に対して、基礎賃金の25%にあたる金額を支給するものです。
1日8時間もしくは1週間で40時間の労働時間を「法定労働時間」といい、労働者に法定労働時間を超えて勤務させるためには、労使間で「36協定」を結んでいなければなりません。
時間外勤務が深夜時間帯に及んだ場合は、「時間外割増手当」と「深夜割増手当」の両方が支給されます。
月間の時間外勤務が60時間以上におよんだ場合には、使用者は60時間を超える時間外勤務に対して、基礎賃金の50%の「時間外割増手当」を加算しなければなりません。
基礎賃金の50%という高い割増率が設定されているのは、長時間の時間外勤務を抑制すると同時に、使用者に対するペナルティという意味合いがあります。
休日勤務手当
法定休日に出勤した場合は、基礎賃金の35%にあたる「休日勤務手当」が支給されます。
「法定休日」とは1週間で1日以上、1か月間で4日以上、使用者が労働者を休ませなければならない休日のことで、何曜日を法定休日にするかは会社の任意です。
法定休日に出勤し、なおかつ深夜時間帯に勤務した場合は、「休日勤務手当」と「深夜割増手当」がダブルで支給されます。
法定外休日勤務については、「時間外割増手当」が支給されます。また勤務時間が深夜時間帯であれば、「深夜割増手当」も支給されます。
給与の控除項目
給与から控除されるものは、法律で控除することが決められている「法定控除」とそれ以外の「法定外控除」の2種類があります。
法定控除
社会保険料
健康保険料
私達が医療機関を受診すると、医療費の自己負担が3割で済みます。それは残りの7割が「医療保険」から支払われるためですが、この財源となっているのが私達の給与から控除されている「健康保険料」です。
健康保険料は「標準報酬月額」の10.25%(H30年4月~北海道)を労使で折半し、そのうちの半分をみなさんの給与から天引きします。
介護保険料
高齢者の介護サービスは、利用者が介護サービス料の1割を負担し、残りの9割を「介保保険」でまかなう仕組みになっています。そして介護保険の財源となっているのが「介護保険料」です。
介護保険料は、みなさんが満40歳に到達した月から、控除されることになります。
健康保険料と同様に、標準報酬月額の1.75%(H30年4月~北海道)を労使が折半して、それぞれ負担しています。
厚生年金保険料
厚生年金制度は「世代間扶養方式」といって、現在の高齢者が受給している年金を、現役世代が納めている「厚生年金保険料」でまかなう仕組みになっています。
厚生年金保険料は、標準報酬月額の18.3%(H30年4月~北海道)で、これを労使で折半して、それぞれ負担します。
労働保険料
雇用保険料
「雇用保険料」は、みなさんが失業した時に受給する失業保険や、その他の雇用関係助成金の財源となります。
雇用保険料は業種によって料率が異なりますが、一般的な会社員の保険料率は0.9%で、労働者が0.3%、使用者が0.6%を負担することになっています。
雇用保険料は通勤手当も含めた総支給額に対して、保険料率をかけて計算します。
労災保険料
労働者が通勤途中もしくは業務に起因して事故に遭ったり、病気にかかったりした場合は、健康保険ではなく、「労災保険」を使って医療機関を受診することになります。
この労災保険の原資となっているのが「労災保険料」ですが、労災保険料は全額使用者負担となりますので、みなさんの給与からは控除されません。
労災で医療機関を受診した際は、医療費の自己負担はありません(全額労災保険)。
租税公課(そぜいこうか)
源泉所得税
サラリーマンの給与に課税される所得税のことを「源泉所得税(源泉税)」といいます。
実は、毎月みなさんの給与から控除されている源泉税は「概算額」で、年末に税額を確定し、一年分の概算額と相殺して過不足を調整します。
個人住民税
個人住民税(住民税)は、居住地の住民に対して課税される税金です。
住民税は、前年の所得額に対して課税される「所得割」と、住民全員に均等に課税される「均等割」の合計額です。
新卒社会人については、入社2年目の給与から住民税が控除されることになります。
法定外控除
財形貯蓄や団体保険料など
財形貯蓄や団体生命保険料など、法定控除以外のものを労働者の給与から控除する場合は、労使間で労使協定を結ぶ必要があります。
欠勤控除
「ノーワーク・ノーペイの原則」により、使用者には労働者が欠勤した分について、給与の支払義務はありません。
一方、「欠勤控除の扱い」については、現在のところ具体的な法令が存在しません。よって欠勤控除の額については、労使間で協議して決めることになりますが、基礎賃金を欠勤控除の単価とするケースが多いようです。
給与計算のしくみを知って手堅く資産形成する
給与計算は一見難しそうですが、前述のポイントさえ押さえておけば、エクセルを使って自分で計算することができます。
今後は少子高齢社会が加速し、社会保障(医療・介護・福祉)財政や、地域インフラを維持するために、社会保険料や税金の負担が増してゆくことは間違いありません。
そのような社会情勢の中で、自分の収入がどのように決まるのか、仕組みを知っている人と、知らない人とでは、将来自身が採るべきキャリア戦略も大きく変わってきます。
給与計算は、時代を映す鏡であり、国政をダイレクトに反映するものですので、これを機にルールや仕組みをしっかりと理解し、キャリア設計に活かしてゆきましょう。
END
参考
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新社会人が検定資格を狙うべき理由
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人事部長オススメの新社会人が狙うべき検定資格TOP4!
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ビジネス実務法務検定3級
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