意外と知らない公的保険
長いサラリーマン人生においては、時として重篤な傷病や、予期せぬ失業に見舞われたりすることがあります。
もし公的保険の充分な知識があれば、不意に高額な出費が生じたり、収入を絶たれたりするようなことがあっても、急に経済的困窮に陥るリスクを回避することができます。
今回はサラリーマンが利用できる主な公的保険制度についてご紹介します。
労働者災害補償保険
「労働者災害補償保険(労災保険)」は、業務に起因した傷病によって医療機関を受診したり、休業することになった際の費用を保障する制度です。
労災には業務中の事故による「業務災害」と、通勤途中の事故による「通勤災害」の2つがあり、正社員だけではなく、パートやアルバイトも労災保険の適用対象となります。
なお労災保険料は事業主が全額を負担することになっています。
補償内容
労災による傷病のために医療機関にかかった時の医療費(全額)、休業中の生活保障費(「基礎給付日額」の60%)が労災保険から支払われます。
また労災によって障害が残った場合には、「障害年金」もしくは「障害年金一時金」が支払われます。
また本人が死亡した場合には、遺族に対して「遺族年金」もしくは「遺族年金一時金」が支給されることになります。
基礎給付日額は労働基準法の基礎賃金と同じです。
第三者行為災害
業務中に社外の第三者の過失によってケガを負った場合、または通勤途中に交通事故にあった場合は、労災保険を適用する前に、相手方の損害保険から補償を受けることになります。
これを「第三者行為災害」といい、前者であれば相手が加入している損害保険、後者であれは相手ドライバーの自動車賠償責任保険が優先して適用されます。
労災によるケガのため、真っ先に医療機関を受診した場合は、必ず医療機関の窓口で労災である旨をきちんと伝え、健康保険証は絶対に使わないでください!
健康保険
療養の給付
病気やケガのために医療機関を受診すると、かかった医療費の3割が患者負担、残りの7割が健康保険から支払われますが、この7割分を「療養の給付」といいます。
健康保険は、大企業であれば自前の健康保険組合、中小企業であれば全国健康保険協会(協会けんぽ)、そして自営業者は国民健康保険になります。
患者負担分については未就学児が2割、前期高齢者(70歳以上)が2割、後期高齢者(75歳以上)が1割、それ以外の現役世代が3割となっています。
傷病手当金
健康保険の加入者が、労災以外の原因で傷病にかかり、入院や療養のために4日以上休業し、なおかつ給与が支給されなかった場合には「傷病手当金」が支給されます。
支給額は一年間の平均標準報酬月額を30日で割った額の2分の3で、休業4日目から最長で1年6か月まで支給されます。
高額医療費還付
1か月間に支払った医療費の自己負担分が高額になった場合、「自己負担限度額」を超えた医療費について、払い戻しを受けられる制度です。
例えば標準報酬月額が26万円以下であれば、自己負担限度額は57,600円で、同一月で57,600円を超えて支払った医療費が払い戻されます。
なお払い戻しまでには通常3か月以上かかるために、返金予定額の8割を無利息で前借できる「高額医療費貸付制度」もあります。
限度額認定制度
前述の高額医療費還付を受ける場合、いったん自分で高額医療費を立て替え払いした上に、還付まで3か月以上待たされるので、家計には大きな負担となります。
そこで協会けんぽから「限度額適用認定証」を交付してもらい、健康保険証と一緒に医療機関に提示することで、最初から自己負担限度額を超える医療費を支払わなくて済みます。
失業保険
再就職先が決まる前に離職した場合に、経済的な心配をせず、就職活動に専念できるよう失業中の生活保障を行う制度で、正確には「求職者給付の基本手当」といいます。
基本手当を受給するには、①就職する意思があり、②ハローワークに求職申し込みをしており、③いつでも働くことが可能であることが条件です。
また雇用保険の加入期間が12カ月以上あることが必要ですが、会社が倒産したり、上司のパワハラなどにより、やむを得ず退職した場合などは、加入期間が短くでも受給できます。
厚生年金保険
基礎年金
「基礎年金」は、原則として60歳になるまでに10年以上の加入期間があれば、65歳になった時から受給することができます。
全加入期間(20歳から60歳までの40年間)を通して、保険料を全額納めた場合に受け取ることができる年金額(満額)は、平成31年4月時点で年間780,100円です。
これはサラリーマンも自営業者も公務員も同じ制度です。
厚生年金
「厚生年金」とはサラリーマンが「基礎年金」に上乗せして受給できる年金で、もらえる年金の額は、現役時代に収めた年金保険料の額によって変わります。
基礎年金に上乗せされるので、建物にたとえて基礎年金を「一階部分」、厚生年金を「二階部分」と呼ぶこともあります。
厚生年金基金
「厚生年金基金」とは、建設業や石油業など、業界団体ごとに、その業界で働く従業員の福利厚生のために設立された企業年金制度です。
基礎年金と厚生年金に上乗せして支給されるので、三階部分とも呼ばれ、掛け金は全額事業主が負担します。
導入企業にとっては福利厚生のウリでしたが、平成不況の時に、多くの基金が財政難に陥って解散してしまいました。
確定拠出型年金(日本版401k)
確定給付型年金と確定拠出型年金
これまで説明してきた年金制度は「確定給付型」と呼ばれるものです。
これは高齢者が受け取る年金の額を確約する代わりに、その原資となる年金保険料は、年金機構の財政事情に応じて増減しますよ…というものです。
一方で「確定拠出型」年金とは、納める年金保険料は一定ですが、将来受け取れる年金額は運用しだいで増えたり減ったりします…という制度になります。
アメリカの「内国歳入法401条K項」をベースに制度設計したために、「日本版401K」と呼ばれています。
確定拠出型年金のしくみ
「拠出金」と呼ばれる年金保険料を、株式や投資信託に投資し、その運用益でもって老後資金を準備するというもので、拠出方法によって「企業型」と「個人型」があります。
「企業型」は企業が拠出金を負担するもので、退職金制度の代わりに導入されるケースが多く、「個人型」は社員個人が自分で拠出金を出し、自分で株や投資信託を運用するものです。
どちらも年間に拠出できる金額には上限があり、また公務員および厚生年金基金制度のある企業では利用できません。
公的保険をどんどん活用しよう
就職したら社会保険や労働保険に加入することになりますが、健康保険や厚生年金以外のメリットについては、意外と知らない人が多いものです。
これまでに解説したものはあくまでも基本的な制度ですので、自分のキャリアプランに合わせていろいろ調べてみることをおすすめします。
ご参考までに、今後みなさんにとって便利と思われる制度を簡単にご紹介しておきます。
出産手当金 | 子供を出産したら支給される |
育児休業給付金 | 育児休業中の生活保障費 |
教育訓練給付金 | 資格取得のための費用助成 |
介護休業給付金 | 介護休業中の生活保障費 |
高年齢雇用継続給付金 | 定年再雇用時に下がった給与を補填する |
埋葬料 | 葬儀代の補助 |
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参考
人事部長オススメの新社会人が取るべき検定資格TOP4
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新社会人が検定資格を狙うべき理由
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人事部長オススメの新社会人が狙うべき検定資格TOP4!
フィナンシャル・プランニング技能士3級
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ビジネス実務法務検定3級
世の中は売り手と買い手、使用者と労働者など、他人同士の利害関係で成り立っているといっても過言ではありません。そして利害関係にはコンフリクトがつきものですが、それを解決するためのルールこそ法律なのです。そして法律は「知っている者に味方する」とも言われます。法律の基本を知ることで詐欺やハラスメントから身を守ることができます。
日商簿記検定3級
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ITパスポート試験
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