STEP1 人材を育成する目的は何か?
なぜ人材が育たないのか?
人材育成がうまくゆかないという企業は少なくありません。そしてこれらの企業に共通しているのは「人材育成の目的」が明確でないということです。
外部の講師を招いてやみくもに研修会を実施しても、経営者の望むような人材は育ちません。なぜなら研修会やワークショップはあくまでも人材育成の「手段」であって「目的」ではないからです。
「目的」が明確でないと、「手段」が的外れなものになってしまい、効果が上がらないのは当然です。
人材育成の目的を決める3つのポイント
POINT1 自社のミッションは何か?
「ミッション」とは企業理念であり、自社が社会で果たすべき使命や、企業が世の中に存在する理由のことをいいます。そして人材育成の目的とは、自社のミッションに共感し、経営者と共にミッションを遂行してくれる人材を育てることです。
POINT2 自社のビジョンは何か?
「ビジョン」とは事業の展望であり、自社がめざすべき将来の姿です。そして人材育成の理想的な姿とは、社業の発展を通じて個々の社員が成長し、自己実現を行ってゆくことです。
POINT3 社員のバリューは何か?
「バリュー」とは自社の社員が持つべき価値観のことです。人の価値観というものは多種多様ですが、仕事においては自社のミッションやビジョンを実現するためにふさわしいバリューを身に付ける必要があります。
STEP2 人材の何を育成するのか?
精神論は後回しでいい
日本の企業の人材育成の特徴として、「社会人とは?」などといった精神論から入るケースが非常に多いということが上げられますが、一方で飲食店やコンビニの「不適切動画」事件に見られるように、モラル教育の効果については大いに疑問があります。
なぜ多くの企業が熱心にモラル教育を行っているにも関わらず、不適切動画事件が減らないのか?というと、それは仕事のルールと仕組みがきちんと整備されておらず、従業員の良心に依存したオペレーションを行っているからです。
業務管理の基本は仕事のルールと仕組みづくり、すなわちルーチンの確立であり、人材育成とは従業員に対してルーチンを適正に運用するために必要な知識やスキルを教育することです。
基本的な知識もスキルも育っていないのに、精神論ばかり振りかざしても社員の心には響きません。
人材育成のテーマを決める3つのポイント
POINT1 実務能力
POINT2 対人コミュニケーション能力
POINT3 マネジメント能力
何を育成するか?実務能力・対人コミュニケーション能力・マネジメント能力の関係図
(GIGWORKS作成)
STEP3 人材をどう育成するのか?
戦略と戦術
人材育成の目的とテーマが「戦略の策定」であれば、人材育成をどのように行ってゆくのか?ということは「戦術の選択」になりますが、従来より「OJT」「OFF-JT」「SD」の3点セットが人材育成手法の定番となっています。
最近はワークショップやロールプレイングを社員研修に取り入れる機会が多くなりましたが、これらも基本的にはどのような状況下で行うかによって、OJT、OFF-JT、SDのいずれかに集約されます。
人材育成手法の3つのポイント
POINT1 OJT(職場訓練)
「OJT」とはオンザジョブトレーニングのことで、実務の現場において、上司や先輩から直接的な指導を受けながら、実践的なトレーニングを行う人材育成の手法です。
理論的な深い知識はあまり身に付きませんが、実地でもって実務を通してトレーニングを行うことで、短期間で実践力が身に付くだけでなく、マニュアルにはない現場のノウハウも得ることができます。
POINT2 OFFーJT(職場外教育)
「OFFーJT」とはオフザジョブトレーニングのことで、一時的に職場を離れ、研修やセミナー形式でもって人材育成を行います。
OFF-JTはあくまでも机上の人材育成手法ではありますが、日常業務によって研修が中断されることがないため、短期集中的に高度な理論などを学ぶのに適しています。
また最近はロールプレイングやワークショップを採り入れて、講師と受講生が双方向から研修に参加することで、学びをより深めるような工夫をしたOFF-JTが増えています。
POINT3 SD(自己啓発)
SDはセルフデベロップメントつまり自己啓発のことです。何をどのように学ぶかは本人次第ですが、大企業では自前の社会人大学を開講したり、中小企業では中小企業大学校への通学費用を一部助成するなどの取り組みもあります。
STEP4 人材育成の成果を評価する
人材育成と評価はセットで行うもの
冒頭で「人材育成の上手くゆかない企業は人材育成の目的を明確にしていないから…」というお話をしましたが、これは人材育成の目的が明確でないが故に、適切な評価を行えていないということでもあります。
本来は人材育成とその成果についての評価はセットです。そして評価の結果を社員本人にフィードバックして自身の内省を促し、本人が自ら行動を変えるキッカケを与える必要があります。
適切に評価を行う3つのポイント
POINT1 職務ラダー評価シート
「職務ラダー評価シート」とは、職種や職責などに応じて社員がマスターすべきバリューと実務能力をチェックシート様式に整理したものです。
名称こそ企業によってまちまちだと思いますが、基本的に半期ごとに各チェック項目について、社員本人が5段階で自己評価し、それに直属上長が同じく5段階で一次評価を行い、担当役員が二次評価を加えて評価を確定させるというものです。
POINT2 MBO(目標設定による管理)
「MBO」とはマネジメントバイオブジェクティブの略で「目標設定による管理」という意味です。これは半期ごとに上司と部下との間で目標設定面談を行い、上司からのフィードバックを通じ、課題と目標について部下に自主的に立案させる手法です。
人は他人から押し付けられた目標は受け入れないが、自分が立案に参画した目標であれば、むしろ自ら進んで達成に向けて努力する、という考え方に基づいています。
POINT3 360度フィードバック
「360度フィードバック」とは、自身の対人コミュニケーション能力について、上司や同僚、部下などから(匿名でもって)多面的に評価を行ってもらい、フィードバックしてもらう手法です。
これは「ジョハリの窓」というフレームワークですが、対人関係が上手くゆかないのは、自己評価と他己評価との間に大きな認識のズレがあるからであり、開放の窓を大きくして双方のギャップを小さくすることで対人関係を改善しようという考え方です。
自己開示を積極的に行って「秘密の窓」を、そして360度評価を受けることによって「盲点の窓」を極力小さくすることで、「開放の窓」を広げてゆくことができます。
STEP5 人材育成を成功させる制度運用
人材育成と評価・処遇は3点セット
「人材育成」と「評価」はセットで運用しないと人材は育たないというお話をしましたが、評価した後は昇進や昇給などの方法できちんと「処遇」してあげることが大事です。
よく「うちの会社は慈善事業をやってるんじゃない」といって社員を叱咤する経営者の方がいますが、社員の側にしてもボランティアのために出社している訳ではありません。
企業が人材育成を行うのは、人材の質を高めて経営効率を上げ、最大限の営利を追求するためです。であればその成果について「処遇」という形でもって社員に還元するのが筋でしょう。
END
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