ブラック企業に負けない方法

自己都合退職を偽装した退職勧奨の現状と実態


退職勧奨とは

 

退職届

自己都合退職と退職勧奨のちがい

「自己都合退職」とは労働者本人の事情によって、自主的に勤務先を退職することをいいます。
一方、「退職勧奨」とは使用者側から労働者に対して退職を勧奨することをいいます。労働者本人は退職を望んでいませんが、会社側から「ウチの仕事は合っていないんじゃない?」などと、面談の場で退職するように、それとなくほのめかされることです。
さらに「いつまでこの会社にいるつもりだ!さっさと退職願を出せ!」などと威圧的に退職を強要されることを「退職強要」といいます。
 
 

労働関連法令上の扱い

この「退職勧奨」ですが、「労働基準法」上にはそのような概念はありません。
労働基準法上は「自己都合退職」か「会社都合退職」の2つだけです。そして会社都合退職は「解雇」ということになります。
「退職勧奨」とは、実は「雇用保険法」上の概念であり、失業保険の受給資格に関係します。
失業保険の受給日数や支給開始時期は、「自己都合」か「会社都合」か、という退職事由によって大きく変わります。そして雇用保険法では「解雇」ではないが、「退職勧奨によって退職を余儀なくされた者」という「特定受給資格者」という区分が設けられています。
雇用保険法上は、「望まぬ退職」を余儀なくされた労働者の再就職を支援するために「退職勧奨」という区分を設けていますが、労働契約法では「退職勧奨」は「不当解雇」扱いとなり、解雇は無効とされるのが一般的です。

 

 

 

退職勧奨の現状

 

リストラされる社員

退職勧奨による個別労使紛争の発生件数

これは平成20年度から平成29年度にかけて発生した主な個別労使紛争について、発生件数の推移を表したグラフです。

個別労使紛争相談件数推移

(厚生労働省「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」より転載)

退職勧奨は概ね毎年2万件強で推移し、大きな増減が無いように見えます。また解雇の件数はこの10年間で激減しています。しかし注目すべきは「いじめや嫌がらせ」などの職場ハラスメントと「自己都合退職」に係る相談件数が激増していることです。

これは企業が「解雇」「退職勧奨」という、企業側にとってリスクの高い正攻法を用いることを避け、「職場イジメ」によって「自己都合退職」に追い込み、実質的な「解雇」や「退職勧奨(強要)」を行っていると見た方が自然でしょう。

 

 

平成不況の悪夢再び…45歳以上の大リストラが始まった

平成30年頃からIT系企業を皮切りに、国内でも名の知られた大企業が45歳以上の中高年をターゲットにしたリストラに踏み切りました。

主なところでは富士通、NEC、カシオ計算機、エーザイ、千趣会、日本ハム、旺文社、アルペン、協和発酵キリン、コカ・コーラなどですが、それに追い打ちをかけるように経団連やトヨタ自動車の会長が「終身雇用制の放棄」を宣言したのは記憶に新しいところです。

平成不況の時にも、多くの中高年サラリーマンがリストラのターゲットにされ、連日「追い出し部屋」で執拗な退職強要を受けていましたが、前述の企業の中には「追い出し部屋」を復活させた職場もあるようです。

 

 

 

 

なぜ会社は自己都合にしたがるのか?

 

NGサイン

解雇権濫用法理に抵触

労働契約法第16条には「解雇権の濫用は無効」と明記されており、社長であっても好き勝手に労働者を辞めさせることはできません。解雇が認められるのは、労働者が犯罪に準ずるような悪質な行為を行った場合(懲戒解雇)や、傷病によって長期的に復職の見込みが無い場合(普通解雇)に限られます。

さらに平成16年の労働基準法改正により、就業規則と雇用契約書に、解雇に該当する事由を具体的に明記するように定められました。もしこれらの法規を無視して経営者が労働者を解雇した場合、解雇は無効となり、労働者が被った経済的損害について、経営者は賠償責任を負うことになります。

 

 

雇用関係助成金の支給停止

雇用調整助成金やトライアル雇用助成金などの、雇用関係助成金を受給している企業の場合、労働者を解雇(退職勧奨も含む)すると、助成金の支給が打ち切られます。またこれまでに受給した助成金を返納し、さらに今後6か月間は助成金の受給申請ができなくなるというデメリットがあります。
雇用安定のための助成金を、自社の社員を解雇するような企業には支給しない、という制度上の趣旨から、このような措置が採られるのです。

 

 

ハローワーク求人票の不受理

企業が人材採用を行う時は、まずハローワークへ求人申し込みを行うことが一般的だと思います。

その一方で社員の入退職があった時にも、ハローワークで雇用保険の資格得喪手続きを行いますが、あまりにも会社都合(退職勧奨含む)による退職者が多い企業については、ハローワークは求人申し込みを受理しないことがあります。

求職者の就労支援というハローワークの目的を考えると、次から次へと社員を使い捨てにしているような企業へ、安易に人材を紹介する訳にはゆかないからです。

 

 

 

 

会社都合で退職するメリット

 

ハローワークの窓口

失業保険

給付制限期間の有無

自己都合退職で失業保険を受給しようとする場合、失業認定されてから7日間の待機期間と、3か月間の給付制限期間を経て、4か月目からようやく失業保険を受給することができます(図の上段)

しかし会社都合退職であれば、3か月間の給付制限期間がありませんので、7日間の待機期間が終わるとすぐに失業保険を受給することができます(図の下段)

 

失業保険受給期間




 

給付日数の違い

また失業保険の受給日数も、自己都合退職が最長で150日間なのに対し、会社都合退職では330日です。これは会社の都合で予期せぬ離職を強いられた労働者が、経済的に困窮して再就職活動に支障を及ぼすことを避けるための措置です。

<自己都合退職の場合>

失業保険受給期間(自己都合)

 

 

<会社都合退職の場合>

失業保険受給期間(会社都合)

 

 

国民健康保険

退職して失業状態になると、前職の社会保険(組合健保・厚生年金)から脱退し、新たに国民健康保険と国民年金に加入することになりますが、会社都合退職の場合は国民健康保険料が本来納付すべき額の3分の1程度に減額されます。

国民年金は失業状態にあれば、年金保険料の減額もしくは全額免除してもらうことができます。この場合は退職理由は自己都合でも会社都合でも構いません。

 

このように日本では解雇が厳しく制限されているために、柔軟な雇用調整ができません。そのため企業側による陰湿な職場ハラスメントや退職強要が行われ、泣く泣く「一身上の都合」で退職願を書かされている労働者が多いのが実情です。

今後は非正規労働者(有期雇用)の無期転換や、同一労働同一賃金ガイドラインの施行によって、会社側の都合による身勝手なリストラが増加してゆくことが予想されます。またその方法も自己都合退職を偽装した実質上の退職強要が横行すると思われます。

しかし自己都合退職と会社都合退職の大きな違いを考えると、安易に泣き寝入りすることは避けるべきでしょう。

END


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