働き方改革の趣旨
働き方改革の主な施策は、残業時間規制の厳格化、年次有給休暇の取得義務化、管理職を含めた従業員の健康管理増進、多様な働き方への対応などでした。
これらに共通することは経営者に対しては生産性の改善を、労働者に対しては経済的自立を求め、会社依存型のライフスタイルから脱却し、ワークライフバランスの質を高めることであると見ています。
働き方改革の時代背景
労働力人口の減少
2008年をピークに日本の人口は減少に転じ、少子高齢化も相まって労働力人口(15歳~64歳)も急激に減少してゆきます。
労働力人口が減少するということは、国の経済力の弱体化を意味し、また税金の担い手が減ることで医療や教育などの公共サービスを維持できなくなる恐れがあるということです。
国は高齢者や外国人の活用を積極的に推進していますが、やはり現役世代の労働力をいかに効率良く活用できるかが最優先課題でしょう。
超高齢社会の加速
2025年に団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)に到達し、日本の高齢者人口はピークを迎えます。
日本の人口は減少してゆくと前述しましたが、減少するのは労働力人口であって、当面の間は高齢者人口の絶対数は変わらず、総人口に占める構成比がどんどん増してゆきます。
すでに2025年問題と言われているように、日本の医療や介護サービスのキャパシティは限界であり、政府は医療機関や介護施設から在宅医療や居宅介護サービスへのシフトを推進しています。
内需の縮小と需要の質の変化
かつて日本は輸出立国と言われ、外需依存型の経済であるという誤った認識がありましたが、実は日本経済は外需と内需が半々です。
人口が減少して高齢者が増えると内需が縮小します。なぜなら高齢者は若い世代ほど生活関連の支出が少ないからです。
そして内需のボリュームが縮小すると同時に需要の質も変化してゆきます。
それは生活関連支出にせよ、娯楽関連の支出にせよ、高齢者の場合は若い世代に比べて単価が低く、趣向が偏っているため、ニーズの変化に合わせて国内の産業構造も変化せざるを得なくなるからです。
終身雇用・年功処遇の完全崩壊
2019年に経団連の会長が「終身雇用および年功処遇はすでに制度疲労を起こしており、雇用維持のための事業は存続させるべきではない」とコメントして、長らく日本独特の雇用慣行であった終身雇用・年功処遇型の人事制度は終焉を迎えました。
これを平たく言えば、会社は従業員の一生まではとても面倒を見きれないので、自分の人生は自助努力でもって切り開いていって欲しいということです。
職場うつによる労災と自殺の増加
日本は、年間の自殺者が3~4万人前後で推移し、交通事故で無くなる人のおよそ10倍という異常な社会でもあります。
そして自殺の多くが職場や仕事に起因するものであり、職場うつによる労災認定数も年々増加しています。
また日本の職場は長時間労働で知られ、すでに「過労死」という言葉が英語になるくらいに世界的に悪評高いため、最近では外国人労働者が日本を敬遠し、むしろ韓国や中国での就労を望むようになっています。
国際競争力のさらなる低下
日本のGDPはアメリカ、中国に次ぐ世界第3位であり、オワコンニッポンと言われつつも、日本が世界の経済大国であると信じて疑わない人は多いと思います。
しかしGDPを国民一人当たりに換算した場合、日本の世界ランキングは26位まで下がってしまいます。
実は日本が世界第3位の経済大国であるのは、1人あたりGDPの低さを人口の多さでカバーしていたからであり、今後、人口減少が加速すると日本の国際社会における経済的な位置づけはどんどん下がってゆくでしょう。
これまでの日本のサラリーマンの特徴
世間一般に通用するスキルがない
これまでの日本のサラリーマンは、学力偏差値の高い学校を卒業し、就職偏差値の高い企業に入社すれば、定年まで生活安泰でした。
そこでは仕事で成果を上げることよりも、むしろ職場での協調性や謙虚さといった組織に従順な態度が重視され、仕事の生産性よりも残業や休日出勤を厭わない職場への忠誠心が評価されました。
ゆえに日本の多くの職場では、会社の外で通用するスキルを持たない、いわゆる「社畜」と呼ばれる付加価値を生まない人達が量産されてしまったのです。
社会性が大きく欠如している
かつての日本の男性サラリーマンの多くは、家事や育児は基本的に奥さん任せでした。
しかし家庭は社会の最小単位と言われており、家庭の運営ひとつできないのに会社組織の運営などできるはずもありません。
また今や多くの企業においてCSR(企業の社会的責任)への取り組みは不可欠ですが、日頃、自分の暮らす地域社会になんら関わりを持たない人間が、勤め先においてCSRなどまともに推進できるはずがないのです。
金融リテラシーが著しく低い
収入源が勤め先からの給与所得のみというサラリーマンは多いですが、今のご時世にサラリーのみのシングルインカムは極めてリスキーです。
終身雇用制度の崩壊とともに年功型賃金や退職金制度も保証されなくなり、リーマンショックやコロナショックのたびに人員整理のハードルが緩和されてきているので、有事の際には一瞬で生活の糧を失うでしょう。
ゆえに最近は「生活防衛資金」の必要性が認識されてきていますが、日本人はいまだに預金信仰が根強いのも事実です。
銀行は預金者から集めた資金を企業に貸付して利ザヤを稼いでいますが、定期預金の金利は0.01%であるのに対して、銀行が企業に貸付する際の金利はおよそ1.5%です。
この金利差はなんと150倍ですが、個人向けの銀行カードローンになると貸付金利は15~20%もの高利になります。我々はそろそろ預貯金などという言葉自体がまやかしであるという事実に気づくべきではないでしょうか?
これからのサラリーマンに求められること
「就社」から「就職」へ
日本で一般的に就職と言われているのは「就社」のことです。
就社で大事なことは社内の調和を乱さないことであり、ゆえにいかに個性を殺すかが重要であったが、その弊害については前述した通りです。
しかし、これからは社内でしか通用しない「なんでも屋」は要りません。むしろ会社の看板が無くても自力で稼げるだけの高度な専門スキルを身につけておく必要があります。
そして今後はジョブ型採用が進んでゆくため、自分のウリを簡潔明瞭にPRできるようなキャリア形成は必須でしょう。
社内自営業者になる
会社のレールに乗っかれば、終身面倒をみてもらえるような時代ではなくなりましたので、自営業者になったつもりで複数の収入ルートを構築し、賢く資産運用を行って生活防衛資金を確保し、積極的にリスクヘッジを行ってゆかねばなりません。
社畜根性を捨て、自営業者として、また投資家としてのマインドを持たないと、アフターコロナの世界を生き抜くことはできないでしょう。
社会人としての立ち位置を自覚する
育児に積極的に参加し、立派な日本人を育てるのも我々国民の責務であり、たかが一企業のエゴ(営利)のために自分の人生を消耗している場合ではありません。
そして自分を育ててくれた老親の介護のために職を追われ、その結果、生活が困窮して自ら死を選ばざるを得ない国のどこが豊かな先進国なのでしょうか?
我々はサラリーマンである以前に地域社会の一員であり日本国民でもあります。決して「サラリーマン=社会人」ではないということを自覚すべきでしょう。
働き方改革の意図するもの
働き方改革の本音はサラリーマンを長時間労働から解放し、健康的な生活を確保して労働力の損耗を最小限に抑え、減りゆく貴重な労働力の生産性を高めて国全体で有効活用することです。
併せて労働時間や働き方に柔軟性をもたせることで、在宅医療や居宅介護を推進し、来る2025年問題に備えようという意図も感じられます。
一方で、例えば副業を奨励しつつも本業と副業の労働時間が合算されるため、企業側に残業規制に抵触するリスクが生じるなどの矛盾点も散見され、施策内容の整合性に充分な検証がなされたとは言い難く、我々としては働き方改革にうまく乗っかりつつも、さらなる経済的自立の道を探ってゆく必要があるでしょう。
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