人事部の視点 話題のトピック

ひきこもり・ニート問題を人事屋視点で考える(前編)ひきこもり・ニート問題をおさらいしてみる


深刻化するひきこもり問題

中高年のひきこもりは全国に61万人もいる

厚労省によると、「仕事や学校に行けず家にこもり、家族以外とほとんど交流の無い人」で、なおかつ「その状態が6ヶ月以上続く場合」をひきこもりであると定義しています。

またNHK特番「ひきこもりクライシス“100万人”のサバイバル」においては、40歳から64歳までの中高年のひきこもりは全国に61万人も存在し、「8050問題」が深刻な社会問題になりつつあると伝えています。

 

待ったなしの8050問題

「8050問題」とは、80代の老親の年金収入に依存する50代の中高年ひきこもりが日本全国で増加しつつあり、彼らの多くが長年のひきこもり生活によって満足な就労スキルを身に付けておらず、老親の死去とともに生活の経済的基盤を喪失してしまうことです。

一方で超高齢社会の進行と労働力人口の減少によって社会保障財政は年々逼迫しており、生活保護に充当できる財源も先細ってゆくのではないかと懸念されています。

 

ニートとひきこもりは何が違うのか?

ニートは就労しない若者のこと

ニート(NEET=Not Employment, Education, Training)とは、就労せず、就学せず、職業訓練も受けずにブラブラしている若者という意味で、内閣府の「子供・若者白書」では15歳~39歳の若年無業者を指し、その数は2018年時点で71万人います。

就労していないという点ではひきこもりと同じですが、非就労の事情は様々であり、決して全てのニートが自宅から出ないという訳ではないようです。

 

急増するニート人口

平成不況が始まった1995年のニート人口は55万人なので、20年強の間に16万人も増加したことになりますが、これは北海道の帯広市や釧路市の人口に匹敵する規模です。

また1995年の世代別ニート人口は、10代、20代、30代についてほぼ均等でしたが、2018年には30代だけで全ニート人口の半分を占めるようになっています。

つまりニートの高齢化が進み、71万人といわれるニート人口のおよそ半数が中高年ひきこもり予備軍となりつつあるのは間違いないようです。

 

ニートは日本だけの問題ではない

ニートに対して「飽食ニッポンの生んだ弊害」といった厳しい論調が散見されますが、実は国際的には日本のニート比率は少ない方です。

OECDの統計によると、日本の15歳~30歳の人口に占めるニートの割合は9.82%ですが、OECD加盟国平均では15.46%にもなります(OECD2014年統計データ)。

主要先進国別では、アメリカ15.05%、イギリス14.40%、フランス16.25%、カナダ13.41%とおしなべて日本より高く、イタリアなどは27,71%と日本の3倍にも達します。

唯一、ドイツが9.17%で概ね日本と同水準ではありますが、ニートは諸外国でも共通の社会問題であることがわかります。

 

なぜひきこもり・ニートになるのか?

ひきこもりは対人関係の失敗が原因

ひきこもりになりやすい人の特徴として、繊細な感性をもち、優しい性格の人が多く、また発達障害などの疾患をもっていたり、精神的に未成熟な親の下で健全な人間関係構築の方法を学べずに育ったりした人もいます。

これら対人関係においてハンディのある人達が、職場で何らかのハラスメントを受け、それがトラウマになってひきこもりに至るケースが少なくないようです。

 

多岐多様なニートの事情

ニートの場合はひきこもりとは事情が異なり、就労しない理由は人それぞれです。

内閣府の「令和元年版 子供・若者白書」によると、ニートである理由でもっとも高いものは怪我や病気で就労できない人で、ニート全体の3割に相当します。その一方で、今は働く必要が無いから、もしくは特に就労しない理由はない、という人も3割程度存在します。

なお冒頭で「全てのニートが自宅から出ないという訳ではない」と述べましたが、ニートの半数が実質的にひきこもり状態にあるという調査結果もあり、非就労のまま職業スキルを積まない状態が続くことで、いずれニートもひきこもり問題に収斂されてゆくと思われます。

 

ひきこもり・ニートに対する支援と問題

厚労省ひきこもり対策推進事業の概要

ひきこもりやニートに対する公的支援については、厚労省が主管となって「ひきこもり対策推進事業」を展開しています。これは主に2つの事業から成り、ひとつは「ひきこもり地域支援センターの設置運営事業」です。

「ひきこもり地域支援センター」とは、「ひきこもり支援コーディネーター」とよばれる精神保健福祉士や臨床心理士などの専門家が、ひきこもりに悩む本人やその家族の相談に乗り、就労へ向けたカウンセリングなどを行う機関で、全国の都道府県および指定都市に75箇所設置されています。

そしてもうひとつは、「ひきこもりサポーター」と呼ばれるひきこもり支援を行う人材を育成し、各地域においてひきこもり世帯への訪問サポートを行うというものです。

 

公的支援の実体はお粗末すぎるお役所仕事

一見、「ひきこもり対策推進事業」の事業スキームやガイドラインはよく出来ていて立派な内容ですが、ひきこもり地域支援センターの相談対象者は40歳未満のひきこもりであり、社会問題化している中高年のひきこもりは門前払いされるのが実情です。

また39歳未満の相談者であっても、複数の窓口をたらいまわしにされた挙げ句、結局はハローワークを斡旋されて、「さっさと働いてはどうですか?」などと突き放されるという、いかにもお役所的なお粗末な対応が問題となっています。

ひきこもりサポーター養成事業については、人材養成事業の民間委託にかかる補助金申請にあたり、リクルートや東京リーガルマインドが必要経費を水増し請求するなど、社会福祉のための公的資金が補助金ビジネスの喰い物にされています。

 

引き出し屋による人権侵害問題

ひきこもりの子供を抱える老親の不安に乗じて何百万円という高い報酬をぼったくり、ひきこもりの子供を施設に軟禁して、暴言や暴力でもって就労させようとする「引き出し屋」と呼ばれる悪徳業者が新たな社会問題となっています。

このような引き出し屋が跋扈する背景には、日本には元々ひきこもりのようなメンタル問題に対して科学的にアプローチしようとする意識が薄く、「本人の甘え」などと自己責任論でもって安直に片付けてしまう風潮が強いことがあります。

それに加えて川崎市の通り魔殺人事件や元農水省事務次官が息子に刺殺された事件の加害者がいずれもひきこもりの中年男性であったことから、ひきこもりの子息を抱える老親の不安を煽り、肝心の公的機関が相談や支援の窓口としてまともに機能していないことも、引き出し屋を世間にのさばらせる要因となっています。

 

ひきこもり・ニート問題とどう向き合うか?

世界的に有名な経営学者のP.F.ドラッガー博士は、リーダーシップの巧拙は先天的な才能や性格よりもむしろトレーニングの質や量に比例すると述べています。

筆者は精神医学の専門家ではないので断定的なことは言えませんが、もし対人コミュニケーションの失敗によってひきこもりになってしまった場合、良質な対人コミュニケーションのトレーニングを受け、就労先を慎重に選ぶことで、社会復帰が可能になるかもしれないと考えています。

よって次回は企業側の視点からひきこもりやニートをどのように雇用し、活用してゆくか、そしてひきこもりやニートの立場から、社会復帰へ向けてどのような課題に取り組んでゆくべきか考察してみます。

(次回へ続く)

 

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