人事部の視点 労務管理の仕事

知っておかないと損する年末調整のおはなし(前半)


そもそも年末調整って何か知っていますか?

年末に何を調整するのだろうか?

サラリーマンの給与から毎月天引きされる税金には所得税と住民税の2種類があります。

このうち所得税については、「給与所得の源泉徴収税額表」にもとづく概算額を毎月の給与から予め天引きしておき、年末に確定額を計算し直して、これまでに天引きした概算額と相殺することになっています。

これまでに多めの概算額を収めていた人は還付金が戻ってきますが、少なく収めていた人は不足分の税金を追納することになります。

このように年末に年税額を確定し、概算額との差額を調整する作業のことを年末調整というのです。

 

年末調整は誰がどこで行うのか?

年末調整の対象となるのは年収2,000万円以下のサラリーマンです。

そしてその年の12月31日の時点で勤めている会社において、年末調整を行ってもらうことになります。

年末調整の事務を行うのは、その会社で給与計算を担当している部署ですが、会社によっては人事部や総務部が担当したり、もしくは経理部だったりする場合もあります。

 

所得税と住民税の関係

年末調整が終わると翌年1月末までに税務署と市町村役場に「給与支払報告書」を提出して年末調整の結果報告を行うことになっています。

この「給与支払報告書」とは、皆さんが年末調整の後で受け取る源泉徴収票と同じものを、従業員の住んでいる市町村ごとにまとめ、総括表を付けたものです。

源泉徴収票は4枚1組になっており、1枚が従業員用、1枚が税務署用、残りの2枚が市町村役場への提出用となり、実は会社控というものはありません。

ちなみに所得税は国税(税務署)であり、住民税は地方税(市町村役場)ですが、なぜ国税である年末調整の結果報告を市町村役場にも行うのか?というと、年末調整で確定した1年間の給与所得の額をベースに、各市町村役場で来年度の住民税の計算を行うからです。

翌年1月末までに各企業から提出された給与支払報告書をもとに、各市町村役場では2~4月頃にかけて住民税の算定を行い、5月頃に各企業宛に新年度の住民税額通知書を送付します。

そして各企業では6月から翌年の5月にかけて、新しい住民税の額を従業員の給与から天引きする仕組みになっているのです。

 

年税額はどうやって決まるのか?

税金を課税するしくみ

会社の法人税は売上から経費を差し引いて残った純利益(儲け)に対して課税されます。

サラリーマンの給与にかかる所得税についても法人税と概ね同じような仕組みになっており、1月から12月の給与および賞与の総支給額から、経費見合いの金額を控除し、残った純利益に対して課税するようになっています。

会社の経費については、決算書の損益計算書(厳密にはこれを税務申告用にアレンジしますが、ここで割愛します)にある、商品原価や人件費、広告宣伝費、水道光熱費、社屋や営業車の保険料などです。

一方でサラリーマンの経費とは、給与を稼ぐために必要な食費や住居費および光熱費もしくは被服費などの生活費などが該当します。

 

通勤手当は課税対象外

サラリーマンの所得税は、給与と賞与の総支給額から経費を差し引いた残りの利益相当額に課税されると説明しましたが、給与にははじめから課税の対象外となる手当があります。

雇用契約において給与とは、労働者が労働の対価として経営者から受け取る金銭のことをいいますが、通勤手当については通勤に要する経費を労働者が立替払いしたものを会社が後から清算するものなので労働の対価とはいえず、最初から所得税は課税されないのです。

ただし全額非課税となる通勤手当は公共交通機関の定期代相当額であり、マイカー通勤の場合には厳密に経費を算定できないため、通勤距離に応じて一部について非課税となっています。

 

年税額の計算において経費扱いとなるもの

具体的な年税額の計算事例については次の章で詳述しますが、年税額の計算においてはまず始めに12ヶ月分の給与と賞与の総額を「本年度の合計所得金額の見積額」という表にあてはめて、合計所得金額に換算します。

例えば北海道の平均年収は425万円ですが、この場合の合計所得金額は296万円になります。

この年収総額425万円と合計所得金額296万円の差額の129万円が、いわゆるサラリーマンの経費見合いの額ということになるのです。

さらに1年間に収めた社会保険料(健康保険、介護保険、厚生年金)や雇用保険料、また自分や扶養家族の生命保険料、地震保険料などを経費分として合計所得金額から差し引くことができます。

 

人事部から見た年末調整の流れ

11月上旬 年末調整申告書の配布

一般的な年末調整の流れは、まず11月上旬に人事部が国税庁のホームページから今年度の年税額の計算や申告書の記入方法などの変更点をチェックし、申告様式をダウンロードして自社の従業員に配布し、月末頃を目処に回収します。

 

11月末頃 年末調整申告書の回収

2020年度であれば従業員が会社へ提出する申告書は「基礎控除申告書(兼)給与所得者の配偶者控除申告書(兼)所得金額調整控除申告書」「扶養控除等(異動)申告書」「保険料控除申告書」ですが、住宅ローンを支払っている人は「住宅借入金等特別控除申告書」も併せて提出することになります。

 

12月上旬 年末調整申告書のチェックと不備訂正

12月から人事部が従業員から回収した申告書の不備をチェックし、随時問い合わせや訂正を行ってゆきますが、一般的によくある不備は押印モレ、前職の源泉徴収票や生命保険料支払証明書などの証票類の貼付モレ、また各種控除額の計算ミスなどです。

特に奥さんのパート収入やお子さんのアルバイト代のなどの申告額がいい加減だと、必ず翌年の秋頃に税務署から年末調整のやり直しと追納の通知が届くのでしっかり確認して頂きたいと思います。

 

12月中旬 冬期賞与の支給と年末調整データの給与システム入力

冬期賞与の支給が終わり、12月の給与計算が始まる頃ですが、すでに年末調整の申告書のチェックが完了し、本年度の年末調整データ(扶養家族の人数や各種控除の額)が給与計算システムに入力されている状態です。

 

12月下旬 12月給与計算と年税額の確定

12月の給与支給と同時に年税額と調整額も確定し、本年度の源泉徴収票を作成して給与明細に同封し、各従業員へ配布します。

なお給与計算をアウトソーシングしている場合は、これらのスケジュール全般について10日間ほど前倒しで進めてゆくケースが多いようです。

また最近はWeb年調アプリなども豊富になってきており、用紙ベースでの年末調整は徐々に少なくなってきています。

(次回へ続く)

知っておかないと損する年末調整のおはなし(後半)

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