人事部の視点 労務管理の仕事

知っておかないと損する年末調整のおはなし(後半)


年税額の計算の仕方(北海道在住Aさんのケース)

シミュレーションの前提条件

例えば北海道在住のサラリーマンAさんを例に、年税額がどのように決まるのかザックリとシミュレーションしてみましょう。

Aさんの年収は北海道平均の425万円とします。

なおここでは計算を簡素化するために年収を12ヶ月で割り、月給を35.4万円とし、そこから毎月の社会保険料を54,900円、所得税を5,130円、そして住民税は所得税の3倍相当の15,000円として計算します。

また配偶者は年収103万円でAさんの扶養とし、17歳の高校生の子供が1人いるという設定で話を進めてゆきたいと思います。

 

合計所得金額の計算

最初に「基礎控除申告書(兼)給与所得者の配偶者控除申告書(兼)所得金額調整控除申告書」の「あなたの本年度の合計所得金額の見積額」表にAさんの年収をあてはめて合計所得金額を算出します。

具体的には4,250,000円÷4×3.2-440,000=2,960,000円が本年度のAさんの合計所得金額となります。

 

課税所得金額の計算

合計所得金額から各種控除額を差し引いて課税の元となる課税所得金額を算出します。

Aさんの合計所得金額からまず1年間に収めた社会保険料の総額54,900円×12ヶ月=658,800円と、夫婦で支払った生命保険料120,000円(上限)を差し引きます。

ここからさらに本人や扶養家族の所得や人数に応じた控除を行いますが、Aさん一家の場合はAさん本人分の基礎控除48万円、配偶者控除38万円、お子さんの扶養控除38万円を差し引いた残額の841,200円が課税所得金額となります。

 

年税額の計算

「年末調整算出所得税額速算表」により、課税所得金額842,200円×税率5%=42,000円(百位未満切り捨て)が年調年税額となります。

もし住宅ローン借入金控除があればその額を差し引くことになりますが、ここでは住宅ローンは割愛させて頂き、復興特別所得税2.1%を加算した42,800円(百位未満切り捨て)が本年度の年税額となります。

最後にこれまでに月々の給与から天引きされた概算額5,130円×12ヶ月=61,560円と確定額42,800円の差額の18,760円が12月の給与支給時にAさんに還付されることになります。

 

年末調整あるあるQ&A

なぜ前の勤め先の源泉徴収票が必要なのか?

これはサラリーマンの所得税の計算期間が1月~12月なので、12月31日に勤めている会社が、前職分も合算して年税額を確定する義務があるからです。

なお12月31日の時点で就職していない人は年末調整の対象とはならず、翌年の2月中旬に、前の年の1月~12月までに勤めていた会社の源泉徴収票に基づいて、住所地を管轄する税務署にて確定申告を行うことになります。

 

生命保険料払込証明書の証明額が2種類あるのはなぜか?

保険会社から送られてくる保険料支払証明書には証明書の金額が高い方と低い方の2種類があるため、どちらを記入してよいか悩んだ経験のある人は少なくないでしょう。

これは証明書発行時点で本人が実際に支払った保険料と、もし年末まで保険を解約せずに保険料を収めた場合の支払見込額であり、年末時点で保険を継続しているのであれば見込額(高い方)を、すでに保険を解約してしまった場合は証明額(低い方)をそれぞれ記入すれば大丈夫です。

 

シャチハタがNGなのはなぜか?

「基礎控除申告書(兼)給与所得者配偶者控除申告書(兼)所得金額調整控除申告書」などの年末調整の申告書には自署捺印する欄がありますが、この印鑑については「シャチハタ不可」と言われたことのある人は多いかもしれません。

シャチハタがNGな理由は印鑑の面がゴムなので押す角度や力加減で印影が変形してしまい、承認や申告のエビデンスとして公文書に用いるには不適切だからです。

 

年末前に退職したらどうするのか?

年末調整は12月31日の時点で勤めている会社において、1年間の年税額の計算を行うものなので、年内に転職した場合は年末に在籍している会社に、これまでに勤めた会社の源泉徴収票を提出して年末調整を行ってもらうことになります。

なお年末の時点で再就職していない場合は年末調整はできませんので、年明けの2月中旬から住所地を管轄する税務署にて確定申告を受けて頂くことになります。

 

年末調整に間に合わなかったら?

よくあるのが前職の源泉徴収票や生命保険料支払証明書を紛失してしまい、再発行を依頼している間に、年末調整申告書の提出期限が過ぎてしまったというものです。

これについては翌年2月中旬に自分の住所地を管轄する税務署へ行って、確定申告をしてもらうほかありません。

よく人事部に「そこをなんとかしてくれ!」と頼みにくる人がいますが、これまで解説してきたとおり、前職の給与や生命保険料の支払額がわからなければ、そもそも年税額の計算ができないので、どれだけしつこく懇願してもこれは無理な相談でしょう。

 

人事マンが語る年末調整のウラ話

扶養控除等(異動)申告書を提出しないと課税額はハネ上がる!

給与の所得税には「甲欄」と「乙欄」という2つの種類があります。

「甲欄」は主業の勤務先から支給される給与に、そして「乙欄」は副業先から支給される給与に適用されますが、「甲欄」に比べると「乙欄」の税率の方がはるかに高くなっています。

例えば先のAさんの年収425万円の場合では、甲欄で徴収される税額が月々5,130円に対して、乙欄が適用されると53,700円にもなってしまいます。

これは税法において、主業の給与はサラリーマンの生活の糧なので税金はあまり重くできませんが、副業からの副収入にはガッツリと課税しても構わないだろうという考え方になっているからです。

なお甲欄が適用されるためには勤務先に「扶養控除等(異動)申告書」などの年調関係の申告書を提出しなければならず、未提出の者に対しては甲欄を適用してはならないことになっているので注意が必要です。

 

日本のサラリーマンは徴税のカモ

一口に所得といっても事業所得、不動産所得、配当所得、利子所得、雑所得など、給与所得以外にもたくさんの種類があります。

通常これらの所得については損益通算といって、所得およびこれらの所得を得るために要した経費や損失などを合算してから確定申告を行います。

よく映画やドラマで中小企業の経営者が顧問の税理士に「これは経費で落とせる?落とせない?」と相談しているシーンを見かけますが、これは経費を多く計上することで、課税所得が少なくなるからです。

一方のサラリーマンについては事前に(多めの)概算額でもって税金を前払いさせられ、経費として見なされる額も厳しく制限されてしまっています。

この徴税方式を源泉徴収制度といい、ゆえにサラリーマンの給与所得に課税される税金を源泉所得税といいますが、源泉徴収制度のために日本の労働者の8割以上を占めるサラリーマンは、国にとって格好の徴税のカモとなってしまっているのです。

ましてや副業でアルバイトでもしようものなら乙欄の税額が適用されてしまうので、副業の効率が非常に悪いといえるでしょう。

個人的には主業は勤め人として年末調整を行い、副業は自営業者として毎年自分で確定申告をするというハイブリッド型の働き方がこれからのサラリーマンの賢い生き方ではないかと思うのです。

(おわり)

知っておかないと損する年末調整のおはなし(前半)

 

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