事務職志望の就活生の大きな勘違い

そもそも事務職ってなんだ?
筆者は長年人事部門で採用を担当してきましたが、四年制大学の就活生というものは、今も昔も呆れるほどに事務職志望が多いです。
面接で、「なぜ事務職を志望するのか?」と学生に質問すると、きまって多くの学生が「事務仕事が好きだから。」「事務が一番自分に合っていると思うから。」という答えが返ってきます。
そこで「事務とはどんな仕事なのか?」と少し意地悪に掘り下げて聞いてみると、多くの学生が返答に窮するようです。
一応、彼らもしくは彼女らなりに、なんとかそれらしい回答をひねり出そうと頑張って考えているようなのですが、これまで何百人もの面接を経験してきた中で、「なるほど!」と思わせるような明快な回答が得られたことはありません。
事務職志望の学生のホンネ
就活生が事務職を志望した動機を注意深く整理してみると、そこには3つの本音が透けて見えるようです。
- きれいなオフィスで一日中パソコンに向かって仕事をしたい
- 人と関わらずに、黙々と自分ひとりで作業できるような仕事がしたい
- 几帳面な性格なので事務が向いていると思っている
結論からいえば、応募の動機がこれら3つに当てはまった学生は全て不採用にしています。オマエは仏心のかけらも持ち合わせていないのか?とお叱りを受けるかもしれませんが、こういった学生は根本的に就職の目的と手段をはきちがえています。
世の中の事務職はどんな人達か?
事務職には2つの種類がある
一般的に会社が従業員を雇うのは、自社の経営目的を実現するためであって、公益事業の一貫として学校を卒業した学生達のために就職口を世話しているわけではありません。
ゆえに前述の「事務が好き」などといった学生側の都合などは、企業にとってはどうでもよいことなのです。
一方で「でも、どこの会社にだって事務員がいるじゃないですか!」という反論も聞こえてきそうです。
たしかにそれば事実ではありますが、一見して事務員に見えるような仕事であっても、その実態は管理部門のスペシャリストと、営業部や製造部などのライン部門の雑務を行ういわゆる昔ながらの事務員の2種類です。
そして前者は、財務会計、人事労務、情報システムなどの専門分野に特化したスペシャリスト集団であり、企業が法律に則り効果的に収益を拡大してゆくために、専門家としての立場から、経営陣や各ライン部門に対して必要な助言や勧告を行うことが仕事です。
ゆえに管理部門のスペシャリストに求められる資質は、豊富な専門知識と高度な情報収集力および分析力、そして経営層の意思決定を促すプレゼンテーション力、さらに現場の理解と協力を得ながらミッションを完遂するためのファシリテーション力であり、従来の事務員とは全く似て非なるものなのです。
事務作業は仕事の手段であって目的ではない
スペシャリストの仕事の現場には、事務職を志望する多くの就活生がイメージするような、一日中パソコンの前に座って、ひとりで黙々とデータ入力を行っているような旧来の事務員のまったりした雰囲気などは微塵もありません。
それは管理部門のスペシャリスト達にとってパソコン仕事などというものは、仕事の成果をあげるための手段のひとつに過ぎず、むしろ経営陣へのプレゼンテーションや他部署とのネゴシエーションに多くの労力を費やすことが重要だからです。
一方で職業研究をロクに行わずに管理部門に応募してくる学生に限って、うかつにも「事務の仕事ができればどこの部署でもいいです!」などと口走ってしまうことがあります。
しかし高度専門職として自分の仕事にプライドを持ち、常にプロフェッショナルであり続けようとストイックなまでに自己研鑽を怠らないスペシャリスト職にとっては、「何でもいいから事務がしたい」などという志望動機は、自分たちのキャリアに対する冒涜以外の何物でもないということは知っておくべきでしょう。
近い将来に事務職は消滅する
仕事の手段はイノベーションとともに変わる
とはいえ未だに多くの企業においては事務職という仕事が存在し、それゆえに運良くそういった会社に就職さえできれば良い・・・などと思う就活生は少なくないと思います。
しかしよく考えて欲しいのですが、企業が労働者を雇うのはあくまでも自社の経営目的を実現する手段のひとつに過ぎません。
そしてイノベーションによって仕事のやり方が根本的に変わってしまったことによって特定の職業が消滅してしまった事例は枚挙にいとまがありません。
例えば筆者が若い頃に勤めていた職場では、受付ロビーと役員席の脇に新聞ラックが設置されていました。
そして、その新聞ラックには日経新聞をはじめ地元紙や業界紙など10紙くらいが専用のクリップに留められて、ぶら下がっていたのですが、それを総務課のスタッフが、毎朝1時間かけて古い新聞と新しい新聞を交換するのが日課となっていました。
それから20年経った現在、筆者のノートパソコンのChromeブラウザには30紙ほどのWebニュースがブックマークされており、さらにFeedlyなどのRSSリーダーを活用することで、これら30紙の中から自分にとって必要な新着情報だけを自動的にピックアップすることが可能になりました。
事務職の未来
最近ではTeamsやマネーフォワードなどの業務管理ツールが急速に普及し、情報共有やスケジュール調整など、業務にかかる多くの事務仕事はいちいち事務員を介さずとも、各自があっという間に処理できてしまうような時代になりました。
さらにPower Automateなどの簡易RPAやPower-BIといった直感的に使えるBIなどが、これまでの事務員にとって替わろうとしています。
RPAやBIはどんなに働かせても時間外割増手当を支払う必要はありませんし、マスタ設定さえ最初にきちんと行っておけば、人材育成のための研修も不要です。無断欠勤した挙げ句に、ある日突然退職してしまうようなリスクもありません。
いずれ多くの経営者が、中途半端な事務員を雇うくらいなら自社の事務作業をまるごとITに置き換えた方が、経営効率的にははるかにメリットが大きい・・・ということに気づきはじめるでしょう。
筆者はかれこれ20年前から就活生諸君に対して警告していますが、「事務職」なる言葉は近い将来間違いなく死語となる運命にあります。
付加価値を生む人材を目指せ
それでもどうしてもオフィスワークの仕事に就きたいのであれば、会社にとって付加価値を提供できるような人材を目指すべきです。
そもそも仕事とは、勤め先に対して付加価値を提供することで、その対価として報酬(給料)をもらうことなので、個人の好き嫌いでもって、付加価値を生まないような単純な事務作業に、報酬を期待する事自体が間違っているからです。
ではどんな仕事によって付加価値を生むことができるのか?といえば、例えば業務プロセス改善によるエラーの削減、WEBマーケティングによる集客力のアップ、職員満足度の向上による離職率の削減など、社内コンサルティングもしくはマーケター的な仕事です。
それにはマ-ケティング、財務会計、労務管理などの専門的な理論を学び、課題抽出や問題解決のフレームワークを身につけ、部外者と折衝するためのファシリテーションスキルを磨く必要があります。
もちろんパソコンスキルが高いことは必須ですが、最近ではセールス人材にプログラミングスキルを取得させようとする企業が増えているようですので、恐らくあと5年後くらいには、もはや事務職だの営業職だのといった境界は存在しなくなっているでしょう。
参考
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