人事部の視点 人的管理の仕事

意外に奥が深い人事評価制度の話


有能な人材が職場を去ってゆく理由

ドラッカーの言葉

組織が腐っている時、仕事の成果を公正に評価してもらえない時、能力に見合った正当な処遇をしてもらえない時は、辞めることが正しい選択である。出世は大した問題ではない。P.F.ドラッカー

有能な人材が転職を考える動機の中で多いのが「自分の能力を活かせる職場で、実力に見合った役割を与えられ、もっと活躍したいと思ったから」というものです。

特にこれからはJOB型雇用へのシフトが進むことが予想されるため、自分自身のキャリアをどう形成してゆくかということを強く意識する人が増えることは間違いありません。

その一方で人柄(協調性)重視の採用を行い、あちこちの部署をたらい回しにして「何をやらせるかはそのうち決める・・・」などといった旧態依然とした組織では、社会に通用するようなキャリア形成など期待できませんから、キャリア形成に対する意識の高い人材ほど、今の職場にさっさと見切りをつけて離脱してしまうでしょう。

 

有能な人材にとって「仕事の報酬は仕事」である

仕事のモチベーションは人によって様々ですが、ハイパフォーマーほど「仕事の報酬は仕事」であると考えている人が多いように感じます。

少なくともこれまで筆者が出会ってきたハイパフォーマーの多くが職場を「人生の道場」として捉えており、仕事を通じて自分の器量や才能を磨いてゆきたいと考えていました。

確かに仕事の成果の対価として社会的な地位や金銭的な報酬を与えられることもモチベーションにはなるのでしょうが、彼ら(彼女ら)の多くは成果を上げることによってさらに高度で専門的な仕事にチャレンジできる機会を得ることにモチベーションを感じる傾向があります。

そしてこういった有能な人材が職場を去ってゆく時は、彼ら(彼女ら)にとって、もはやこの職場には自分にとって魅力のあるチャンスが無くなったと判断した時なのです。

 

ハイパフォーマーほど高レベルの欲求が強い

マズローの5段階欲求説によると、人間には生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求、承認の欲求、自己実現の欲求の5つの欲求があるといいます。

(第1段階)生理的欲求;衣食住など人が生存してゆく上で不可欠なものを満たしたい
(第2段階)安全の欲求;自己の生命や心身が危険に晒されない安全な暮らしがしたい
(第3段階)社会的欲求;孤立することなく社会の一員として他人と関わって生きたい
(第4段階)承認の欲求;自分の存在や価値を社会や隣人に認めてもらいたい
(第5段階)自己実現の欲求;自己研鑽を行って理想の自分になりたい

そして5つの欲求は第1段階から第5段階まで階層化されており、人は低レベルの欲求が満たされると、より高レベルの欲求を満たしたくなる、というのがA.マズロー博士の説です。

確かに有能な人材ほど仕事を通じて自己実現したいという欲求が強いものですが、経営者が自社の従業員をただの労働力としか考えていないのであれば、やはり有能な人材は定着しないでしょうね。

 

有能な人材が集まってくる人事評価制度とは?

人事制度は人材育成、人事評価、処遇の3点セット

極論すると人事制度とは、「自社にふさわしい人材を育て」、「その成長を評価し」、「成長への頑張りに対するご褒美として、昇進や昇給でもって処遇する」というサイクルを適正に回すための装置です。

そしてその中でもコアとなるのが人事評価制度なのです。

それは評価のモノサシが決まらないと、どういう方向へ社員を教育すればよいか定まりませんし、またどのような時に昇進や昇給を行うかということも明確にならないからです。

 

人事評価の基本的なしくみ

コンピテンシー評価

コンピテンシーとは、例えば新入社員であれば上司に報連相を欠かさないとか、営業職であれば常に顧客の業界動向について情報収集を欠かさないなど、ハイパフォーマーの考え方や行動特性などを、職種別、役職別、キャリア別などの基準でもって類型化したものです。

そして自社の社員の職種や役職ごとに適切なコンピテンシーを当てはめ、日ごろから自身の立場にふさわしい行動をしているか照合チェックを行うのがコンピテンシー評価なのです。

自社の組織や階級の体系に合ったコンピテンシーを整理するのは一苦労ですが、例えば中小企業の人事評価システム導入シェアNo1の「あしたのチーム」の人事評価システムを導入すれば、ビッグデータから抽出した豊富なコンピテンシーの事例を活用することができます。

 

MBO(目標による管理)

MBO(Management by Objective)とは一般的に「目標による管理」として、業績管理を通じた部下の評価手法として昔からよく知られています。

コンピテンシーが社員の行動特性にフォーカスした人事評価手法であるのに対して、MBOは業績の達成度に応じた人事評価を行う手法です。

MBOが単なる業績評価と異なるのは、上司と部下が話し合うことでもって目標設定を行い、進捗について中間面談を行いながら、部下の成長や改善点などをフィードバックすることにあります。

人は他人から押し付けられたノルマには拒否感を示すが、自分が参画した目標であれば自発的に達成へ向けた行動をとる、という人間の特性を利用した手法なのです。

 

人事評価制度を構築する際のポイント

どんな人を評価したいのか明確にする

人事評価制度を構築する上で不可欠なのが、自社はどんな人間を評価したいのか?ということを明確にしておくことです。

業種や職種が異なれば、求められるコンピテンシーも大きく異なります。

ある職場では模範とされるような行動が、別の職場ではNGだった・・・などということはよくある話です。

よって採用のミスマッチの無いように、自社のバリュー(行動規範)は日頃からホームページ等で明示しておくべきでしょう。

なおバリューは、ミッション(経営理念)実現のために必要な行動規範であることは言うまでもありません。

 

評価者を育成する

せっかくコンピテンシーやMBOを整備しても、部下の評価を行うマネジャー達がそれらを適正に使いこなせなければ意味がありません。

そもそも人間とは感情の動物なので、人が人を評価するにはおのずと限界があるものです。

例えば多くの人が犯しがちな評価のエラーには次のようなものがあります。

(1)中心化エラー;部下達の間に波風を立てないように全員平均値で採点してしまう
(2)ハロー効果エラー;高学歴というだけで、つい高い評価点をつけてしまう
(3)対比誤差エラー;自分の詳しい分野には厳しく、苦手な分野は甘く採点してしまう
(4)近似値化エラー;評価直前の心象に引きずられて査定期間全ての評価をしてしまう

よって、こういった心理的バイアスを極力低減するために、人事評価の前に評価者を集めてトレーニングを行うケースが一般的です。

 

評価したら必ず処遇する

終身雇用が当たり前だった頃の人事制度では、人事評価の結果がダイレクトに昇進や昇給などの処遇に反映されることは少なかったように思えます。

これはサラリーマン生活が40年以上の長きに渡る終身雇用の時代においては、「もっと時間をかけてじっくり観察しなければ人の価値はわからない」と考えている経営者がいたり、「長く精勤を励んでいれば、いずれ何らかの形で報いてもらえるだろう」と期待する労働者が多かったりしたためです。

しかし雇用流動化が加速してゆく時代においては、いったん「空手形」を切ってしまうと従業員達から「やりがい搾取」のブラック企業というレッテルを貼られてしまいます。

戦国最強の武将のひとりとして名高い武田信玄も、手柄に対しては必ずその場で恩賞を与えたといいます。

それは領内各地の豪族達との緩やかな連合政権であった武田家では、空手形を切ることで家臣団の信用を失い、有事の際に兵が集まらなくなることを恐れていたためと言われています。

 

評価される側が注意すべきこと

経営者の考え方は人事評価制度に現れる

新卒と中途の別なく、就職にあたって最も気になるのは会社との相性ではないでしょうか。

もし会社との相性を調べたいのであれば、就職説明会や面接試験の際に、その会社の人事評価制度がどうなっているのか、リクルーターに聞いてみるとよいでしょう。

明確な人事評価制度を持っていない会社はその時点でNGです。まともな人事評価制度を整備していない会社は、人材を消耗品程度にしか考えていません。

もし人事評価制度があったとしても、会社の求める人材像と自分のキャラクターがマッチしていなければ、やはり辞退した方がよいと思います。

それは無理をして価値観の合わない会社に就職したところで、遅かれ早かれ転職を考えることになるのが関の山だからです。

 

サラリーマンは役者に徹する

仮に相性の良さそうな会社に就職したとしても、しょせんサラリーマンにとって「給料はガマン料」という厳しい現実を思い知らされることになることは知っておいた方がよいでしょう。

サラリーマンというのは収入の安定と引き換えに、仕事の主体性を放棄して会社に対して労働力を提供する職業ですから、これは仕方ありません。

よって勤務時間中はコンピテンシーの人物になりきって、ハイパフォーマーの姿を演じる・・・くらいの割り切りが必要であるのも事実なのです。

しかし役者が役にのめり込んでしまうように、いつしか演題としてのコンピテンシーが、自分の仕事の習慣として昇華されてしまうことは、実はよくあることです。

そこで実力を蓄え、本当に会社の枠組みが窮屈になったら、その時はいよいよ起業すればよいのではないでしょうか?


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