筆者の近況報告
現在は一年ほど前から地方の某商社にて、IPO(新規株式公開)へ向けた人事制度の再構築のお手伝いをさせてもらっています。
なかなか一筋縄ではゆかずに苦労しておりますが、なんとか本丸である就業規則や賃金制度の全面改正に手をつけられそうなところまでたどり着きました。
想定外のトラブルさえなければ、あと一年くらいでこの企業でのミッションが完了しそうですので、そろそろ次の仕事のことも考えておかねばなりません。
そこで来年に中小企業診断士の資格を取り、ITCを駆使して全国の小規模事業者向けの人事系コンサルティングサービスを行う予定です。もしご興味があればぜひお声がけください。
人事制度ってなんだろう?
経営者視点から見た人事制度
さて、これまで20年近く人事畑を歩んできた筆者ではありますが、そんな私からみなさんへ質問です。そもそもなぜ企業にとって人事制度は必要なのでしょうか?
人事制度について考える前に、まず企業は何のために世の中に存在するのか?ということを理解する必要があります。資本主義社会における企業(営利企業)とは、投資家から集めた資金を組織の力でもって効果的に運用し、最大限の利潤を追求するための装置です。
これをもう少し具体的に説明すると、企業は自社の看板(ブランド)でもって投資家から出資を募り、マーケティングを行って有望な事業を開発し、そこへヒト、モノ、カネ、情報といった経営リソースを投入して成果(利潤)を上げるシステムなのです。
一方で世の中にはヒト、モノ、カネ、情報といった経営リソースを無尽蔵に投入できるような余裕のある企業はほとんどありません。
よって限りある経営リソースをいかに有効に活用するか?ということを常に考えねばならず、そのために経営リソースのマネジメントとコントロールが不可欠になりますが、このうちヒトのマネジメントとコントロールを行うために人事制度が必要となるのです。
労働者視点から見た人事制度
一般的な企業において人事制度とは、採用管理、労務管理、福利厚生、人材教育などで構成されていますが、それらの中でも労務管理は給与計算や就業管理など、労働者に直接関係してくるものであり、人事の中でも労使の信頼関係の根幹にかかる最も重要な領域です。
雇用契約が守られない会社、給与がまともに支払われない会社からは労働者がどんどん離れてゆきますので、企業は労働基準法に則り公正な就業規則や賃金規定を定め、これらがきちんと運用されるような仕組みを構築し、ルールや仕組みを適正に運用できる人材を育成してゆく必要があります。
労働者の側から見ると、こういった当たり前のことがきちんとできていない企業はいわゆるブラック企業です。まともな人事制度の構築にはルール、仕組み、人材教育の3点セットが不可欠ですが、それは一部の人間の専横によって、まっとうに働いている従業員やその家族の人生が脅かされないようにするためです。
人事制度の果たすべき役割
資本主義経済の下で、企業が持続的に利潤を獲得してゆくためには、厳しい市場競争を戦ってゆかねばなりません。そのため社内においても健全な競争と公平な人事評価、そして適切な処遇を行うことは必須です。
スポーツの世界でも、インカレやインターハイでスタメン出場するような選手達は、総じて厳しいポジション争いを勝ち抜いてきた強者ばかりですが、これはそのまま企業の社員にも当てはまります。
その一方でフルコミッションのような完全成果主義では労働者の生活が安定しませんし、どんなスタープレイヤーだって怪我や病気になればプレーで得点を稼ぎ続けることはできなくなります。
ゆえに社内における健全な競争と労働者の安心安全とのバランスが重要となりますが、これら一見、相反する2つの命題を有機的に結びつけるものこそ人事制度であると思うのです。
経営者の仕事は人事に始まり人事に終わる
人事制度あっての社長業
世間一般的にリッチな職業と言えば医者、弁護士、社長などと相場が決まっています。
どれも高給取りの代名詞のような職業ですが、その内情はちょっと異なるようです。それは医師や弁護士はそれぞれの業法(医師法、弁護士法)によって、他人に自分の業務を行わせることが禁止されているため、稼ごうとすると必然的に過重労働に陥るというジレンマを抱えているのです。
その一方で社長さんは人材育成をしっかり行ない、従業員に仕事を任せてゆくことで、際限なくビジネスを拡大できます。このように従業員に権限移譲できるような仕組みを構築するために不可欠なのが人事制度でもあります。
モノ、カネ、情報もヒト次第
ゆえに経営者の仕事とはイコール人事といっても過言ではありません。
ビジネスを拡大するためにはより多くの経営リソースが必要となりますが、それらモノ、カネ、情報を扱うのはヒトなので、人事制度がうまく機能していなければ効果的な経営リソースの活用はできないでしょう。
またヒト、カネ、モノ、情報のうち、経営者が期待する成果をあげるまで、最も時間と労力を要するのがヒトです。さらにはなかなか経営者の思い通りに動いてくれないものもヒトです。
よく「経営はヒトが第一」と言いますが、これは人事制度の構築とそれらを回す人材育成のプロセスは、他の要素で容易に代替えが効かないからです。人材を失うのは一瞬ですが、人材が組織的に付加価値を生み出せるようになるまでは相応の労力と時間が必要です。
経営者にしかできない重要な仕事とは?
経営者の仕事=人事ですが、経営者がすべき人事とは、どんな人材を採用し、どのように育成し、どういった任務を与え、その任務を完遂させるためにどの程度の裁量権を付与するかを決めることです。
そしてこの中で最も重要なのは「どんな人材を採用するか」ということです。
これはヒト、モノ、カネ、情報という4つの経営リソースの中で、最も手間暇がかかり、なおかつ経営者の思い通りにゆかないのが人材なので、ゆえに自身と価値観を共有できる人材に絞って採用活動を行なう必要があるからなのです。
日本では昔から「三つ子の魂百まで」と言いますが、人の価値観というものはそう簡単に変わるものではありません。ゆえに経営者と想いを共感できない人材は、いくら一生懸命に育成しようとしても恐らくほとんど育たないと思われます。
すでにおわかりかと想いますが、経営者がまず最初にすべきことは価値観の合わない人材は採用しないということです
人事制度のしっかりした会社は経営がブレない
採用のミスマッチは労使双方にとって不幸なことです。特に現代は就労の価値観がどんどん多様化し、例えばZ世代など会社とプライベートを明確に線引きし、自分の価値観に会社がズカズカと無神経に踏み込んでくることを毛嫌いする層も増えています。
ミスマッチを防ぎ、採用した社員に長く働いてもらい、なおかつ事業成績をアップし続けたいのであれば、経営者はまず自社のミッション(経営理念)と、それに共感してくれる人物像(バリュー)を定義し、その条件に合致する人材を獲得してゆかねばなりません。
こういった大事なことを曖昧にして場当たり的な数合わせの採用を行い、入社後の人材投資をケチり、依怙贔屓の横行するようないい加減な人事をしていると、有能な人材からどんどん会社を離脱してゆきます。
有能な人材がいなくなると経営リソースの使い方が粗く雑になります。すると業務エラーや労災事故が増え、本社スタッフがそれらの対応に追われてリソースを浪費します。
抜本的な改善を行なうにせよ時すでに遅し。こういった課題をクリアカットに解決できる人材はもはや自社には残っておらず、下り坂を転がり始めた企業は加速度的に虎の子の経営リソースをあっと言う間に食いつくしてしまいます。
そうならないためには、まずは経営者が地道にコツコツと堅牢な人材活用プラットフォームすなわち人事制度を構築してゆく必要があります。
参考
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