人事部の視点 人材育成・開発

管理職の役割とコロナ時代の将来像


管理職は経営者の代理

管理職の定義

サラリーマンであれば管理職という言葉を聞いたことのある人は多いと思いますが、管理職の定義を正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。

管理職とは読んで字のごとく特定の部署の事業活動を管理する職責のことですが、部下を持っていればすなわち管理職というワケではなく、労働基準法上では、仕事の内容や勤務時間などについて、自分の裁量でもって自由に決めることのできる立場をいいます。

ゆえに管理職はサラリーマンでありながら労働時間管理の対象外とされ、残業代や休日出勤手当が支給されないことが一般的であり、その一方で遅刻や早退をしても給与が減額されることも無いのです。

 

名ばかり管理職問題

多くの会社では管理職は課長以上の役職者とされていることが多いようです。

しかしもし課長であっても、始業や終業の時間について厳格に会社に管理され、遅刻や早退をすると給与が減額されるような場合は管理職とはみなされません。

たとえばかつて某大手ハンバーガーチェーンでは、ハンバーガーショップの店長は管理職であるとして、過酷な長時間労働にも関わらず残業代を支給していませんでした。

これに対してこの店長が未払の残業代を支払うように求める訴訟を裁判所に提起するという事件が起こり、2008年に「この店長は管理職には該当しない」として、会社に対して750万円の残業代をこの店長に支払うよう判決が下されました。

実は日本においては、こういった「名ばかり管理職」は小売業や飲食業もしくは娯楽サービス業などにおいてチェーン店を多店舗展開している業態によく見られます。

 

日本の職場の生産性が低い原因

国際的に日本の職場は仕事の生産性が低いことで有名ですが、この要因のひとつに前述の「名ばかり管理職」が社会的に放置されていることもあるのではないかと考えています。

田舎の中小企業では、部長だの課長だのと肩書がついていても、職場のパソコン一台購入するのにいちいちオーナーにお伺いを立てなければならないようなケースは多いです。

以前何かの記事で読んだのですが、日本の職場の生産性が低い要因のひとつに、現場の管理職に意思決定のための十分な権限が移譲されていないから・・・というものがありました。

確かにこれは一理あって、たとえば昔からこんな有名なエスニックジョークがあります。

無人島に女1人と男2人が流れ着いた。さてこのストーリーの顛末はいかに?

フランス人の場合;女はひとりの男と結婚し、もう1人の男と不倫する。
アメリカ人の場合;女はひとりの男と結婚し、離婚してからもう1人の男と再婚する。
ニッポン人の場合;男ふたりはどちらが女と結婚したら良いか、本社に問い合わせる。

 

管理職の仕事

中間管理職が中間である理由

10年ほど前に、酒井穣という人の「はじめての課長の教科書」という本を読んだことがありますが、その中に「課長とは現場に席のある一番下っ端の経営幹部である」というような一節がありました。

確かにこれは言い得て妙であり、日本の多くの企業の管理職は、経営会議に出席しつつ、自席ではプレーイングマネージャーとして実務も抱えているケースが多いようです。

実は課長のような中間管理職は、社内において経営と現場の両方の情報が集中するポジションであり、会社組織の中をよく見渡すことができるため、経営方針を現場にブレークダウン(具体化して指示)し、一方で現場の情報をチャンクアップ(要約して報告)することこそ。管理職が本来期待される役割なのです。

 

リソースの確保と予算実績コントロール

勝てる体制を整えることも仕事

多くの会社は営利法人です。

営利法人とは事業を行って利益を上げるために設立された組織のことをいい、経営者はもちろんのこと、現場の最前線の指揮官たる管理職も自部署の売上と利益に対して責任を負っています。

そして各部門の管理職は、会社の方針を元に自部署の年間の売上および利益の目標を設定し、その目標の達成に必要なヒト、モノ、カネ、情報といったリソースを経営陣に交渉して確保しなければなりません。

自動車レースの最高峰といわれるF1(フォーミュラワン)グランプリにおいても、世界チャンピオンを獲得するような名ドライバーの多くは、卓越したドライビング技術もさることながら、むしろ自分が勝つためのチーム体制づくりにも長けていると言われています。

 

予算実績コントロールのテクニック

事業計画を策定して会社の承認を得たら、獲得してきた経営リソースを投入して実績を上げてゆきますが、一般的には月次単位で計画(予算)と実績のブレをチェックし、必要に応じて対策を打ってゆきます。

これを予算実績コントロールといいますが、例えば小売業では予算と実績の差異を分析する際は、単純に売上高の予算と実績を比較するのではなく、「売上高=客数×客単価」に因数分解して考えます。

もし売上が予算に達していなかった場合、客数が伸びていないのであれば特売セールを企画して集客対策を講じますし、客単価が落ちているのであれば、店舗の品揃を見直したり、関連販売を強化してプラス1品売りに注力します。

予算策定の精度は大事ですが、予算が下振れした際にスピーディかつ的確なリカバリーを行えるか否かが管理職の腕の見せ所ですし、リカバリーの引き出しの多い管理職ほど職場で一目置かれる存在となります。

 

経営リソースのマネジメント

経営リソースとはヒト、モノ、カネ、情報のことをいい、これらを有効に活用して最大限の利益をあげるための手法を経営マネジメントといいますが、これは経営者に限らず現場の管理職においても同様です。

 

ヒトの管理

人材を採用して育成し、適正に評価を行い、公平に処遇することで、職場に対する従業員のロイヤリティを高め、社員の定着率をアップすることができます。

有能な人材の獲得が難しい今の御時世においては、採用にかかるコストはバカになりません。またせっかく採用した人材がすぐに辞めてしまうと、育成に要した労力も水の泡になってしまいますし、いつまで経っても現場にノウハウが蓄積されません。

なおヒトの管理の中でも最も重要なのは、自分の代行者もしくは後継者の育成です。

そもそも管理職とは自身がせっせと手を動かすのではなく、部下の仕事を通じてチームの成果を上げてゆくことが本来の仕事です。「イザとなれば俺が不在でもウチの部署はちゃんと回るぞ」くらい言えるようになれば、管理職として一流ではないでしょうか。

 

カネの管理

売上は代金が回収されてはじめて実現されます。

よって管理職はただモノやサービスを売り込むことだけを考えるのではなく、代金の回収状況もしくは回収不能リスクに対して常に目を光らせていなければなりません。

なおカネの管理は対外的なものだけには留まりません。

例えば営業マンが取引先と結託して売上代金の水増し請求をしたり、事務員が事務所の金庫から現金を抜いたりと、昔から職場の金銭的な内部不正は絶えることがありません。

若い頃に読んだ何かの小説で主人公が「カネは麻薬よりもタチが悪い。それは全ての人間を堕落させるからだ。」というセリフがありましたが、基本的に多くの人間はお金に弱いものです。

ですからお金の管理に関しては従業員の良心に訴えて規律遵守を求めるよりも、不正ができない、もしくは不正をしづらいような仕組みを構築する方が効果的です。

たとえば営業マンに毎月商品在庫の棚卸しをさせたり、事務員に現金日報をつけさせて所長が現金実査を行ってから出納を締めたりするなど、「不正をしてもすぐにバレる」という仕組みを構築し、職場内に知らしめることが大事なのです。

 

モノの管理

仕事に必要な設備や道具がきちんと装備されていないと、仕事の生産性が上がらないばかりか、品質エラーや業務災害などのトラブルを招きます。

仕事の生産性を上げるためには、事業年度の始まる前に管理職が上層部や他部署と交渉して必要な設備投資を実施し、それらを操作する部下達に対して必要な実務講習を受講させなければなりません。

また既存の設備や備品の管理も重要です。

筆者の経験上、業務災害の多い職場に共通しているのが、設備の始業前点検と備品の定位置管理が徹底されていないということです。そしてたいていは現場の監督者達が作業員達となれ合いになっており、安全点検や基本動作の励行がなおざりにされてしまっています。

しかし大掛かりな設備装置を動かす工場であれば重大な労災事故を招いたり、食品工場であれば不良品の発生により消費者の生命に危険を及ぼしたりするリスクが高いため、管理監督の立場にある者は、基本動作を徹底しない作業員に対しては心を鬼にして厳しく指導しなければなりません。

今から20年前に北海道を代表する某乳製品メーカーの某工場にて、現場の作業員が本来の手順を無視した手抜き作業を行った結果、被害者14,780人という前代未聞の食中毒事故を起こしてしまいました。

その後、この工場においては消費者の信頼を裏切るようなずさんな管理が常態化していたことが判明し、親会社も含めて一時は世の中から消滅する寸前にまで追い込まれたのです。

もし鬼軍曹のような管理職がいて、本来守るべき作業手順を徹底していたら、このような悲惨な事故は起こらなかったに違いありません。

 

情報の管理

「茹でガエル」のお話をご存知でしょうか?

熱湯にカエルを放り込むとカエルは熱さでビックリして飛び出しますが、水を入れた鍋にカエルを泳がせておき徐々に熱してゆくと、いつの間にかカエルはすっかり茹で上がって死んでいる・・・という喩え話です。

これは会社組織の置かれた環境も全く同じであり、ゆえに「茹でガエル」にならないように管理職は常に社内外にアンテナを張って経営環境の変化をモニタリングする必要があります。

現在は経営環境の変化が早いため、営業部門であれ、管理部門であれ、前年と同じことを繰り返しているだけでは今期の業績は前年の八掛で終わってしまうでしょう。

ゆえに管理職はマーケティング手法を学び、常に自部署の仕事について新規開拓を行い、日常業務と並行しながら水面下で新規事業の準備を粛々と進めるくらいの手腕が欲しいものです。

 

日本の管理職の将来

管理職の人材ニーズは高い

新型コロナ不況によってかつてのリーマンショックの時のようなリストラの嵐が吹き荒れていますが、当時と状況が異なるのは企業各社が社内で希望退職者を募集する一方で、有能な人材に対しては依然として採用意欲が高く、企業間で取り合いの状況が続いているという点です。

中でも40代~50代のミドル世代の管理職経験者のニーズが高く、かつては「転職35歳限界説」などと言われたことが嘘のように、現在は管理職だけではなく役員経験者のニーズも高まっています。

 

中間管理職はAIに代替される

一方で前述の「はじめての課長の教科書」を上梓した酒井穣氏によると、課長などの中間管理職は日本企業独特のポジションであり、一方の海外の先進国では経営者とワーカーが直結するフラットな組織構造が一般的なのだそうです。

日本に中間管理職なる立ち位置が根付いたのは、おそらく根回しや調整といった間接的でまどろっこしい日本特有の職場慣行によって、経営者とワーカーとの間にもう一層のバッファを設ける必要があったためではないかと推察します。

しかしすでにAIやRPAなどの導入が進み、リモートワークの拡大によってTeamsやBIなどの業務プラットフォームが普及することで、組織のフラット化が進んでゆきますので、かつての上司と部下の間を行き来するだけの「伝書鳩」のような中間管理職の存在意義は薄れてゆくと思われます。

 

大増税社会の到来と高年収サラリーマンの末路

これまで多くの日本企業において管理職は出世の登竜門であり、取締役は無理としても、年収1,000万円クラスの部長職まで上り詰めることができればサラリーマンとしては大成功と考えられていました。

しかし日本の少子高齢化と人口減少は2080年まで続くとも言われており、生産年齢人口が縮小してゆくとこで税収も減り、今後もさらなる増税を続けてゆかなければ社会インフラの維持すらままならなくなることは間違いありませんが、その増税の格好のターゲットこそ、源泉徴収制度でがんじがらめにされているサラリーマンなのです。

中でもかつて税制面で優遇されてきた高年収サラリーマンについては、中低所得層がすでに「乾いた雑巾」と化していることもあって、年々、年末調整の所得控除が削られ、明らかに増税のターゲットとなっていることは間違いありません。

 

社内の出世よりも社外の収入エンジンを確保せよ

これからは会社組織の理不尽さに耐え、家庭を犠牲にしてまでも一生懸命に会社に忠誠を尽くして部長職のような上級管理職に上り詰めたところで、それまでに払ってきた代償に見合うだけのリターンを得ることは難しくなるでしょう。

同じ1千万円を稼ぐのであれば、会社の仕事はほどほどにして副業で起業し、給与所得と事業所得のハイブリッドを狙った方が個人の実入りが大きくなりますし、生活の糧をサラリー一本に依存することの方が現在においてはリスキーな生き方とも言えます。

「人生はカネが全てではない、組織の中で自分を磨くことこそ意義があるのだ」という方は別として、それ以外の多くのサラリーマンについては、キャリア・アンカー(就職する意義)が大きく変化してゆくことは間違いありません。

管理職についても全社員が目指すべき社内キャリアのハイエンドという位置付けから、プロジェクトマネージャーのように専門職化され、助っ人外人よろしくアウトソーシングされてゆくのではないかと予想しています。

 

参考

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