人事部の視点 労務管理の仕事

部下を持ったら知っておくべきリーダーの常識(その2)給与のしくみと関係法令


給与の意味を知っていますか?

雇用契約のしくみ

給与を理解するために、まず雇用契約について説明したいと思います。

雇用契約とは労働者が自分の労務サービスを提供する代わりに、その対価として会社から賃金すなわち給与を受け取るというものです。

労働者には、雇用契約に定められた所定労働日の所定労働時間中に、所定の就業場所において、所定の業務に従事する義務があり、その義務を果たすことによって給与を受け取る権利が生じます。

 

給与と報酬のちがい

雇用契約と似たような働き方に委任契約があります。

これは取締役など、いわゆる会社役員と会社との間で結ばれる契約であり、会社役員に支払われる給与を報酬といいます。

労働者の給与は労働サービスを提供したことへの対価ですが、会社役員の報酬とは仕事の成果に対してのみ支払われるものであり、家族手当や皆勤手当などという仕事の成果に関係のない要素は含まれていません。

よって会社役員は業績さえ上げていれば、何時に出勤して何時に退勤しようが構いません。お昼近くに出勤することを「重役出勤」などと言いますが、契約としては全く理に適っている行為なのです。

一方で会社役員の任期は2年なので、成績が悪ければ再任されずに失職してしまいますし、労働者ではありませんので、失職しても失業保険を受給することはできません。

 

給与計算の基本知識

給与の支払いかたは法律で決まっている

給与は経営者の自由な裁量でもって好きなように支払うことが許されているものではなく、労働者の生活の安定を守るために、労働基準法第24条に給与支払ルールがきちんと定められています(給与支払の5原則)。

通過払いの原則

「給与は通貨でもって支払うこと」~通貨とはお金です。例えば自社製品などを給与に代用して支給することは禁止されています。ただし通勤定期券などを現物で支給することはOKです。

 

全額払いの原則

「給与は全額を労働者に支払うこと」~給与の一部を経営者がピンハネすることを禁止した条文ですが、社会保険料など、会社が従業員の給与から控除するように法律で定められているものを差し引いて支給することは可能です。

 

直接払いの原則

「給与は労働者本人に直接支払わねばならない」~第三者を経由して給与を支払うことで、労働者が不当な搾取を受けることを禁じています。なお給与を銀行振込とした場合、口座名義が本人以外の近親者であっても、銀行に給与振り込みを拒否されるので注意。

 

毎月払いの原則

「給与は毎月1回以上の頻度で支給しなければならない」~もし四半期に1度あるいは半年に1度のペースで給与を支給されると、労働者の生活が成り立たなくなるからです。

 

定期払いの原則

「給与は毎月決まった日に支払わねばならない」~給料日が月によってバラバラだと、労働者の家計のやりくりが不安定になるために禁止されています。ちなみに「毎月第三金曜日に支払う・・・」などというルールは支給日が特定できませんのでNGです。

 

給与明細の見方知っていますか?

支給項目

給与明細は総支給額から税金などが天引きされ、残額が銀行口座へ振り込まれる仕組みになっており、口座に振り込まれる金額を手取り額といいます。総支給額は支給項目から成り立っており、さらに支給項目は固定給と変動給の2つに分けられます。

固定給とは基本給や住宅手当、通勤手当など、毎月一定の額が支給されるものであり、変動給は残業手当や休日出勤手当など、毎月の勤務実績に応じて支給額が変動するものです。

一般的な月給制の場合、固定給は当月の給料日に支払われ、変動給は月末で残業の実績を締めてから、翌月の給料日に(つまり1ヵ月遅れ)支払われることが多いです。

 

控除項目

控除項目も法定控除と法定外控除の2つに分けられます。前者は社会保険料や源泉所得税など、会社が個々の従業員の給与から控除し、ひとまとめにしてから税務署や市町村役場へ納付するように法律で定められているものです。

後者の法定外控除は、財形貯蓄や団体保険料など法定控除以外に給与から天引きされるものですが、そもそも労基法第24条の全額払いの原則によって、本来は法定控除以外のものを給与から天引きすることは認められていません。

しかし労使間で全額払いの例外について合意する旨の協定を締結した場合は、財形貯蓄や団体保険料などを控除することができます。

 

勤務によっては割増手当がもらえる

割増手当が必要なケース

時間外勤務、深夜(22時~翌朝5時)勤務、法定休日(具体的な曜日は会社ごとに任意で定める)勤務については、それぞれ順に基本賃金の25%、25%、35%の割増手当が加算されます(労働基準法第37条)。

これらの割増手当は、時間外勤務と深夜勤務、もしくは法定休日勤務と深夜勤務が重複した場合はそれぞれの割増率が合算されますが、法定休日割増と時間外割増は合算されません。これはそもそも休日ですから定時も時間外も存在しないからです。

なお法定休日に勤務させる際に、予め他の日に休日を振り替えておく場合(振替休暇)には法定休日割増は不要ですが、とりあえず法定休日に出勤させ、後日どこかで代わりの休暇を取得させる場合(代替休暇)には、法定休日割増が必要ですのでご注意下さい。

 

割増手当の計算方法

割増手当の金額は、基本賃金にそれぞれ時間外割増25%、深夜割増25%、法定休日割増35%を乗じて計算します。

基本賃金の額は、例えば一般的な月給制の場合であれば一ヶ月の基本給を一ヶ月の平均労働時間で割ることで求められますが、基本賃金には家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、臨時の手当、賞与、住宅手当(ただし全社員へ一律の額を支給する手当は除く)は含まれません。

また1ヶ月平均の労働時間は365日から年間休日数を引いた年間所定労働日数を12ヵ月で割り、1ヶ月あたりの所定労働日数に1日あたりの勤務時間を乗じて算出します。

 

割増が必要な理由

時間外や深夜もしくは法定休日勤務になぜ割増手当が加算されるのでしょうか?

それは使用者の経費負担を重くすることで、時間外や深夜勤務もしくは休日出勤を抑制し、労働者のワーク・ライフ・バランスを守るためです。

手当を割増することで、労働者に対して「もっと稼げ!」などと時間外や深夜勤務を推奨している訳ではないので誤解しないようにしましょう。

 

給与に関連した働き方改革の最新動向

長時間残業に対するペナルティ強化

働き方改革に関連した2019年4月からの労働関係法令改正の一環として、月に60時間を超える残業に対しては、さらに25%の割増手当が上乗せされることになりました。

これについてはまず大企業から適用し、一定の移行期間を経て2023年より中小企業にも適用されることになったため、全国的な労働時間の短縮が進むと思われます。

 

未払給与の請求権には消滅時効がある

消滅時効とは、権利を行使しないと請求権そのものが消滅してしまうというもので、日本の法律は権利を行使しない者は救済しないというスタンスを採っています。

代金の同様に未払いの給与についても労働基準法によって請求権は2年間と定められていましたが、2020年4月の民法改正を受けて、給与の請求権は3年間に延長されました。

改正民法では代金などの請求権が1年から5年に延長されましたが、労働基準法は民法の特別法という位置づけですので、主たる民法が変われば、従たる労働基準法も改正されます。よって当面は未払給与の請求権は3年に延長されましたが、いずれ民法に合わせて5年になるだろうというのが大方の予想です。

なお3年の請求権が適用されるのは2020年4月以降に支給された給与ですので、ご注意下さい。

 

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