人事部の視点 労務管理の仕事

部下を持ったら知っておくべきリーダーの常識(その4)社会保険の仕組み


負担者からみた社会保険

健康保険料

就職すると勤務先の加入している健康保険の組合員となり、健康保険被保険者証(通称;健康保険証)を交付されます。そして医療機関の受診時にこの健康保険証を提示することで、かかった医療費の3割の自己負担で医療サービスを受けることができます。

残りの7割は医療保険から給付されますが、その財源となるのが組合員の給与から毎月天引きされている健康保険料です。健康保険組合には業界や大企業がそれぞれ単独で設立しているものと、主に中小企業が加盟している全国健康保険協会(通称;協会けんぽ)があります。

 

介護保険料

介護保険料は満40歳以上になった月から給与から天引きされます。

介護保険とは、老齢や老化による疾病により介護が必要になった時に、自己負担1割でもって必要な介護サービスを受けることができる制度です。残りの9割は介護保険から給付されますが、その財源のうち半分が給与から天引きされている介護保険料であり、もう半分は税金でもって賄われています。

介護保険サービスを利用できる人は、老齢による介護であれば満65歳以上から、老化による疾病であれば満40歳以上64歳以下という年齢要件があります。なお老化に起因する疾病については16の特定疾病に限定されます。

 

厚生年金保険料

年金制度は主に3つに分かれていて、学生や自営業者が加入する国民年金、サラリーマンが加入する厚生年金、そして公務員が加入する共済年金があります。

国民年金は満20歳以上から60歳到達時まで加入しなければなりませんので、学生であっても20歳になった時点で加入する義務が生じます。一方でサラリーマンの厚生年金は上限が70歳までとなっていますが年齢の下限が無いため、たとえば高卒で就職した場合は就職した時から厚生年金の加入者となります。

ところで誤解している人が多いのですが、みなさんの給与から天引きされている厚生年金保険料がずっと積み立てられ、将来のみなさんの年金の原資となる訳ではありません。日本の年金制度は世代間扶養方式といって、みなさんが収めた年金保険料はそのまま現在高齢者が受給している年金の原資となります。

目下、少子高齢化が社会問題となっている要因はまさにその点にあり、このまま老人が増え続け、逆に現役の働き手が減ってゆくと、みなさんの老齢年金の原資が捻出できなくなってしまう恐れがあります。

 

利用者からみた社会保険

医療保険

みなさんが医療機関を受診した時に、受付で健康保険証を提示することによって、実際にかかった医療費の3割(後期高齢者は1割)負担で済みます。

残りの7割については医療機関が毎月10日までに前月分の診療実績を集計し、社会保険診療報酬支払基金(国民健康保険の保険証であれば国民健康保険団体連合会)へ医療費の支払い請求を行います。これがいわゆる医療事務におけるレセプト(請求)業務です。

なお医療保険を利用できるのは診療報酬制度に定められた医療行為のみであり、たとえば健康診断や美容整形などは診療報酬制度の対象外であるため、かかった医療費の全額が患者負担となりますので注意が必要です。

また労災については医療保険ではなく、労災保険から治療にかかった医療費の全額(つまり自己負担ゼロ)が支払われることになりますので、健康保険証は提示不要です。

 

介護保険

みなさんが65歳以上になり、介護サービスが必要になったら、最寄りの市町村役場もしくは地域包括支援センターに行って介護申請を行い、要介護認定を受けることで介護サービスの利用が可能となります。

介護サービス料は利用者負担が1割で、残りの9割は介護保険から支給されますが、介護サービスを提供した事業者は、医療機関同様に毎月10日までに前月分の介護サービスの提供実績を集計し、国民健康保険団体連合会へ保険料請求を行っています。

 

老齢年金

サラリーマンが受け取れる年金には老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つがあります。

実は給与から天引きされている厚生年金保険料も基礎年金部分と厚生年金部分の2層構造になっており、基礎年金部分は納付額も受給額も国民一律ですが、厚生年金部分はサラリーマンのみ納付かつ受給でき、納付額や受給額は個人の所得によって異なる仕組みになっています。

老齢基礎年金は満65歳から年金事務所へ受給申請(裁定請求)を行うことで受給でき、20歳から60歳までの40年間の全期間を全て納付した場合で、年間781,700円(2020年4月時点)受給できます。

なおかつては老齢基礎年金を受給するためには、保険加入期間が25年以上必要でしたが、現在は加入期間(保険料納付期間+減免期間)が10年以上あれば受給資格を満たせることになりました。

老齢厚生年金は老齢基礎年金の受給資格のある人が満65歳になった時に、老齢基礎年金に上乗せ支給されるもので、受給額は現役時代に収めた厚生年金保険料の額に比例して増減されます(報酬比例制度)。

 

社会保険料はどうやって決まるか?

標準報酬月額と保険料率

標準報酬月額

給与から天引きされる社会保険料は個人ごとの標準報酬月額に、地域別もしくは健康保険組合別に定められた保険料率を乗じた額によって算定されます。

そして標準報酬月額は、個人ごとの毎月の基本給、役職手当、家族手当、住宅手当、通勤手当、残業代の見込額などの合計を、標準報酬月額表にあてはめて決まるのです。

なお標準報酬月額は健康保険と介護保険で適用されるものと、厚生年金で適用されるもののでは等級の刻みや上限額が異なります。また賞与については、賞与支給額を千円未満で切り捨てた額を標準賞与額として用います。

 

保険料率

保険料率は例えば北海道の協会けんぽ加入企業の従業員であれば、健康保険料が10.41%、介護保険料が1.79%、厚生年金保険料が18.3%となっており、これらの料率を個人ごとに決められた標準報酬月額(もしくは標準賞与額)に乗じて社会保険料を算出します。

ただしここで算出された社会保険料が全てみなさんの給与から天引きされる訳ではなく、これらの社会保険料を労使折半して負担するルールになっていますので、みなさんの社会保険料のうち半分を毎月の給与から天引きし、残り半分を会社が経費(法定福利費)として拠出します。

そしてこれらを合算してから日本年金機構を経由して、それぞれ健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料の納付先へ支払われているのです。

このように人件費には従業員に直接支払う給与費以外に法定福利費や退職金の引当金などが含まれており、人材を雇用するということは実は結構コストがかかるものなのです。

 

その他のお役立ちトピック

春に残業すると社会保険料が高くなる!?

みなさんの標準報酬月額は給与の増減によって毎年改定されており、毎年7月1日時点の在職者について、4月~6月に支払った給与を集計した算定基礎届を年金事務所に提出し、この額を元に9月以降の標準報酬月額が定時改定されます。

つまり4月~6月にたくさん残業代を稼いでしまうと、9月以降の社会保険料も増えてしまうので注意が必要です。

なお余談ではありますが、一般的には当月の社会保険料は翌月の給与で天引きされるため、9月分の社会保険料が実際に控除されるのは10月支給の給与になります。

 

退職したら社会保険はどうなる?

退職すると社会保険からいったん脱退して、次の勤め先の社会保険に加入し直すことになります。そしてこの際に注意しなければならないのが健康保険証の返納です。

退職日の翌月から前職の健康保険証は使用できませんので、新しい勤務先の健康保険証が届くまで、いったん自分で医療費全額を立て替え、新しい健康保険証を受け取ったら、それを医療機関の窓口へ提示して7割分の払い戻しを受けなければなりません。

もし次の就職先が決まっていない場合は、居住地の市町村役場の国保課へ行って、国民健康保険に加入しましょう。

同様に年金についても最寄りの年金事務所もしくは市町村役場の国年課へ行って、国民年金への加入手続きを行う必要がありますが、失業中は健康保険料や年金保険料の負担がバカにならないものです。

そこでもし会社都合で離職を余儀なくされたのであれば、減免申請を行うことで国民健康保険料の負担を3分の1に減らすことができます。また国民年金保険料については退職理由のいかんに関わらず、失業中であれば半額もしくは全額の納付免除を受けることができるので、知っておいて損はないでしょう。

 

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