人事部の視点 労務管理の仕事

部下を持ったら知っておくべきリーダーの常識(その8)働き方改革にどう対応するか?


現場リーダーが対応すべきポイント3つ

今回は現場リーダーとして、働き方改革にどのように対応してゆくか、重要ポイントのみしぼって説明してゆきます。働き方改革の様々な施策の中で、現場のリーダーが押さえておかねばならない項目は以下3つです。

1)月45時間以内の残業コントロール
2)年間5日以上の有給休暇の取得
3)部下の雇用身分に合わせた公平な職務分担

たかが3項目ですが、これを実行できなければ最悪の場合、経営者だけではなく自分自身が労働基準法違反で検挙されてしまうのでくれぐれも注意しましょう。

 

月45時間以内の残業コントロール

36協定の締結

36協定とは

意外と知られていませんが、労働基準法において残業は原則として禁止されています。

ただし労使間で書面による協定を締結した場合に限り、月間45時間、年間360時間以内であれば残業させてよい、という例外があります。この例外を定めた条項が労働基準法第36条であり、ゆえにこの条項に基づいて締結する労使協定を通称36協定といいます。

 

労働者の過半数を代表する者の選出

労使間で36協定を締結する際、「労働者の過半数を代表する者」を選挙等の民主的な方法で選出しなければなりません。

これまでは上司が部下の誰かを指名したり、職場の親睦会の代表や幹事を任命したりする事例が多かったのですが、どちらもNGです。このような不適切なプロセスによって締結された36協定は無効となるので注意が必要です。

交代勤務の職場や新型コロナのためにリモートワークを行っていて、選挙の場を設けることが難しければ、FORMSなどを活用して投票を行えばよいでしょう。

 

特別条項を活用してリスクヘッジしよう

働き方改革の残業上限規制違反については6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金という厳しい罰則が適用されますが、これは経営者と現場の所属長の両方に科されます(両罰規定)。

一方で月45時間以内、年間360時間以内という上限ルールには特別条項があり、36協定に付記することで、年間6ヶ月以内に限って月平均80時間、年間で720時間まで残業が認められます。

この特例条項の趣旨としては、例えば工場設備の故障などの臨時的なケースに対応するため・・・ということですが、ある労働基準監督官から直接聞いた話では、臨時的なケースの判断基準が明確ではないため、万一の際のリスクヘッジとして36協定に盛り込んでおいた方がよいとのことでした。

 

就業記録の収集と管理

タイムカードシステムの導入

36協定を締結したら勤務実績の正確な記録を行うために、タイムカードシステムを導入しましょう。

理想的なタイムカードシステムは、出勤・退勤記録のみならず、残業や休暇の申請と承認までシステム内で完結できるものが理想ですが、打刻カードは1枚1,500円、打刻端末であれあ1台10万円~30万円ど非常に高価です。

もし可能であれば1人1台ノートパソコンを貸与し、パソコンから出退勤の打刻と各種申請および承認を行えるようにすれば、フリーの就業管理システムを利用できるので経済的です。

もちろんノートパソコンは就業管理のためだけに導入するのではなく、Teamsを活用するなどしてチーム全体の生産性を上げるために不可欠だから・・・という考えであることは言うまでもありません。

 

残業の申請・承認を徹底する

残業は本来、上司が指示して部下に行わせるものです。

そして部下自身が残業が必要であると判断した時は、予め上司に残業の申請を行い、許可を得て残業するのがルールである。申請・承認機能つきのタイムカードシステムを導入することで、基本ルールの徹底を図り、残業時間が無秩序に膨張することを防ぐ必要があります。

 

時短ハラスメントにならないために

時短ハラスメントとは

時短ハラスメントとは、労基法違反を回避するために、上司が部下に対して仕事の状況などおかまいなしに残業を禁止し、その一方で仕事の成果を要求するために、部下達が持ち帰り残業をせざるを得なくなることをいいます。

実際のところこれまでの日本の管理職の多くは、仕事の能力よりも社内で器用に立ち回わることで出世してきた人が多いようです。

そして彼らは問題解決能力が著しく不足しているために、「努力すれば結果は後からついてくる」などと精神論でもって部下に問題を丸投げし、責任を押し付けて自分はさっさと保身に走ってしまう傾向が強いのです。

 

業務プロセス改善による時短こそ王道

時短を実現するには業務プロセス改善を行って、業務のムリ、ムダ、ムラを徹底的に排除するしか方法はありません。

あらゆる業務はIPOで構成されています。IPOとはInput→Process→Outputの略で、仕事に着手してから完了するまでのプロセスを表したものであり、すべての仕事はIPOに整理することでルーチン化することができます。

自部署のルーチンを確立することで、業務合理化が実現できる、ということは以前の記事でご紹介したので、詳しくはそちらを参照して下さい。

 

ムダが多すぎる日本の職場

筆者はこれまでに多くの組織で業務プロセス改善を経験してきましたが、それらの職場に共通しているのは圧倒的に業務のムダが多いということです。

ムダな書類、ムダな手続き、ムダなマナー等々あげればキリがありませんが、なぜそれほどムダが多いのか?というと、その職場の従業員がみな思考停止に陥っていたからです。

例えば「なぜその作業が必要なのですか?」と質問すると、きまって「前任者がそうしていたから」という答えが返ってきます。

また「ムダだと思うならなぜ変えないのですか?」と指摘すると、「職場に波風を立てるのは良くないから」と言い訳をします。

これら「前例主義」と「事なかれ主義」は日本の職場に特有の悪しき風習であり、日本企業をこのままオワコン化させたくないのであれば、絶対に断ち切るべきです。

 

年間5日以上の有給休暇の取得

年次有給休暇の付与日数知っていますか?

フルタイム雇用(正社員)の場合

労基法では、会社に対して入社日から6ヶ月経過し、所定労働日数の8割以上勤務した従業員に対して、年間10日以上の年次有給休暇を与えねばならないと定めていますが、これまで多くの日本の企業では、有給休暇の取得などまさに絵に描いた餅でした。

しかし2019年4月の改正労働基準法において、会社に対して年間5日以上の年次有給休暇の取得が義務化され、違反に対しては未達成者1名につき30万円の罰金が会社に科されることになりました。

なお年次有給休暇は初回(入社6ヶ月後)の付与日から勤続1年経過するごとに、11日、12日、14日、16日、18日、20日と段階的に増やして付与しなければなりません。

入社6年半で20日間付与されますが、以後は毎年20日間ずつ付与することになります。

 

パートタイム雇用の場合

パートタイム雇用者についても、就労日数や就労時間に応じて年次有給休暇を付与しなければなりません。

詳しくは厚生労働省の資料を確認して欲しいのですが、このうち年間5日以上所得させる義務があるのは、年間で10日以上の年次有給休暇が付与される従業員のみです。

 

取得期限のカウントのしかた

4月1日に一斉付与している場合は?

年次有給休暇は入社日から起算して付与されることは理解できたと思います。ところで会社によっては従業員の入社日にかかわらず、例えば毎年4月1日に全員一律に年次有給休暇を付与しているケースがあります。

この場合、「1年間に5日以上取得」させる起算日は、4月1日からカウントして1年間になるので注意が必要です。

 

有休の取得時効

ちなみに余談ですが、年次有給休暇には取得時効があります。

時効とは一定期間に権利を行使しないと、権利が失効してしまうという法律の基本原則であり、例えば年次有給休暇は付与された日から2年間以内に取得しないと有給休暇が消滅してしまいます。

有給休暇の取得時効についても、権利を取得した日すなわち一斉付与された日が起算日になります。

 

部下の雇用身分に合わせた公平な職務分担

日本における同一労働・同一賃金の現状

あまりにも特異な日本の雇用慣行

日本では正規雇用(正社員)と非正規雇用(契約社員、パートタイマー)という雇用身分によって、基本給や諸手当、賞与、退職金、教育研修の機会などに格差がありましたが、その一方で例えば事務職や販売職などを中心に、正規雇用と非正規雇用の仕事内容が同じなどという不公平なことがまかり通っていました。

 

先進国では同一労働・同一賃金は常識

一方で多くの先進国ではどこの企業に勤めているかに関わらず、職業ごとの年収相場というのが決まっています。

そもそも先進国では同一労働・同一賃金が当たり前であって、同じ仕事をしていても雇用身分によって処遇に著しい格差が生じるなどということは全くもって理解不能であり、場合によっては人権問題に発展するリスクすらあります。

 

同一労働・同一賃金の進め方

職務要件定義(JD)の整理

まず自部署の各業務について、その業務を完遂するために必要な資格、知識、スキル、経験などを整理した職務要件定義書(JD=Job Description)を作成します。

もしJDがうまく整理できなければ、職務要件が重複している可能性があるので、その職務を細分化してから改めてJDを洗い出してみるとよいでしょう。

 

役職と職能に合わせた役割分担

JDが整理できたら、部下の行っている現行業務と突き合わせしてみましょう。

職務分担とは本来は適所適材が原則です。これはまず職務定義があって、それに適合する人材を採用や異動でもって充当してゆくという意味ですが、日本の多くの職場では、はじめに人物ありきで後から担当職務を割り振っているために業務分担が不公平で、ゆえに業務効率が悪く公正な評価と処遇がしづらくなっています。

よってまずJDを整理し、それに現在の部下達の職務を当てはめて、職責の重さや担当業務の達成難易度によって処遇を改めることで同一労働・同一賃金に対応することができます。

一方で場合によっては雇用条件の変更を伴ったり、人材の出入りが発生したりするため、人事部を交えて調整した方がよいでしょう。

 

 

参考

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