人事部の視点 労務管理の仕事

人には聞けない大転職時代の退職のお作法


本格的な大転職時代の到来

失業保険の給付制限期間が短縮された

これまで自己都合で退職した時には、失業保険を受給するまでに7日間の待機期間に加えて3ヶ月間の給付制限期間が設けられていました。

この3ヶ月間の給付制限を行う理由は、労働者の安易な離職を抑制するためでしたが、2020年10月からこの給付制限期間が2ヶ月間に短縮されることになりました。

今回の制度改正の背景には、給付制限期間を短縮することで労働者の経済的負担を軽減し、転職しやすい環境を整えるという目的があります。よって今後は雇用流動化が加速することは必至でしょう。

 

会社にしがみつくことがリスクになる時代

雇用の流動化が叫ばれ、大転職時代と言われて久しいですが、最近は中高年層もバンバン転職する時代になってきたようです。

コロナ不況によるリストラの一環として、中高年層をターゲットにした希望退職者の募集を行う企業が増えていますが、今年はこれまでとちょっと様相が異なるようです。

最近目にしたニュースによると、社内で希望退職者を募集した多くの企業において、予定枠を大幅に超える応募が殺到しているようなのです。

そのニュースの解説によると、多くの労働者が会社にしがみつくことをリスクとして捉え、むしろ将来性の無い職場にさっさと見切りをつけて新天地に活路を見出そうとするようになってきたとのことです。

 

アラフィフだってスカウトされる

筆者は先日ついに50歳の大台に乗ってしまいましたが、そんな筆者にも某外資系企業から「日本支社の人事部長としてウチで働きませんか?」というオファーがありました。

この外資系企業は最近になって日経ビジネスや東洋経済などで時々取り上げられるようになってきた某成長分野のリーディングカンパニーです。

当初はビジネス系SNSを介して何度かオファーメッセージを頂いていましたが、「どうせAIの冷やかしだろう」と思ってスルーしていたところ、アジアカンパニーの採用担当者から直々にご連絡を頂いて驚いているところです。

かつては「転職35歳限界説」などと言われたものですが、最近では人材ニーズも多様化しており、筆者のようなミドル世代でも結構引き合いがあります。

ちなみにこのオファーについてはお断りするつもりです。

それは現在、ある企業のIPO準備をお手伝いしていますが、来年の夏を目処に区切りをつけ、新たに零細企業向けのBRPコンサルティング・ビジネスを立ち上げる予定だからです。

 

正しい会社の辞め方

生涯に2回以上は会社を辞める時代になる

最近では会社を辞めるということは、多くのサラリーマンにとって珍しいことではなくなりました。

かつては新卒で入社し、その会社を勤め上げて定年を迎えることこそがサラリーマンの美徳とされていましたが、一方で最近の企業の寿命は20年とも言われています。

これはサービスのみならず企業も消費される時代になったということかもしれませんが、新卒入社から定年退職までの40年の間に勤め先が消えてしまうリスクは大いにあると言えるでしょう。

つまり長いサラリーマン人生において、退職理由のいかんによらず、誰でも2回は職場を去らねばならない状況に遭遇する可能性があるということです。

 

ミドルは業界人脈を大事にせよ

企業がミドル層(中高年)を中途採用する理由は即戦力が欲しいからです。

これは新卒を採用し、時間をかけて戦力化するよりも、即戦力を中途採用した方が経営効率が良いからですが、ミドルが即戦力たるゆえんは豊富な知識と経験、そして広い人脈を有している点にあります。

その人脈というものは、たいていは前職でのつながりによって構築されるものですから、ミドル人材ほど会社を去る時は跡を濁さないように注意が必要です。

おかしな辞め方をして業界内で悪い噂など立てられてしまうと、転職先でなかなか成果をあげられずに苦労することになるでしょう。

 

大人の退職のお作法

基本的な退職の流れは、上司を通して会社に退職の申し入れを行い、退職願いが受理されたら引継書をまとめ、上司立ち会いの下に後任への引き継ぎを行い、関係者への挨拶まわりを終えてから未消化の有給休暇を取得して退職するというのが一般的です。

ちなみに月給制の正社員であれば原則として月の末日付での退職となりますので、退職日からさかのぼってすべきことをスケジューリングしましょう。

なお勤務の最終日に感傷的な御礼メールを全社員へ一斉送信する人がいますが、会社のメールはあくまでも業務のためのツールですので私的利用は控えたいところです。

 

退職時に気をつけること

退職願と退職届は違う

「退職願」と「退職届」は法的には全く意味が異なるということをご存知でしょうか?

民法第623条によると、「雇用契約は労使の一方の側から申し込みを行い、相手がそれを承諾した時に成立する」ことになっており、契約の解除もまた「解除の申し入れ」と「相手方の承諾」によって成立します。

そして「退職願」は労働者側からの雇用契約解除の申し入れであり、会社がそれを承諾した時点で退職が成立するのです。

一方で民法第627条には、「雇用契約は相手方に対して契約解除を通知し14日間が経過した時点で消滅する」とも定められており、「退職届」は契約解除通知ということになります。

「退職願」は会社が承諾する前であればいつでも撤回できますが、「退職届」は一方的な通知なので、会社に通知した時点で取り消しできません。

 

月給者は月末での退職がキホン

月給者は月の末日での退職がキホンです(退職日と最終出勤日は違います)が、これは月給制の正社員は勤怠や給与計算を月末で締め切りますので、月の途中で退職するということは、よほどイレギュラーな事情でもない限りあり得ないからです。

また退職後の転職活動において履歴書に前職の退職日を記載することになりますが、応募先の採用担当者に「実は何かやらかして途中で辞めざるを得なくなったのではないか?」と勘ぐられる可能性があります。

それと社会保険料(健康保険、介護保険、厚生年金)の問題もあります。

社会保険料は当月分の半額を労働者の翌月の給与から天引きし、残りを会社が負担して国に収めています。

しかし月の途中で退職すると、その月の社会保険料は自身で住所地の役場に出向いて国民健康保険と国民年金に切り替え手続きを行い、保険料を収めなくてはなりません。

その際の保険料は全額自己負担となりますので、人によっては社会保険よりも負担額が大きくなってしまうこともあります。

 

思わぬ住民税の落とし穴

社会保険料と併せて注意したいのが住民税です。

住民税は毎年1月から12月までの給与所得に対して課税され、翌年の6月から翌々年の5月にかけて、月割で給与から天引きされます。

会社はこれらの住民税をひとまとめにしてから自治体に納付するシステムになっており、これを特別徴収制度といいます。

ところで1月以降に退職した労働者については、5月までの未納分を一括して給与から天引きするルールとなっていますが、この一括徴収される金額がバカになりません。

また失業中の国民健康保険や国民年金の保険料には減免制度がありますが、住民税についてはほとんどの市町村において減免制度は設けられていませんので、退職後のシミュレーションはしっかりと行っておきましょう。

 

退職させてくれない時は

退職代行屋さんってどうよ?

昨今の人手不足の影響によって従業員を違法に酷使しつつ、なかなか退職させてくれないブラック企業が増えています。

これらのブラック企業の多くは「人手が足りなくなって売上がダウンしたら、その分の損害をオマエに請求するぞ!」などと脅して無知な従業員を会社に縛り付けるらしいのですが、無知で気の弱い従業員に代わってコワモテの上司と退職交渉をしてくれる通称「退職代行屋」なる業者が話題になっています。

退職代行屋に退職交渉を依頼する相場はだいたい1回あたり5万円くらいらしいのですが、すでに説明したとおり、会社に対して雇用契約の解除を申し入れて14日間が経過したら退職できますから、高額なフィーを支払ってまでこういった業者に依頼するのはどうかと思います。

もし苦手な上司に退職を切り出すのが辛かったら、退職届を配達記録付きの内容証明郵便でもって勤務先の代表者宛に送達すれば、後は一切出社せずに退職することができます。

 

退職のルールは民法に書いてある

退職のルールは労働基準法ではなく民法第627条に定められており、会社と労働者はいつでも退職の申し入れを行うことができ、退職の申し入れから14日間経過すると雇用契約は終了することになっています。

しかし会社側が好き勝手に労働者をクビにすることのないように、民法の特別法である労働基準法によって、会社側が雇用契約を終了できる条件について、厳しい制約が設けられているのです。

ちなみにこれらの法律とは別に労働契約法というものがありますが、これは雇用契約を結ぶ際に会社側が強い立場を利用して恣意的な契約を結ばないよう、会社が守るべき義務について定めたものです。

 

雇用流動化が日本を救う

ドラッガーの言葉

「組織が腐っている時、仕事の成果を公正に評価してもらえない時、能力に見合った正当な処遇をしてもらえない時は、辞めることが正しい選択である。出世は大した問題ではない。」というのは筆者が敬愛してやまないP.F.ドラッガー博士の言葉です。

筆者はこの言葉にどれほど救われたかわかりません。また実際にドラッガー博士自身も勤め人の時に中途半端な処遇にさっさと見切りをつけ、研究の道に転身したことで「マネジメント」のような名著が続々と世に生まれることとなったのです。

 

離職率と経営者の資質は比例する

自社の離職率が高いと嘆く経営者がいますが、自社の社員が定着しない原因の多くは経営者自身の資質にあると言っても過言ではありません。

厳しい話で恐縮ですが、有能な社員が職場を去ってゆく理由は、まさにドラッガー博士の言葉のとおり、不公正な人事が横行し、評価と処遇が適正に行われないことによって、もうその職場では何ら得るものが無いと判断したからです。

有能な社員ほど常に5年先、10年先のビジョンを見据えて己のキャリア形成を行ってゆくものであり、彼ら(彼女ら)が最も恐れることは、淀んだ職場に絡め取られて自らのキャリア実現のチャンスを失ってしまうことなのです。

かくしてこの単純な理屈が判らない経営者の元には、沈殿カスのような“人罪”だけが残ることとなります。

 

キャリア設計の前提を変える

もはやひとつの会社で定年を迎えることは難しい時代となり、また会社においても組織のフラット化が進むことで、役職でもって処遇できる人数が少なくなってゆくでしょう。

かつては窓際に甘んじて定年まで会社にしがみつくという生き方が、ある意味では出世コースから外れたサラリーマンの王道でしたが、数年前からメーカー系の大手企業を中心に、ぶら下がり社員を狙ったリストラが加速しています。

よって特に若い人ほど、こんなご時世において未だに安定性だの定着率だのを気にしているようではダメです。むしろ最初から2~3回くらいは転職するという前提でもってキャリア設計を行ってゆくべきでしょう。


 

参考

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