
就活戦線異常なし
新型コロナウイルスの変異種である「オミクロン株」の出現によって、いったん沈静化したかに思えたコロナ感染リスクが再燃しつつある。
北海道においては、この新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による第1回目の緊急事態宣言が発令されたのが昨春のことだったが、それから2年近くが経過して、多くの企業では新卒リクルートの予定がすっかり狂ってしまったのではないだろうか。
しかしいざ蓋を開けてみると、業種によって採用意欲に温度差は生じているものの、「新卒求人倍率」や「内定率」はコロナ前とはさほど大きく変わらず、札幌市の文系私大においては、関東圏に比べて2~3ヶ月程度遅れて内定率が上がってゆくパターンもほぼ例年どおりだ。
よって札幌市内のおよそ半分近い就活生が、現時点においても「年内」もしくは「在学中」での内定を目指して頑張っている・・・といった状況だろうが、内定する学生はどこの企業でもすぐに合格し、そうでない学生はどこを受けても苦戦するといった傾向は今も昔もあまり変っていないような気がする。
世代間ギャップが内定に与える影響
「内定をもらえる学生」と「そうでない学生」の違いについては、いろんなサイトで解説されているのでここでは詳述を割愛したい。
一方で巷でよく言われている「履歴書の書き方」や「みだしなみ」さらに「面接テクニック」などの巧拙以外にも、たとえば就活生と採用責任者の「世代間のギャップ」なども採否に影響しているのではないだろうか?とふと感じた。
「世代」といえば、最近の若者を「Z世代」というのをご存知の方も多いと思うが、生まれた年代によって「X世代」「Y世代」「Z世代」に分類して世代ごとの価値観や購買志向などを分析し、マーケティング戦略を考える時の参考指標などとして活用されているようだ。
分類 | 生まれた時代 | 世代を象徴するキーワード |
X世代 | 1965~1980年頃 | バブル景気、団塊ジュニア、デジタルイミグラント、キャリアアップ |
Y世代 | 1980~1995年頃 | 就職氷河期、ミレニアル世代、ゆとり教育、個人主義&安定志向 |
Z世代 | 1995~現在 | VUCA時代、ダイバーシティ、デジタル&ソーシャルネイティヴ、共感性、社会運動 |
この記事を書いているのは2021年だから、今どきの就活生は「Z世代」”どストライク”といったところだが、一方の採用側である人事の責任者は、おおよそ50歳~60歳くらいの「X世代」ゾーンに当てはまる人が多いそうだ。
そしてこれはあくまでも私の勝手な憶測に過ぎないが、もしかしたら「内定を獲得しやすい学生」というのは、「X世代」の面接官に高く評価されるような自己PRに長けている学生が多いのかもしれない。
「Z世代」と「X世代」の特徴と価値観のギャップ
「Z世代」の主な特徴
現在の就活生「Z世代」の特徴を簡潔にまとめてみると、概ね次のとおりとなる。
Z世代の特徴
- 生まれた時からハイスペックなネット環境で育ち、ITデバイスの操作やSNSなどを日常生活の一部として当たり前のようにこなす「デジタル&ソーシャル・ネイティブ」である。
- 就職に際して「自分の価値観」とのマッチングを重視し、「共感できるか」「エモいか」・・・という視点で就職先を選ぶ傾向が強い。
- 「ジェンダー」に対してニュートラルで、「社会問題」への関心が高く、企業の業績や給与条件よりも、CSRに対する企業の姿勢をよく見ている。
「X世代」の特徴
一方の採用側の「X世代」はどんな人達か?というと、「X世代」である私の自身の考えも含めてだいたいこんな感じではないだろうか。
X世代の特徴
- TVや雑誌中心のメディアに囲まれて育ってきたが、成人した頃にITが急速に普及しはじめたため「デジタル・イミグラント(移民)」と呼ばれる。
- ゆえに情報収集は「アナログ媒体」から「デジタルデバイス」まであらゆるツールを活用して幅広く行い、新しいモノ・コトに対しても肯定的で、むしろ積極的に活用する。
- 「イメージ」や「流行」よりも「コンセプト」や「機能性」および「コスパ」を重視し、自身のライフスタイルに対して、世間はどうであれ自分のこだわりを持っている。
「Z世代」と「X世代」のジェネレーション・ギャップ
周囲との「調和」や「共感」を大切にする「スマート」で「理想主義的」な「Z世代」に比べると、「X世代」は「昭和チックなアナログさ」と平成後半から令和にかけて一気に進展した「デジタル社会の合理性」を併せ持ち、シビアに算盤をはじく「現実主義者」といった感がある。
よって「Z世代」が「良い」と感じているモノやコトであっても、「X世代」にとっては「なにが良いのか理解できない・・・」というギャップも多々ありそうだ。
このギャップが単なる「個人的な趣味」の範疇であれば問題ないが、「就活」という状況において、それぞれ「就活生」と「面接官」という立場で相対するような状況においては、ちょっとした対策が必要だろう。
「X世代」からみた「Z世代」の就活生ってどうよ?
かくいう私も「X世代」の人事部長であるが、ここ数年間の新卒リクルートにおける就活生を見る限り、内定に辿り着けない学生にはいくつかの共通した傾向があるように感じる。
多分に私の主観が入り混じっていることを承知の上で、主なものを3つあげると次のとおりだ。
1,企業がなぜ人材採用するのかを理解していない

キレイなオフィスで事務の仕事に就きたいと思ってました!
事務の仕事って、具体的には当社でどんな事務の仕事をしたいんですか?


事務であればなんでもいいんですけど・・・
・・・(ウチは慈善事業やってるワケじゃないんだけど)

2,業界や企業リサーチが浅く情報が薄っぺらい

社会に貢献する御社の事業に大いに魅力を感じました!
具体的には当社のどの事業に対して、どのような魅力を感じましたか?


ですからなんか全社的に社会貢献しているイメージだなぁ~と。
・・・(ウチのホームページすらロクに見てないだろ)

3,自分の強みや弱みを全然わかっていない

あなたを採用するメリットはなんですか?
入社したら一生懸命に頑張ります!


・・・(いまや「一生懸命に働く人材」って希少種ってこと!?)
就職は進学じゃない!
そもそも企業が人材採用するのは「事業を組織的に運営することで、経営リソースを効率よく使って最大限の成果(利潤)をあげるため」である。
よって求職者(就活生)の側は、自分を採用することがいかに企業の経営にとってメリットのあることなのか、ということを売り込まねばならないのだが、なかなか内定をもらえない学生に限って、「就職」は「義務教育」の延長線上であり、学校を卒業したら企業側が仕事を用意してくれるもの・・と勘違いしているフシがある。
「Z世代の就活生」と「X世代の面接官」
「就職の目的」が曖昧で、「企業研究」の中途ハンパな学生と面接していると、いくら美辞麗句を並べ立てたところで「アタシもうすぐ卒業するので就職しなければならないの。んでインスタ映えするようなお洒落なオフィスで、ラクでキレイな事務仕事がしたいの。」といった自分本位のホンネが透けて見える。
一方の我々「X世代」の面接官の多くは前述のとおり「コンセプト志向」で「コスパ重視」の「現実主義者」だから、「あなたの都合は良く理解できたけど、我々があなたを採用するメリットっていったいなんなの?」とシビアに一刀両断にされてしまうのがオチだ。
そもそも「就活」というのは自分の「労働サービス」を企業に売り込むことであり、「面接」はある意味では「商談」みたいなものだから、就活においても「相手のニーズ」と「自分のウリ」が合致するかしっかりマーケティングを行い、最も効果的なプレゼンができるようにプロモーションの方法も工夫しておく必要がある。
特に業績悪化を理由にカンタンに人材をクビにできない日本において、社員をひとり雇うということは、例えば平均的な生涯賃金を2億円とした場合、それに社会保険料の会社負担分、退職金の引当金、健康診断等の福利厚生費、人材育成のための教育研修費などを加味すると、1案件(1人)につき3億円近い「高額な投資」を行うということでもある。
しかも4大経営リソースである「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」のうち、「ヒト」というものは設備投資や金融投資に比べて「ハズレ人罪」を掴んでしまったり、「優秀な人財」であっても突然「転職」してしまったりと、「期待リターン」の「不確実性」が非常に高い。
ゆえに我々面接官は「投資」に見合った「リターン」が得られるような人材かどうか慎重に見極めようとするが、一方の就活生の方はそんな事情など露知らず、まるで「丸腰でジャングルに踏み入る」ようなノーテンキさで面接に臨むような人が多いように感じる。
「X世代」を攻略しなければ内定はない
ここまで色々と述べてきたが、要するに「X世代」の特徴をよく研究し、「X世代」の面接官を攻略しないことには内定はおぼつかないということだが、最後に「X世代」の面接官の攻略法を解説しておしまいにしたい。
1,就職のコンセプトを明確にする
起業や高等教育機関への進学志望者を除いて、ほとんどの学生は学校を卒業したら就職するが、ただ漫然と就活するのではなく「なぜその業界が良いのか?」またその業界の中でも「なぜその企業が良いのか?」そしてその企業において「なぜその仕事に就きたいのか?」といった「志望動機」を具体的かつ簡潔明瞭に説明できるようにしておくこと。
よく考えてみて欲しいのだが、「文系」の学生に比べて「技術系」や「医療系」の学生が就活期間の早いタイミングでバンバン内定してゆくのは、すでに専門教育機関に進学した時点で、卒業後の「キャリア」すなわち「志望動機」が明確だからだ。
そして「志望動機」すなわち「就職のコンセプト」なので、「あなたの就職コンセプト」を明確に設定しておくことで、ミスマッチな応募を回避し、面接官に対する志望動機のPRもより印象的に行うことができる。
2,情報収集の量と質=意欲だと考える
「就職のコンセプト」がなかなか定まらない・・・と悩む学生の99%は圧倒的に「企業研究」や「職業研究」が足りていないからなのだが、そもそも「業界」「企業」「職業」などに関する「情報量」があまりにもチープすぎるので、「研究(分析)」できる状態にまで至らないのだ。
ちなみに私はこれまでに人事屋としてさまざまな業界を転々としてきたが、未知の業界に参入する際には、着任前にその業界に関係する実務書を20~30冊程度読んで予習していた。
業界の「ド素人」であってもそれくらいの事前準備をするだけで業界のことは概ね理解できるようになるが、ましてや今はWebをフル活用することで「X世代」が就活していた時代に比べると比較にならない量の情報をより効率的に収集できる。
そして「X世代」の多くは「情報の質は情報量に比例する」と考えており、ゆえに「自社のことをしっかりとリサーチしてきている学生」→「きっと仕事もそつなくこなすだろう」=「よし買い(内定)だ!」・・・といった心理が働くものだ。
3,機能性とコスパの良さをアピールする
「X世代」にとって「就職面接」は自分を売り込んで「成約(内定)」を勝ち取るための「商談」であると述べたが、「自分に投資(採用)」することで企業にとってどんなメリットがあるのか?ということを自身の「機能性」と「コスパのよさ」といった切り口でアピールできれば内定は間違いないだろう。
ただし「企業のニーズ」と「自分の強み」が合致することではじめて企業にとってのメリットとなるので、やはり徹底的に情報を収集し「業界」「企業」「職業」などの研究をしっかりと行った上で、自分の興味や特性がそれらの要素の人材ニーズと合致するか分析しておかねばならない。
4,プレゼンのリハーサルはしっかりやっておく
最後に「プレゼン」つまり「面接の練習」はしっかりと行っておこう。
いくらプレゼンの内容が「100点満点」であったとしても、それが相手に半分しか伝わらなかったら、そのプレゼンの評価は「50点」にしかならない・・・ということを理解している人は、就活生に限らず社会人でも案外少ないものだ。
たとえばアメリカの大統領の就任演説はだいたい10分~20分程度だが、その短時間のスピーチのために、多くの大統領はなんと丸2日間かけて入念にリハーサルを行うのだそうだ。
政治家といえば「しゃべってナンボ」の商売だが、そんなスピーチのプロですら、それだけ用意周到に準備してから本番に臨むのだから、我々素人であればなおさらだろう。
よって最低10回は声に出して面接のシミュレーションを行って、台本を棒読みするのではなく、「本気で自分はそう思っているのだ・・・」と自己暗示をかけて、自分の言葉として自然に口から出るようになるまで練習してから面接に望みたいところである。
そこまでやれば絶対に内定を勝ち取ることができるので、ぜひ頑張って頂きたい。