令和時代の人事マネジメント

新卒採用のトレンドから見えるサラリーマンの厳しい未来


合同説明会からインターンシップへ

インターンシップ参加者の急増

労働力人口の減少により年々厳しさを増す新卒採用ですが、今年は北海道でも就職合同説明会からインターンシップに舵を切る企業が増えたように感じます。

これは採用戦略の転換というより、むしろ学生側がよりインターン志向になったためですが、2014年卒ではインターンシップ参加学生が全就活生のうち32.1%だったのに対し、2020年卒では79.9%にまで増加しています。(マイナビ就職事業本部統計より)

 

 

2020卒リクルートは4月1日内定が増加

「就活ルール撤廃」という経団連会長の発言にクギを刺した政府の思惑とは裏腹に、東京や大阪などの大都市圏を中心にすでに4月1日の時点で内定出しを行った企業が多かったようです。

かつては3月1日に就活解禁→6月1日選考開始→10月1日内定出しという紳士協定の元に新卒採用が行われていましたが、現在は3年生の秋頃からインターンシップに参加し、4年生に進級すると同時に内定獲得という学生が増えているようです。

 

 

インターンシップの実態は合同説明会の前倒し

多くの企業のインターンシップではどのようなことが行われているかというと、1~2日間の日程で企業説明会とOBOGとの懇親会などを開催しているところが多いようです。

インターンシップといいつつ、その実態は従来の合説に懇親会をプラスしただけで、単純に採用活動を半年間前倒ししただけのものです。

企業側としては他社に先駆けて少しでも早く新卒採用を開始したいのですが、世間体もあって3月1日を堺にその前をインターンシップ、その後を就職説明会というように、名称を使い分けているだけというのが実情でしょう。

 

 

インターンシップは長期化してゆく

ただし大都市圏の優秀な学生の間には、アルバイトをするくらいならインターンに参加して、給与をもらいながら社会勉強をしたり、就活に備えて企業研究をしたりする方が合理的であるという風潮が広まっているようです。

そしてこれらの学生を取り込むべく、今後はインターンシップの内容がプレ新入社員研修のような本格的なものに進化し、それに併せて実施期間が1週間から1ヶ月程度に長期化してゆくことが予想されます。

 

 

インターンシップの次を狙え

インターンシップはすぐに限界を迎える

個人的には新卒採用のトレンドは西高東低だと感じています。インターンシップしかり、ダイレクト・ソーシングしかり、だいたい関西で新しいトレンドが生まれ、翌春に関東、そして翌々春に筆者の暮らす札幌市のような地方都市へ波及しているように思えます。

札幌市の2020年卒採用ではインターン組と合説組が半々でしたが、2021卒では一気にインターンにシフトするだろうと予想しています。

ではインターンシップフェアで一生懸命に就活生を勧誘すればよいのか?といえばそうでもありません。

多くの企業のインターンシップが就職合同説明会の前倒しに過ぎない以上、結局のところ遅かれ早かれ出展企業同士の消耗戦に陥ってしまうのが関の山だからです。

 

 

次の採用トレンドは産官学連携による地域人材創生

実は私は現在、札幌市の中心に本社を構える大企業で人事部門の責任者をしていますが、同社の人事戦略の一環として、就職合同説明会への出展は来年8月をもって打ち切ってしまおうと考えています。

そして9月以降は2022年卒のインターン募集に注力しつつ、いくつかの大学と提携して地域創生事業を立ち上げ、ケースメソッド学習を通して地域人材の育成スキームを構築できないだろうかと模索中です。

すでに地方の大学では本格的な人口減少時代を見据え、産官学連携による地域人材創生事業に着手したところもあります。

この地域人材創生事業に自社が参画することで、地域の人材流出を阻止しつつ、学内に新卒採用の特別枠を確保し、若年人材を安定的に稼得してゆくのが狙いです。

 

 

LOCASにみる高校生の地域人材育成の事例

最近は四大卒だけではなく、高校生の段階から地域への人材定着を行ってゆこうという動きが活発になっています。

具体的にはマイナビがハブとなって、高校の社会学習と企業のインターンのマッチングを行うLOCAS事業や、北海道の地場企業や地元大学のPRをまとめた「北海道ではたらくひと・まなぶひと」という冊子を道が主体となって刊行し、全道の高校へ配布して高校生に対して地元での就業を促進する取り組みなどが挙げられます。

これらの背景には、若年労働者を確保したい企業側の思惑と、地域人材の域外流出を食い止めたい自治体の政策の合致があります。

 

 

道内主要大学の動き

このような動きに対して道内の主要大学の対応はまちまちです。

大学生の本分は高度専門教育の修得であるとして、インターン推進や地域人材創生への参画に消極的な大学もあれば、むしろ大学こそ経営感覚が必要であるとして、インターン参加学生に対して講義の単位を授与したり、地域人材創生にマッチしたカリキュラムを開講する大学もあります。

個人的には臨床系や理工系は別として、特に経済、経営、法学、外国語、情報システムなどの学部を有している大学は地場企業と積極的に連携し、地域における自校独自のプレゼンスを発揮してゆくべきではないか、と考えています。

 

二極化する大卒者のキャリア

早期内定組とスロースターターの違い

就活の場がインターンシップに完全移行し、就職合同説明会はいずれ消滅してしまうのか?といえばそういうことにはならないでしょう。

今後は早期にインターンシップに参加して業界・企業研究をしっかりと行い、4年生進級と同時に内定を獲得する「意識高い系」の学生と、あちこちの就職説明会を転々としながら年内までに就職先を決める「自分探し系」の学生に二極化してゆくと思います。

 

 

夏以降の選考は学生の質が下がる

とはいえやはり採用側からみると、やはり前者の方が就職に対する目標が明確で、なおかつこういう学生に限って自己PRも上手なので、つい「将来的な成長が期待できそうだな・・・」と評価しまうのは事実です。

一方で夏以降も就職活動を行っている学生は、どちらかというと自社に入社してから何をしたいのか明確でなく、むしろ義務教育の延長線上に就職があると考えているのでは?という甘っちょろい印象は否めません。(そもそも就活とは自分を売り込む「商談」です)

 

 

企業に必要なのは人材育成力

しかし「自分探し系」の学生に理想を求めること自体、間違っているとも思います。今は就職氷河期ではないのですから、このような学生については、自社でイチから教育するつもりで採用しなければ、若年労働力など確保することはできません。

これは中途採用についても同様で、このご時世に応募者に対して「資格が無い」「経験が足りない」などといって不採用にしているような企業は人材マーケットの相場観が著しく欠落していると認識すべきです。

資格が無ければ入社後に取得させる、経験が無ければ自社で積ませる…くらいの発想が無ければ有能な人材など確保できません。

 

 

採用選考からキャリアは二極化してゆく

今回のまとめです。4月の時点で内定を決めてくる「意識高い系」の学生が優秀なのは間違いありません。

そもそも大学とは高度で専門的な学びの場ですから、就活を通じて「自分のやりたいこと探し」をすること自体が本末転倒であって、結局は中途半端な学生生活を送ってきたと思われても仕方ありません。

よって必然的に「意識高い系」の学生と「自分探し系」の学生とでは、入社後のキャリアが二極分化してゆきます。

採用時に最終学歴でキャリア分けすることはこれまでも行われてきましたが、今後はそれが一層露骨になり、30代で年収に倍近い差がついてしまうことも珍しくなくなります。

結局、サラリーマンの所得格差はすでに就活時から始まっているということになりますので、とりあえず四年制大学さえ出ておけば人生安泰などという幻想は、学生さんも親御さんも捨てたほうがよいのではないかと思います。

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