職場のパワーハラスメントとは?
職場のパワーハラスメントの定義
現在、国内の多くの職場ではパワーハラスメントが大きな問題になっています。またパワーハラスメントは年々増加の一途を辿り、それに比例して個別労使紛争やパワハラに起因する精神疾患や自殺など、深刻な事態に陥ってしまったケースも多々あります。
「職場のパワーハラスメント」について、厚生労働省では次のように定義しています。
パワーハラスメントの6類型
パワーハラスメントには6つのパターンがあります。
叩く、殴る、蹴るなどの暴行を加える。丸めたポスターで頭を叩く。備品やゴミを投げつける。
みせしめのために同僚の目の前で叱責する。他の職員を宛先に含めて(cc等)メールで罵倒する。些細なことを必要以上に長時間にわたり繰り返し叱る。
職場で孤立するように仕向ける。1人だけ席を隔離される。強制的に自宅待機を命じられる。わざと社内行事から外す。
仕事のやり方のわからない新人に、物理的に処理が不可能な量もしくは期限の仕事を押し付ける。
本人の実績や経験に見合わない雑用だけを強要する。採用職種と無関係な作業や雑用ばかりを命じる。
交際相手について執拗に問う。配偶者や家族の悪口を言うなど、必要以上にプライベートに干渉する。
(厚生労働省「明るい職場応援団」サイトより一部加筆して転載)
パワーハラスメントの現状
増え続けるパワハラ件数
(厚生労働省「明るい職場応援団」HPより転載)
緑色の某グラフは平成18年から平成28年までに都道府県労働局に寄せられたパワハラの相談件数です。またピンク色の折れ線グラフは、個別労使紛争等に占めるパワハラの割合です。
平成18年には22,153件程度だったパワハラ件数は、10年間で3倍以上の70,917件に達しており、個別労使紛争に占めるパワハラ件数の割合も、当初の10、3%から倍の22.8%にまで激増しています。
これらの背景には、従来の硬直的な雇用慣行や非効率な仕事の仕方を棚上げしたまま、企業が経営の合理化をゴリ推ししたことによる「職場のひずみ」と、そして労働者の権利意識が高まり、これまでは泣き寝入りしていたのが、公に救済を求めるようになったことがあります。
パワハラによる精神障害の労災認定件数
(厚生労働省「明るい職場応援団」HPより転載)
パワハラによって精神障害(うつ等)になり、労災認定された件数の推移です。毎年500件弱の事例で労災認定されていますが、証拠を残さないように巧妙にパワハラが行われ、因果関係を立証できずに労災認定されなかったケースはかなりあると思われます。
パワハラの内容
(厚生労働省「明るい職場応援団」HPより転載)
これは厚生労働省が独自に行った、パワハラ被害者に対するアンケートを集計したものです。実際にパワハラを受けた内容について「パワハラの6類型」に基づいて分類した結果、「身体的な攻撃」はわずか6.1%だったのに対し、「精神的な攻撃」が54.9%にも上ることが判りました。
日本の職場パワーハラスメントの特徴として、陰湿な方法でもって精神的に追い込んでゆく傾向が強いということがわかります。
パワハラの加害者

(厚生労働省「明るい職場応援団」HPより転載)
これはパワハラの加害者についての被害者アンケート結果を集計したものです。上司から部下へ、先輩から後輩へ、正規労働者から非正規労働者へ、というように、職場での優位な立場を利用した「弱い者イジメ」が非常に多いということを如実に示しています。
企業規模別のパワハラ相談件数
(厚生労働省「明るい職場応援団」HPより転載)
パワハラ相談があった事業所のうち、従業員数1,000人以上の「大企業」にパワハラが多く発生しています。また企業の規模が大きくなるのに比例して、パワハラ相談件数が増加していることも判ります。
これには様々な理由がありますが、ひとつは職員数が増えれば、単純にその分だけ対人トラブルも増えること、そして職場の階層が増えると、やはりその分だけパワハラが発生する環境も増えるからだと思われます。
パワハラが発生したことによる職場への影響
(厚生労働省「明るい職場応援団」HPより転載)
パワハラの直接的な被害者でなくとも、パワハラの現場に居合わせるのは非常に気分の悪いものです。誰しも雰囲気の悪い職場で働きたくありませんし、陰湿なパワハラ行為を見せつけられることで、精神的なダメージを負うこともあります。
パワハラ加害者は自分の権威付けのために、あえて見せしめ的に職場内でパワハラを行うことが多いのですが、それによって職場に対して様々なデメリットをもたらしていることをよく知るべきでしょう。
パワハラ対策の現状
日本はパワハラ対策の後進国
これまで見てきたようにすでに日本ではパワハラは深刻な社会問題となっていますが、これだけパワハラによる被害者が続出しているのにも関わらず、日本にはパワハラを禁止したり、パワハラ加害者を処罰するような法律がありません。
これは企業側の「パワハラと指導の線引きが難しいから」という主張が強いためですが、実際のところパワハラと指導の線引きは明確にできると思います。むしろパワハラを容認して労働者を都合よく使いたい企業側の本音が透けて見えます。
現時点では、2019年に企業に対して「パワハラ防止措置」を義務付ける法案を国会に提出する方向で動いているようです。法案が成立すれば2020年4月から大企業が、そして2022年4月にから小企業が適用となります。
ただしこの法律にはパワハラ行為を禁止したり、パワハラ加害者やパワハラを放置した企業に対する罰則規定などは設けられておらず、パワハラ対策にどれくらいの実効性があるかは甚だ疑問です。
パワハラに対する企業の取り組み
パワハラに対しては大企業を中心に社員教育を行ったり、職場で啓発ポスターを貼ったりしているようです。
厚生労働省「明るい職場応援団」調べでは、これらの活動に一定の成果が認められたと回答した企業が多数あったとのことですが、年々増加し続けるパワハラ相談件数を見る限りでは、企業側の自画自賛といった感は否めません。
厳しい見方をすると、企業は「パワハラに目をつぶって欲しい」、政府は「企業側に配慮したい」、そして官庁は「対策に取り組んでいるポーズは見せておく」というのが本当のところだと思います。
結局、私達は自分の身は自分で守るしかなさそうです。
END
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