人事部の視点 採用管理の仕事

多様化するリクルートの手法(その2)ダイレクトソーシング型リクルート


インターンシップ

就活ルールの崩壊

長らく経団連に加盟している大企業の間には「就活ルール」が存在しました。就活ルールとは新卒者の青田買いを防止するために、加盟企業間で新卒リクルートを開始するタイミングを予め示し合わせた紳士協定です。

具体的には3月1日より求人票公開および就職説明会開催、6月1日より採用選考開始、10月1日より内定出しというスケジュールが通例となっていました。

しかし昨今の人材不足のあおりを受けて、経団連に加盟していない外資系や中小企業を中心に3月1日前からの新卒リクルートが常態化し、2019年に経団連会長が「就活ルール不要」について言及したことから、就活ルールは有名無実化してしまいました。

 

インターンシップという名の採用活動

新卒採用の前倒しを受けて、就活サイトや就職合同説明会を運営しているマイナビやリクナビなどの大手就活情報社は、苦肉の策としてインターンシップを新たな新卒リクルートの商品として売り出しました。

本来のインターンシップとは、たとえば臨床研修医や教育実習生などが、医師や教師の職に本採用される前に現場で実習を積むことをいいます。

新卒リクルートのインターンシップも建前上は「業界・企業研究」なのですが、実態としては従前の企業説明会とあまり大差なく、10月1日にインターンシップサイトのオープンおよびインターンシップの参加受付開始、そして翌年3月1日になるとそれらが一斉に就活サイトおよび企業説明会の参加受付に切り替わる仕組みが一般的です。

 

最近のインターンシップのトレンド

インターンシップが就活解禁前の企業説明会として認知されたことで、最近では3年生の10月にインターンシップの募集を行い、12月~翌年2月頃にインターンシップ(実質的な採用選考)を実施し、3月1日には内定出しを行う企業が増えています。

インターンシップの内容も、当初はこれまでの企業説明会に職場見学と懇親会をプラスしたような1DAYコースが多かったのですが、インターンシップの質の良し悪しがSNSなどを通じて就活生に拡散されるようになると、ワークショップを取り入れた2~3DAYSの本格的な研修プログラムも登場し、インターンシップを自社のブランディングに活用しようとする企業が増えています。

なお東京圏の就活生の間では「ブラックバイトで消耗するくらいなら、給料をもらって企業研究(インターンシップ参加)した方がいい」と言われているそうです。

 

リファラルリクルーティング

広がるリファラル採用

「リファラル」とは「紹介」という意味です。つまり自社の従業員の知り合いで良さそうな人材を紹介してもらい、一定の勤続期間を経過したら紹介者に報奨金を支払うシステムです。

慢性的な人材不足の医療業界では看護師職などを中心に以前から行われており、1件あたりの報奨金はだいたい10~20万円程度です。

人材紹介会社を通して採用を行うよりもはるかに割安なコストでもって人材調達が可能なため、今日では多くの一般企業でもリファラル採用を行っています。

 

リファラル採用のメリットとデメリット

リファラル採用のメリットは、なんといっても自社の従業員の知り合いなので、人材のハズレが比較的少ないということでしょう。人材紹介会社に高額な紹介手数料を支払うより、自社の従業員に報奨金を払った方が、会社に対する社員のロイヤリティもアップします。

一方で採用側からみると、紹介者の立場に配慮して、よほどの理由が無い限り不採用にしづらいこと、また紹介する側もしくは紹介される側にとって、例えば友人から同僚(もしくは上司と部下)に関係が変わったことで、以後の人間関係も気を遣うものに変化してしまう可能性があるということです。

 

ヘッドハンティング

身近な採用方法となりつつヘッドハンティング

ヘッドハンティングとは他社の有能な人材を引き抜いて、自社の社員として採用することをいいます。

ヘッドハンティングを行う人材会社もしくは人材エージェントをヘッドハンターといいますが、そもそも転職意思の無い人を口説き落としてクライアント(依頼企業)へ転職するように動機づけを行うため、ヘッドハンターには他の人材ビジネスの担当者に比べて高度なプレゼン能力および交渉力が求められます。

かつてはヘッドハントといえば大企業の経営幹部クラスというイメージでしたが、今の人材不足の時勢にあっては、中小企業の中間管理職もヘッドハントのターゲットとなることは珍しくありません。

 

ヘッドハンティング専門の人材会社もある

筆者も過去に2回ほどヘッドハントをされた経験がありますが、たいていはホテルのラウンジなどでヘッドハンターと待ち合わせをし、コーヒーでも飲みながら引き抜きの目やクライアントの事情などを交えた相談ベースでの面談からスタートします。

そもそもヘッドハンターの眼に留まる人材というのは、現在の勤め先でもエース級として活躍していることが多く、それなりの処遇(給与や役職)を得ているため、あまり転職の意思が強くないことが普通ですので、転職への動機づけを行うまでにクライアント側の役員や人事部を同席させて通常4~5回程度の面談を設けることになります。

かつてヘッドハンティング会社は人材紹介業に比べて企業規模も採用活動も小規模であることが多かったのですが、最近は大手企業が大々的に行うようになってきました。

ある夜、筆者が採用担当者としてヘッドハンターに同行し、某ホテルのラウンジでターゲットと面談した時には、なんと同じラウンジで我々以外にも3組の引き抜き面談が同時進行で行われていて驚いたことがあります。

 

ダイレクトソーシングの時代へ

投網漁型採用と一本釣り漁型採用

前回は主に求人広告などの媒体でもって求職者を募り、応募者について面接などの選考を行って採用する方法について説明しました。今回ご紹介した採用方法は何らかの方法で求職者と接触する機会を設け、ターゲットを定めてダイレクトに狙い撃ちして採用する方法です。

これを「ダイレクトソーシング」といいますが、漁に例えるなら従来の採用方法が求人広告でもって広い範囲に網をかけ、その中から価値のありそうな魚を選別する「投網漁」方式、一方のダイレクトソーシングは最初からターゲットを決めてアプローチする「一本釣り」方式と言えるでしょう。

 

コア人材とフロー人材

現在は空前の人材不足であり、人材マーケットは超売り手市場と言われていますが、採用トレンドを見る限り、誰でもどこへでもすぐに就職が決まる・・・という訳ではなさそうです。

経営企画やマーケティングなどの経営戦略、また人事労務、財務会計といった経営管理の専門知識やスキルをもった人材を「コア人材」といい、末端の現場で単純作業を行う人材を「フロー人材」といいますが、人材マーケットで奪い合いとなっているのはあくまでもコア人材です。

フロー人材についても確かに人口減少によって労働力の確保が難しいことには変わりありませんが、むしろ最近では作業環境を工夫して外国人や高年齢者へ労働力の代替を進め、またAIやRPAを活用して単純作業自体を無くしてしまうような動きが加速しています。

よって今後の人材リクルートは、コア人材については人材投資の一環としてお金と手間のかかる一本釣り漁方式で、一方のフロー人材は人材コストを抑制するために割安な投網漁方式による採用に二極化してゆくと思われます。

 

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