人事部長のひとりごと・・・

リモハラからみえてくる日本の職場の生産性が低い原因


勤務時間中の私用メールはNGか?

ここだけの話だが、「勤務時間中にもかかわらず、ついつい私用メールをしてしまった・・・」という経験のある人は少なくないだろう。

勤務時間中の私用メールの是非について、ある労務系Webニュースのコラムの中で、社労士の先生が興味深いコメントをしていた。

まず労働者には「職務専念義務」があり、原則として就業時間中は使用者の指揮命令に従って仕事をしなければならず、会社の許可なく私用メールをすることはNGである。

さらに会社のパソコンを私的な目的に使うことは「企業秩序違反」でもあるため、たとえば仕事を放ったらかして、長時間にわたって同僚と私的なメールを続けていた場合には、「懲戒処分」を喰らっても文句は言えない。

ただし「リモートワーク」の場合はちょっと事情が異なる。

そもそも自宅は「プライベートの場」であり、家事や育児、余暇などの拠点でもあることから、在宅勤務中あっても仕事に関係の無い来訪があったり、私的な電話がかかってくることは避けられない。

しかし「リモートワーク」中であることを理由に、これらの応対を拒絶する方が社会常識に反する場合も少なくないため、勤務時間中であっても業務遂行上の支障とならず、また会社に対して過度の経済的負担をかけなければ、私用メールを含めた私的な対応はOKである。

行き過ぎた監視とリモハラ問題

ところで最近は「リモートワーク中の社員がサボっていないかどうか」といった理由で、上司による「行き過ぎた監視」が新たなハラスメント問題となっている。

これを略して「リモハラ」と呼ぶらしいが、例えば部下がきちんとパソコンの前に向かっているかどうか、また仕事中に居眠りしていないかどうか、部下のパソコンカメラを「常時ON」にさせて、上司がずっと監視しているという話をよく耳にするようになった。

さらに個々の社員のパソコンの使用状況を監視するソフトまで開発されて、自分の部下がどんなアプリを使っていたとか、どんなウェブサイトを閲覧していたとか、はたまたキーボードを打った回数などまでモニタリングできるらしい。

このソフトを開発したベンダーによると、「リモートワーク中の部下を監視するため」というよりも、むしろチームの生産性を上げるために部下の「作業分析」をしたり、また勤務時間外や休日の「隠れ残業」を発見することが本来の目的であるとのことだ。

しかしこういったトンチンカンな監視システムが、部下に対する「マイクロ・マネジメント(行き過ぎた部下の管理)」を助長し、結果的に新たなハラスメント問題を引き起こしているということは間違いないだろう。

日本企業の生産性が低いわけ

「マイクロ・マネジメント」が実際にどのようなマイナスの影響を与えているかというと、ある調査では「リモートワーク中の上司とのコミュニケーションにストレスを感じた」と回答したサラリーマンはなんと「8割」に達したそうだ。

これらの上司の多くに見られる傾向は、まず「部下はサボるもの」という強い先入観を持っていて、サボり防止のためにやたらとWeb会議を開いたり、頻繁に部下に電話をかけたりすることが多いことだ。

酷いケースになると、部下がさっきまでどんな仕事をしていたか、部下に対して一時間ごとに作業中のパソコン画面のハードコピーを送らせたりするような上司もいるらしい。

しかし部下が「何時間パソコンの前に座っていたか」とか「1日にどれくらいたくさんキーボードを叩いていたか」などという事と「仕事の成果」とはなんの関係もないことだ。

こういった浅慮な「形式主義」がいまだにはびこっているからこそ、いつまでもたっても日本の職場の生産性は、先進国の中で最下位のままなのではないだろうか?

そもそも「仕事」とは会社に対して利益をもたらすような「成果」をあげることであり、一方の「作業」とは仕事の目的を達成するための「手段」に過ぎない。

つまりいちいち上司から指示されなくても「自立的」に仕事を遂行できて、なおかつ「最小の労力」で「最大の成果」をあげられる人こそ「有能な人材」であるはずだが、リモハラを行っているような管理職は「仕事の本質」を全く理解していないのである。

チームの生産性をあげる3つのポイント

過度に部下を監視したがる上司の中には、「リモートワークの際にどのように部下を管理してよいかわからず、上司としての責任を果たそうとするあまり、ついつい過度に部下に干渉してしまう・・・」という悩める人達も多いらしい。

もっともこれは個人の役割や責任が明確でなく、なんとなくみんなで群れながらガチャガチャやってきた「昭和チック」な体質の会社によくある話だ。

一方で欧米型の合理主義的な経営スタイルの職場では、「権限と責任」そして「職務分掌」が明確化され、個々のメンバーがその道のプロとして自立的に働いているために、こんな悩みは全くもって理解できない話である。

それでも「どうしてよいかわからない・・・」という人のために、まず自分のチームにおいて以下の3点を明確にし、メンバー間でしっかりと共有しながら仕事を進めるようにしてみることを提案したい。

1,ルーチンワークを確立する

例えば人事部であれば、日常的な定形業務を「労務管理」「採用管理」「人材育成」といったように「カテゴリー」ごとに分類する。

さらに各カテゴリーにおいて「年次」「月次」「週次」「日次」のように、実施のタイミングや頻度によって整理し、それぞれの業務を「5W2H」でもって「ワーク・フロー(業務の手順)」に落とし込む。

最後に「出来栄え基準(=どこまでできたら業務完了とするか)」を設定して部のルーチンワークを確立する。

2,アサインとタスクの可視化

ルーチンワークを確立したら、誰にどの業務を行ってもらうか「アサイン(業務の分担)」と「タスク(割り当てられた仕事)」を明確にし、職務分担表などにまとめて、部のメンバー全員で共有する。

私のチームではマイクロソフトのTeamsを使っているが、Teamsにタスク管理ソフトの「Planner」をアドインし、労務課、採用課、教育課ごとにそれぞれの課のルーチンワークとアサイン、さらにタスクを登録してもらって可視化している。

あとは各担当者ごとに「未着手」「作業中」「完了」といった具合にステータスを更新してもらうことで、私はいつでも自部署における各課や各担当者ごとの業務の進捗状況を俯瞰できるという仕組みだ。

3,効率的なコミュニケーション

いまだになんでもかんでも思いつくままに、いちいち電話してくる人がいるが、そういう「相手の都合」に配慮できないような人は、これからのビジネス社会で生き残ってゆくことは難しいだろう。

よって上司たる者は、緊急の用件でない限りは極力メールやチャットを活用して、部下の仕事の邪魔をしないようにしたいものだ。

もし「自分はタイピングが苦手なので直接電話した方が早い・・」などと考えているような人がいたら、そんな人はすでにチームの「お荷物」になっていると自覚した方がよいのではないか・・・。

ハラスメントが横行している組織に欠けていること

実は前述の1~3のポイントは「リモートワーク」だろうが「オフィスワーク」だろうが働く場所に関係なくチームマネジメントに必須の定石である。

すでに半世紀前にドラッカー博士が自身の著書の中で、「経営マネジメントの9割はルーチンワークの管理であり、管理職の仕事とはルーチンを確立し、部下にルーチンを叩き込み、ルーチン外のイレギュラーを自ら拾いにゆくことである」と述べている。

特に「VUCA(変動、不確実、複雑、曖昧)」時代においては、卓越した一人のリーダーが超人的な能力でもって組織を正しくマネジメントしてゆくことなど不可能だ。

ゆえに管理職はチームのルーチンを確立し(=ルールと仕組みづくり)、メンバーにルーチンを教育し(=人材育成)、ルーチンが適正に実行されているかモニタリングし(=コントロール)、もしイレギュラーが生じていれば、すかさずリカバリーのために動くべきである。

こういった管理職本来の役割を理解せずに、ただやみくもに部下に対してプレッシャーをかけるだけの上司こそ、今や組織にとって害悪以外の何物でもなく、リモートワークの生産性向上にともなって、いずれ淘汰されてゆくことは間違いない。

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