就業規則とは?

就業規則の設置は法律で決められている
「就業規則」とは、会社に勤める労働者が、就業にあたって守らねなならないルールを定めたものである。
そして10名以上の労働者を常時使用する会社は「就業規則を定め、労働者の過半数を代表する者の意見書を添えて、所轄の労働基準監督署に届け出しなければならない」と労働基準法に定められている。
もしこれに違反した場合は、会社に対して30万円以下の罰金が科されるので、従業員10名未満の小規模事業者を除く、一般的な会社には必ず就業規則が設けられ、従業員の誰もがいつでも自由に閲覧できるようになっている(はずである)。
就業規則の内容は各社自由に定められるのか?
就業規則は会社内部での就業に関するルールブックとはいえ、会社が好き勝手にルールを作ってよい・・・という訳ではない。
ここでは詳述しないが、就業規則に規定すべき内容は「労働基準法」で明確に定められている。
例えば「勤務時間」や「休日」もしくは「給与の支給方法」など、どのような事情があれ必ず規定しなければならない「絶対的記載事項」、「退職金」など、自社に制度があればその取り扱いについて明記しなければならない「相対的記載事項」、そして自社の任意でもって規定の有無を判断すればよい「任意的記載事項」の3種類である。
社内規程における就業規則の位置付け
なぜ会社には社内規程が存在するのか?
コーポレート・ガバナンス実現のため
ところでなぜ会社には社内規程が必要なのだろうか?それは会社が事業を継続してゆくためには、「ステークホルダー」と信頼関係を構築し、維持する必要があるからだ。
「ステークホルダー」とは自社の事業にかかる利害関係者のことであり、具体的には「株主」「債権者」「取引先」「顧客」「従業員」「監督官庁」「地域社会」などを指す。
いまやこれらのステークホルダーとの共栄共存なくして会社経営は成り立たず、そしてステークホルダーとの信頼関係を構築するために必須なのが「コーポレート・ガバナンス(社内コントロール体制)」の確立であり、その手段が「コンプライアンス」の履行である。
組織運営を円滑に行うため
管理職の仕事とは、経営方針を現場にブレークダウンし、一方で現場の情報を経営層へフィードバックすることで、経営と現場を橋渡し役を担い、会社組織がスムーズに運営されるようにすることである。
そしてそれらは、それぞれの管理職の受け持つ担当部署のマネジメントを通して行われるが、具体的には「労務管理」「資産管理」「予算管理」「情報管理」「顧客管理」の5つのマネジメントである。
社内各部署において、これら5つの要素を適切にマネジメントしてゆくことで、全社的に組織運営を円滑に行ってゆくことが可能になるのだが、例えば「労務管理」であれば「労働関係法令と就業規則」、「情報管理」であれば「個人情報保護法と機密情報守秘にかかる誓約書」など、それぞれの関係法令と社内規程等に関する知識と理解が必須となる。
社内規程における就業規則の位置付け
就業規則は労働法令の分身である
まともな会社であれば、「経営」「組織運営」「コンプライアンス」「業務管理」「経費管理」「労務管理」等に関する社内規程が、一通り整備されているはずである。
これらの社内規程は、自社の商売にかかる業法や、また税法などをもとに設計されるが、原則として概ねその会社の考え方が色濃く反映されるものだ。
しかし就業規則については、前述のとおり設置や内容について労働関係法令で厳格に定められており、また違反行為に対する罰則は、社内での懲戒に留まらず、上位ルールである労働基準法にもとづいて懲役や罰金刑が科されるため、他の社内規程とはその立ち位置において別格であるといっても過言ではない。
労働基準法が制定された背景
そもそも労働基準法は「民法」の特別法である。もともと明治時代に制定された民法にも労働契約に関する条項がいくらか盛り込まれていたが、当時は現代ほどにサラリーマンが多くなかったために、さほど細かく規定する必要がなかったのだ。
一方で時代の移り変わりとともに、日本国内においてもサラリーマン層が増加し、それに伴って様々な労働問題が顕在化したために、昭和22年に、民法の労働契約に関する条項がスピンアウトして、労働基準法が制定された。
ゆえに労働基準法は会社が労働者を自社で就労させようとするときに、守らなければならないルール(=会社に対する禁止事項)を定めたものとなっている。
強行法規って知ってますか?
法律は大きく分けて、「刑法」「民法」「行政法」の3つがある。
「刑法」は殺人や強盗など、個人の人権を侵害するような「絶対的にやってはいけない行為」と、違反に対する刑罰を定めたものである。
よって刑法に規定された行為については、たとえば殺人の請負契約など、仮に当事者間で合意があったとしても、絶対的に禁止されるのだ。
一方の「民法」は、お金の貸し借りや財産の相続など、個人間でトラブルが生じたときの解決ルールを定めたものである。
そして民法には「私的自治の原則」という考え方があって、たとえ民法になんらかのルールが定められていたとしても、当事者同士が合意すれば、あえて民法のルールに従わなくてもよい・・・という決まりになっている(なお「行政法」は、今回の論点とは無関係なので説明を割愛する)。
しかし「労働基準法」については、母体たる民法の「私的自治の原則」の例外として、たとえ労使間で合意があったとしても、労働基準法に反する行為は絶対的に認められず、違反行為に対しては厳格に罰則が適用されるようになっている。
これを「強行法規」というが、労働基準法に従って制定される就業規則もまた、強行法規の性質を帯びているので、社内での運用において留意する必要があるだろう。
管理職は就業規則を徹底的に読み込め
人材マネジメントこそ管理職の最も重要な仕事
最近は「プレイングマネジャー」という言葉がすっかり一般的となったが、管理職の本来の仕事とはチーム・マネジメントであり、すなわち管理職とは部下の仕事を通じてチームの成果をあげることであると言ってもよい。
冒頭で管理職の仕事は、自部署の「労務」「資産」「予算」「情報」「顧客」を適切にマネージしてゆくことだと述べたが、よく考えてみると「資産」「予算」「情報」「顧客」はチームでもって管理してゆくものであるから、やはりとにもかくにも部下のマネジメントこそ、管理職にとって最優先課題となるのだ。
「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」のうち、「ヒト」が最も手間がかかる
部門マネジメントの5つの要素である、「労務」「資産」「予算」「情報」「顧客」のうち、「顧客」を除く4つは、言い換えるならば経営4大リソースの「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」のことである。
そもそも会社経営とは、マーケティングによって狙いを定めた「顧客」に対し、自社の経営リソースである「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を集中的に投入して営業活動を行い、効果的に利益をあげてゆくことである(選択と集中)。
しかし「モノ」「カネ」「情報」は調達さえできれば、すぐに活用することができる一方で、「ヒト」はとにかく手間暇かかるうえに、なかなか思い通りにはゆかない。
また、「ヒト」は時に予期せぬトラブルを生むこともある。
それゆえに管理職たる者は、どの社内規程にも優先して、まず就業規則をしっかりとマスターしておく必要があるのではないだろうか。
雇用流動化の時代こそルールブックを熟知すべし
雇用が多様化する時代の人事マネジメントとは
現在は労働力人口の減少とともに「ジョブ型雇用」「パラレルキャリア」など就労形態が多様化し、なおかつ雇用の流動化と複雑化が進行してゆくので、従来のような「郷に入れば郷に従え」といった過去の概念に縛られた画一的な価値観でもって、人事マネジメントを行ってゆくことは非常に難しくなる。
特に、世間一般的な感覚から見て、「なんだこの会社は?」などと、思わず首をかしげてしまうような独特な「ローカル・ルール」を自社の従業員に強要しているような会社は要注意だ。
昔から「法は道徳の最低限」というが、労務コンプライアンスそっちのけで、オーナーのおかしな価値観を押し付けるような職場には、間違いなく有能な人材は定着しないし、せっかく即戦力人材を獲得しても、早期に離脱してしまうだろう。
経営の質の良し悪しがオープンになる時代
今後は、複数の組織にまたがって就労するスタイルが当たり前になるので、おかしなローカル・ルールに固執している会社には有能な人材が定着しないどころか、会社の悪い評判があちこちで拡散されてしまい、新規の人材獲得にも事欠くようになるだろう。
さらにリモート・ワークの普及に併せて、Teamsなどのビジネスプラットフォームを使いこなすビジネスパースンも増えているが、なかでもSlackは社内外の垣根をこえて、人材単位でもって有機的なネットワークを増殖させてゆくシステムとなっており、これによって社内事情が社外に拡散・共有されやすくなるため、ブラックな就業規則を引きずっているような会社には、そもそも有能な人材が寄り付かなくなる可能性がある。
まとめ
企業が永続的に事業を継続するためにはステークホルダーとの信頼関係が重要であり、そのためにはコーポレート・ガバナンスの構築が必須であるが、その有効な手段こそコンプライアンスの履行である。
そしてそのためには、経営陣はもちろんのこと、管理職全員が社内規程をしっかりと読み込み、理解することが必須である。
特に社内のリソースを適正かつ効果的に運用するためには、人的資源のマネジメントを最優先で行う必要があり、それゆえにまず就業規則は全管理職が熟知しておかねばならない。
今後は雇用の流動化や就労の多様化が加速するため、労働法令に準拠した就業規則を整備することはもちろん、諸々のルールを適正に運用できない会社には、有能な人材が定着しなくなり、また新規の人材獲得も難しくなってゆくだろう。
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