新在留資格「特定技能」について
新在留資格創設の背景
・ただし移民政策と誤解されないように、在留期間の上限を設け、家族の帯同は認めない方向で新たな在留資格を創設する。(H30.6.15 骨太の方針2018)
特定技能資格の根拠法令
今回の新在留資格「特定技能」創設は、正式には「改正出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」の施行といい、法改正の主なポイントは以下の4つです。
1.在留資格の創設 | 特定の業界での専門知識や技能を持つ外国人を対象とした、特定技能1号および2号資格を設ける |
2.受入業種の整理 | 国内人材の確保や生産性改善などの努力をしても、なお人材不足が解消できない業界を明示する |
3.外国人材の支援 | 受け入れた外国人労働者に対する、職業生活や日常生活および社会生活上の支援を行う |
4.在留・雇用管理 | 外国人労働者の受入先が適切な雇用契約を締結し、きちんと履行するようルールを整備する |
特定技能資格の対象業種
特定技能資格1号の対象業種は以下の14業種に限定されます。また2号資格は建設業と造船・舶用工業の2業種のみです。
2.ビルクリーニング業
3.素形材産業
4.産業機械製造業
5.電気・電子情報関連産業
6.建設業
7.造船・舶用工業
8.自動車整備業
9.航空産業
10.宿泊業
11.農業
12.漁業
13.飲食料品製造業
14.外食業
新在留資格について
特定技能1号
・対象業種 全14業種
・在留期間 5年間
・家族帯同 不可
・就労支援 受入機関または登録支援機関による就労上のサポートあり
特定技能2号
・対象業種 建設業、造船・舶用工業の2業種のみ
・在留期間 制限なし
・家族帯同 可
・就労支援 無
外国人労働者の受け入れの流れ
特定技能資格制度における外国人労働者の受け入れの流れです。
「登録支援機関」は民間の人材紹介会社や行政書士事務所、「受入機関」は就業先の企業です。外国人労働者は人材紹介会社等を経由して、就業先の企業に雇用されることになります。
(JITCOホームページより転載)
外国人介護人材の4大在留資格
介護業界における深刻な人材不足解消の救世主として期待されている外国人材ですが、外国人材を受け入れるための在留資格には4つあります。ここではこれらの特徴について簡単に説明しておきます。
特定活動資格
インドネシア、フィリピン、ベトナムとの間のEPA(経済連携協定)にもとづき、介護福祉士候補者として入国し、4年間で介護福祉士の国家資格を取得します。介護福祉士資格の取得後は、特定活動資格を更新しながら、永続的に日本国内で就業することができます。
介護資格
「留学資格」で入国し、介護福祉士養成施設で学んだ後に、介護福祉士の国家資格を取得し、以後は「介護資格」でもって、永続的に日本国内で就業することができます。
技能実習1号~3号資格
技能実習制度に基づき、1~5年間で日本の介護技能をマスターし、期間満了後は帰国して母国において日本で学んだ技能を活用してもらうのが目的です。身分は技能実習生ですが、実習受入先との関係はあくまでも雇用契約となります。
特定技能1号資格
今回新たに設けられた在留資格で、特定技能1号労働者として入国し、介護施設において通算で5年間就労することができます。就労に際して日本人の職員と同等の処遇(給与等)が保証されていますが、期間満了後は帰国しなければなりません。
特定技能1号資格は介護業界を救うか?
悪評高き日本の外国人材受入制度
相次ぐ外国人労働者の失踪
神戸国際大学経済学部の中村教授によると、2017年までの過去5年間で失踪した外国人技能実習生の数はなんと2万6千人にのぼるといいます。
その多くが賃金不払い等の労働基準法違反によるもので、中には日本人社員が、外国人技能実習生に対して暴力をふるうような事例も珍しくないのだそうです。
そしてその根源にあるのが、「日本の技能を海外に移転し、海外人材を育成することで、開発途上国の発展を支援する」という名目の下に行われている、国家ぐるみの外国人労働者の強制徴用です。
特定技能資格は政府の詭弁…
結局、今回の「特定技能」資格の創設は「技能実習生」を「特定労働者」に置き換えたにすぎません。家族の帯同や日本への永住は認めないが、人手不足の業界で5年間だけ働かせてやる、という非常に身勝手な制度です。
介護業界における新たな試み
介護職在留資格の連携構想
「特定活動」と「介護」は介護福祉士資格を取得すれば、日本国内で永続的に就労することができますが、「技能実習」と「特定技能1号」はしょせん5年間の「使い捨て雇用」に過ぎません。
しかし今年の3月6日に行われた社会保障審議会(介護給付分科会)において、「特定技能1号資格」と「技能実習および介護資格」を連携させようという構想が示されました。
この構想では、介護福祉士の国家資格を取得すると、無期限で就労可能(在留資格の更新は必要)となる「介護資格」への移行をゴールに、「特定技能」と「技能実習」が体系化されています。
(審議会の資料をもとにGIGWORKS作成)
「特定技能1号」はすでに技能をもった労働者なので、実習生である「技能実習1~3号」の上位に位置付けられており、どちらの在留資格であっても、日本において介護実務に3年間従事すると、介護福祉士の受験資格が与えられます。
これに首尾よく合格し、晴れて介護福祉士となると、在留資格も「介護」へ移行し、家族を日本へ呼び寄せて、定年リタイアするまで日本で働くことができるようになります。
また「技能実習2号」修了後に、「特定技能1号」の1年目に移行することも可能としています。
介護保険の算定
介護報酬上の人員配置については「介護」と「特定技能1号」は就業時より算定可能となる予定です。「技能実習」は2か月間の訪日後研修と6か月間の実習を終え、なおかつ日本語能力試験のN4レベルに合格してから算定可能となります。
(審議会の資料をもとにGIGWORKS作成)
課題は業界の労務管理の質改善
他の業種においては、特定技能資格も技能実習資格も、完全に外国人労働者の使い捨て制度であるのに対し、介護業界ではこれら2つの在留資格と介護資格を連携させて、外国人労働者に長期就労の道を拓こうとしている点は大いに評価できます。
あとは日本人の介護職も含めた介護業界全体の労務管理の質向上を行い、賃金などの処遇や、腰痛対策およびメンタルヘルスケアなどの労働環境を早急に改善して離職率を減らしてゆく必要があります。
END
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