人事部長が教える就活マル秘テクニック

中高年の転職事情について語る


中高年人材には需要がないのか?

有能でも50歳を過ぎたら転職できない納得事情・・・だって!?

「有能でも50歳を過ぎたら転職できない納得事情」なるWebニュースを読んだ。

かくいう私も50歳を過ぎた初老のオッサンなので、否が応でもこの刺激的なタイトルに目がいってしまい、ついついじっくりと記事を読み込んでしまった。

記事の要旨は、転職市場が活況ではあるが、転職市場で求められているのは実績も伸びしろも判りやすい30~40代であり、一方で伸びしろの残っていない50代以上の中高年人材は需要がほとんどないので、これらの世代の人たちはゆめゆめ勘違いするな・・というもの。

著者いわく、イチロー選手だって45歳で球界から引退したように、人間というものは45歳を過ぎると気力や体力が衰えてくるので、たとえ実績やスキルがあったとしても、仕事の最前線で頑張れるだけの強度がない、のだそうだ。

しかし、人材紹介会社は法律によってどんな求職者でも拒むことができないので、実態としてはほとんど人材需要が無いにも関わらず、仕方なくカウンセリングに応じてやっているのだ・・・という内容。

有能でも「50歳を過ぎたら」転職できない納得事情
https://toyokeizai.net/articles/-/458827

ライター郡山史郎 東洋経済オンライン

中高年には需要が無いっていつの時代の話だ?

70歳定年が現実味を帯びてきた昨今のご時世において「50歳以上は人材需要が無い・・・」などと、我々中高年世代にとっては身も蓋もないしょうもない記事だったが、私自身については、今でも年に数件ほどだが、SNSを通じてオファーを頂くことがある。

それはさておき、前述の記事についてはアスリートの選手寿命とビジネス・キャリアを一緒くたにしたり、人材会社の事情を客観的裏付けを示さないまま人材マーケットの需給トレンドにこじつけたりと、たぶんにライターの偏見に満ちた内容で、とてもではないが「納得」などできない。

現役の人事部長として言わせてもらえば、例えば組織マネジメントや企業ガバナンスの構築などに携わった経験を有するコア人材などは、50代どころか60代でも充分な人材ニーズがあるし、むしろ1千万円案件として高値で取引(?)されている。

35歳転職限界説はどうなった?

35歳転職限界は昔話、進むミドル採用

私が若い頃は、世間では「35歳転職限界説」なるものが、まことしやかに言われていたが、最近では事情が変わってきているようで、たとえばこんな記事もあった。

目下30代後半から50代のミドル世代の転職市場が活気づいており、コロナ禍によって若手人材の求人が半減してしまった一方で、ミドル層の求人はむしろコロナ前より増加している。

なぜミドル人材のニーズが高いのか?というと、現在のミドル世代が新卒だった頃は就職氷河期で、企業が採用を抑制した結果、多くの企業において組織マネジメントの中核をなすミドル人材が欠落しているためだ。

そしてマネジメント人材は育成に時間を要する一方で、昨今の経営環境の変化が激しくなっている情勢においては、自前で育成するよりも、即戦力の中途採用でカバーしたいと考える企業が増えている。

「ミドルの転職」の調査によると、多くの企業において今後もミドル世代の採用意欲は高いようだが、一方でミドル世代であれば誰でも良い、というワケではなく、今はIT分野のエンジニアやスペシャリスト、また人事や経理系の管理職人材、さらに営業マネジャーなどのニーズが高いようだ。

また転職できるミドルとそうではないミドルには明確な違いがあって、前者については高い業務遂行能力に加えて特定分野での高度専門知識を有し、かつ仕事の仕組みづくりにも長けていて、さらにデジタル・リテラシーを兼ね備えた人材、という特徴がある。

「35歳で限界」説は昔話 ミドル転職の採用進む理由 デジタルスキルは必須
https://style.nikkei.com/article/DGXZQOLM131510T10C22A1000000?channel=ASH05021&n_cid=LMNST011

NIKKEI STYLEキャリア あしたのマイキャリア

35歳転職限界説とは一体なんだったのか?

この記事には全く同感で、有効求人倍率が全国的に常時最下位クラスにある北海道に在住する私ですら、35歳を過ぎてから4回も転職しているし、どの転職先でも同世代の平均年収よりはるかに高い給料を貰っている。

一方で転職先ではミドル世代の転職ならではの難しさも痛感した。

少なくとも私のこれまでの転職先については、年々厳しさを増す経営環境を生き残るために、旧来の仕事のやり方を改め、環境の変化に柔軟に対応してゆきたい経営者と、年功という既得権の上にどっかりとあぐらをかいて、一向に変わろうとしない古参社員達との間に大きなマインドのギャップがあった。

よって中途採用者に対して、経営者は社内に新しい風を吹かせ、職場に化学反応(意識改革)起こす触媒となって欲しいと期待しているのに対し、現場では「新参者が俺たちの仕事をほじくり返して職場の調和を見出している・・・」と不快に感じるケースが多い。

つまり「転職35歳限界説」というのは、これまでの「メンバーシップ型雇用」の職場において、「中途採用者が既存社員とうまくやってゆけるか?」ということを考えた時に、「古参社員とインテグレーションできる上限の年齢」という意味だったのではないかと感じる。

人材ニーズと年齢に相関が無くなってきている

DX加速がもたらす人材ニーズの変化

新型コロナによるテレワークをきっかけにして、全国の職場におけるDX推進が叫ばれて久しいが、多くの人はまだまだ「DX=業務のIT化」と勘違いしているようだ。

DXといえばRPAやAIをイメージする人は多いと思われるが、これらITツールはあくまでもDX実現のための手段に過ぎず、むしろDXの本質はこれらITツールを存分に活用するために、生産性を阻害する職場の旧態依然とした仕事のやり方を徹底的に破壊し、排除することである。

たとえば入社年次の序列に基づくインフォーマルな権限、思考停止した事務員によるブルシットジョブの反復、業務が属人化することで構築された古参社員の聖域(ブラックボックス)など、日本特有のメンバーシップ型雇用が生み出した悪しき既得権だ。

しかしDX推進によって、職場の組織が機能的に再編され、業務フローが合理化されると、各セクションにおいてスペシャリスト人材が求められるようになるので、従来の「メンバーシップ型雇用(適材適所人事)」では仕事が回らなくなり、よって必然的に「ジョブ型雇用(適所適材人事)」にシフトしてゆく。

すると中途採用の要件も、既存社員との相性云々よりも、むしろ空きポジションの職務要件定義を満足させられるような実務スキルや経験もしくはライセンスを有しているか?といった視点に変わってゆく。

そんな状況にあって、35歳だの45歳だのといったステレオタイプな線引きに、一体何の意味があるのだろうか?

ニーズのある人材かどうかは本人のアビリティ次第だ

現役の人事部長として、また自身も何度も転職してきた経験から述べさせて頂くと、自分のアビリティに対して社会的なニーズがあれば、当然ながら年齢に関係なく自分の人材ニーズも存在する。

さらに言えば、国際経済における日本の地盤沈下がいよいよ現実味を帯びてきた今の状況において、特にホワイトカラーの生産性改善は喫緊の課題であるが、職場における破壊的イノベーションが必要なフェーズでは、これまで職場で異端児扱いされ、冷や飯を食わされてきた「尖ったミドル」のニーズが増してゆくことは間違いない。

ミドル人材の武器はなんといっても長年蓄積された知識と経験から生み出される「インテリジェンス(知恵)」であり、高性能なタスク管理ツールやBIを手軽に活用できる今の時代においては、気力や体力の衰えなどITを駆使することでいくらでも補うことが可能だ。

よって求人企業の人材ニーズを満たすアビリティさえ培っておけば、いくつになっても自分という人材に対する引き合いが途切れるなどということはないだろう。

引き合いのあるミドル人材になるために

自分は何によって覚えられたいか(ドラッカー)

よく若い人に話すのだけど、会社の発展と従業員のキャリアアップは必ずしも比例しているワケではなく、むしろ会社の看板(肩書)が無くても、自力で食べてゆけるようなスキルを身につけるべきだろう。

よっていったん新卒で就職したら、まずは30歳までがむしゃらに頑張って、現在の仕事において一人前の実務担当者として認められるレベルを目指し、次に40歳までに専門性を深めてその道のプロフェッショナルもしくはスペシャリストと呼ばれるようになることだ。

「プロフェッショナルとかスペシャリストなど恐れ多い・・・」などという人もいるかもしれないが、専門領域の大小は関係ない。まず小輪でもよいので40歳までに「自分の花」をひとつ咲かせるようにしたい。

「自分は何によって覚えられたいのか?」はマネジメントで有名な経営学者であるP.F.ドラッカーの名言だが、キャリア・マネジメントにおいても、会社の便利屋になり下がるのではなく、「すべきこと」「すべきでないこと」を意識して、「選択と集中」でもって自身の看板すなわちキャリアを形成してゆく必要がある。

社内の「なんでも屋」は裏をかえせば「何もできない」のと一緒・・・。より充実した人生を生きたいのであれば、遅くとも40歳までには自分の「看板」を確立する必要がある。自分を自分株式会社の経営者に置き換えるなら、マネジメントはキャリア形成にも大いに活用できる。

嫌われる勇気(アドラー)

しかし残念ながらいまだ多くの日本の職場は閉鎖的で未成熟な空気が蔓延しており、ゆえに我が道をゆこうとすると必ずといってよいほど周囲から「協調性がない」「チームの和を乱すな」などと言われて頭を押さえつけられ、また足を引っ張られてしまう。

極論すれば現在の日本においては「キャリア形成」と「職場の和」というものはトレードオフの関係にあり、人材マーケットで常に引き合いのあるようなミドル人材になるためには、職場の同調圧力を跳ね返し、村八分を恐れずに自己研鑽に邁進してゆく覚悟と気概が必要だ。

まさに心理学者のアドラーのいうところの「嫌われる勇気」こそキャリア形成には不可欠なのだが、当然リスクも伴うため、日頃から自分という商品のマーケティングを行い、商品価値向上のための必要な投資を惜しまないようにしたいものである。

自分らしい人生を生きたいのであれば、他人との軋轢を恐れるな。他人の顔色を伺って生きていると、いつしか他人のための人生を生きるようになってしまう。自立した人は他人から嫌われることを恐れずに、自分の行為から生じる結果について、良いことであれ悪いことであれ、自ら引き受ける覚悟ができているものだ。

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