人事部の視点 労務管理の仕事

過重労働ニッポンで残業が禁止されているという皮肉


過重労働ニッポン

平均労働時間からみた過重労働

ちょっと旧いデータですが、2016年の厚労省統計によると日本のサラリーマン1人あたり年間平均労働時間は1,726時間です。一方で時短先進国のドイツは1,371時間なので、年間でその差はおよそ350時間にもなります。

もし年間休日が120日の会社であれば、年間所定労働日数は245日なので、一日換算では日本人の方がドイツ人より1日あたり1.5時間多く働いている計算になります。

 

過労死は英語になってしまった

日本企業の長時間労働は世界的にもすでに知られており、過重労働に起因する過労死や自殺もすっかり有名になってしまいました。

特に過労死にいたっては「Karoshi」などとすでに英語化されて不名誉なこと甚だしいのですが、最近ではマレーシアやブルネイ、韓国などのアジア先進国の賃金水準が日本に近づいてきたこともあり、日本での就労を敬遠する外国人が増えてきたようです。

おかげで鳴り物入りで登場した特定技能資格もイマイチ盛り上がらない状況です。

 

そもそも労働基準法では残業は認められていない

法定労働時間って知ってますか?

このように長時間労働が一般化している日本の職場ですが、実は労働基準法では原則として残業は禁止されています。

そもそも労働時間は労働基準法によって一日8時間、一週間40時間までと決められており、もし会社がこれを超えて労働者を働かせると違法行為として処罰されるのです。

余談ではありますが、労働基準監督署は警察署や税務署と同様に「署」と書きます。これはこれらの機関が司法警察官であるということを表しており、すなわち逮捕権を有しているのでくれぐれも侮ってはいけません。

 

多くの企業で残業が行われているカラクリ

労働基準法では原則として残業は禁止されているとはいえ、実際には多くの日本の会社において日常的に残業が行われています。

これはどういうことかというと、労働基準法第36条によって「労使間で時間外勤務に合意する協定を締結することで、例外的に労働者に残業させてもよい」というルールになっているのです。

このように労働基準法の中に例外ルールが定められており、その例外を適用することについて、労使間の合意事項を定めたものを「労使協定」といいます。

労使協定には給与控除に関するもの、休憩の取らせ方に関するものなど、いろいろな種類がありますが、この残業に関する労使協定は、残業の例外ルールを定めた労働基準法第36条にちなんで通称「36(サンロク・サブロク)協定」と呼ばれています。

 

36協定さえ結べば無制限に残業させられるのか?

では労使間で36協定を締結さえすれば、無制限に労働者に残業をさせられるのか?と言えばそうではありません。36協定を結んだとしても、残業させることができるのは月間で45時間まで、なおかつ年間で360時間までと上限が設定されているのです。

また残業させた分の賃金については、基礎賃金の25%以上の割増手当を支払わねばならないとも労働基準法に定められています。なお割増手当を設ける趣旨は残業奨励のためのインセンティブではなく、むしろ会社の人件費負担を大きくすることで、残業を抑制することを意図しています。

ところで週休2日制を廃止し、毎週(月)~(土)出勤にして1日8時間労働×6日勤務にしてしまえば、割増手当を支払うことなく目一杯労働者を働かせることができるのではないか?と考える悪い経営者がいた場合はどうなるでしょうか?

これは1日8時間以内に労働時間を抑えても、1週間で40時間を超えて労働者を働かせた場合は、その分についてちゃんと割増手当を支払うことになっています。

 

働き方改革によって残業規制が厳しくなった

労働基準法とはどういう法律か

労働基準法はもともと民法の中の労働契約条項がスピンアウトして独立し、労働基準法という特別法となったものですが、民法が「私的自治の原則」をベースとしているのに対し、労働基準法は「強制規定」という位置づけであることに注意が必要です。

民法の基本原則である私的自治の原則とは、「個人同士のトラブル解決のためのルールを定めておくけど、基本的に司法は民事不介入なので、あくまでも当事者で話し合って決めてね」というものです。

一方の労働基準法の強行規定とは、「たとえ労使間の合意があったとしても、労働基準法でダメと定められているものは絶対に認めません!」という強制力を持っているという意味であり、労働関係法令の中でも別格の位置付けとなっています。

 

残業上限違反には厳しいペナルティ

従来から36協定を締結しないで労働者に残業をさせた場合、その会社の経営者および違法残業を指示した管理職に対し、「6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金」という厳しい刑罰が科されることになっていました。

これが2019年4月施行の改正労働基準法より、もし労使間で36協定を結んでいたとしても、月45時間、年間で360時間を超える残業をさせた経営者および残業を指示した管理職に対し、36協定違反と同じ罰則が適用されることになりました。

ちなみにこの時点ではまだ大企業のみが適用対象でしたが、翌2020年4月からは中小企業にも罰則が適用されることとなりました。

なお大企業については、年間360時間に収まるように期間を限って労働者に集中的に残業させた場合、60時間を超える部分は通常の割増率の2倍である50%以上の割増手当を支払う義務が課されました。いずれこれも中小企業に拡大されてゆくのは時間の問題でしょう。

 

管理職は無制限にコキ使えるのか?

管理職は割増手当の対象外

管理職とは、勤務時間や仕事の内容について裁量権を有する立場の労働者をいい、何時に出勤しようが、その日に何をしようが、成果さえあげていれば自由です。

ゆえに管理職については労働基準法においては「勤務時間管理の対象外」となっており、何時間働いても会社側は割増手当を支払う義務はないとされています。

 

日本の多くの管理職は名ばかり管理職

では自分の会社の労働者を全員管理職にしてしまえば「定額働かせホーダイ」なのか?と言えばそうではなく、管理職かどうかは裁量権の実態を見て労働基準監督所が判断します。

以前、マクドナルドの店長が、店舗運営において大して裁量権が与えられていないにも関わらず、これを管理職とし、残業代を支払わないのは違法であるとして会社を訴えたことがありました。

マックの店長の例に限らず、好きな時間に出勤して、好きな時間に退勤する・・・というような働き方のできる管理職など、ほとんどの日本企業には存在しないのではないでしょうか。

また残業代は支払わないが、遅刻・早退もしくは欠勤についてはその分をキッチリ給与から控除されるといった場合も管理職とはいえません。

 

月間80時間以上の過労死ライン

労働基準法上では管理職の勤務時間管理は不要とされていますが、労働安全衛生法では管理職であっても出退勤時間をきちんと記録し、月間80時間を超える残業をさせた場合は産業医と面談させるように定めています。

月間80時間というのはいわゆる過労死ラインであり、これを超えて働くと脳疾患や心疾患のリスクが高まると言われています。

しかし仮に所定労働日数が月20日であれば、1日4時間の残業ということになります。この程度であれば業種によってはカンタンにオーバーしてしまうのではないでしょうか。

 

名ばかり管理職であっても泣き寝入りしない

日本企業の管理職のほとんどがいわゆる名ばかり管理職なのですが、管理職であるからという理由で日々過重労働を強いられているような人は労働基準監督署へ相談してみるとよいでしょう。

もし名ばかり管理職であると判定されたら、過去に遡って残業代を支払うように会社に請求できる可能性があります。

2020年4月から未払い賃金の請求権が2年から3年に延長されたこと、また自己都合を装った陰湿なリストラで失業したとしても、過重労働の証拠を職業安定所へ提出することで特定求職者として認定され、失業保険を受給する時に3ヶ月の給付制限が免除される可能性があるので、泣き寝入りする前にいろいろ調べてみることをお勧めします。

 

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