
歯科クリニックの収益構造はどうなっているか?
我が国の公的医療保険では医療費=公定価格です。全国どの医療機関を受診しても、診療報酬制度により同一の医療費が適用されます。診療報酬は2年毎に改定され、その基礎資料となるのが中央社会保険医療協議会(中医協)の医療経済実態調査です。
ここでは直近10年間の歯科クリニックの収支をグラフにしてみました。グラフの上段が個人開業、下段が医療法人です。一見すると個人開業の方が利益(収入と費用の差額)が大きいですが、医療法人の医業費用には院長の役員報酬が含まれています。
訪問歯科診療を実施すると医業収益が増えるか?
こちらは訪問歯科を実施している歯科クリニックの収支グラフです。先と同様に上段が個人開業、下段が医療法人です。折れ線グラフを見ると、個人開業も医療法人も、訪問歯科を実施していない場合にくらべて医業収益の伸びが大きいです。
特に個人開業は2020年から医業収益が急上昇しています。2020年といえばCOVID19のパンデミックが猛威をふるい始めた頃です。集団感染を避けるため在宅療養に切り替える人が増え、個人開業の歯科クリニックに対する訪問診療の要請が増えたのかもしれません。
訪問診療実施の有無による収益への影響度合い
先ほどのグラフを、個人開業ごと、医療法人ごとに、訪問歯科アリとナシを横に並べてみました。とりあえず2022年のもので比較すると、個人開業も医療法人も訪問歯科アリの方が医業収入が2千万円ほど高くなっています(右側が低いのは目盛りの違いです)。
訪問歯科実施による医業費用への影響は、医業収益に連動して変動費的に増加するようです。ご参考までに、本グラフの元データによると、調査対象となった歯科クリニックの平均的なユニット数は、個人開業が3台、医療法人が5台とのことです。
歯科クリニックにおける税引前利益の状況
イメージしやすいように税引前利益と表記していますが、厳密には医業収入と医業費用の差額です。税引前利益は法人税が課税される医療法人の話であり、個人開業の場合は確定申告によって所得税を納税したあとの残額が、院長の手取り分となります。
調査年度によって回答数にバラツキがあるため、このグラフだけでは断定できませんが、医療法人は収支トントンの事業者が多いようです。個人開業では残高1千万円以上は珍しくないものの、ここから所得税が控除されるので、手取り年収は高くありません。
歯科クリニックのバランスシート
最後に歯科クリニックのバランスシートです。バランスシートは貸借対照表のことで、資産の期末残高を示す財務諸表です。帳簿の借方に保有資産を、貸方に資産の調達手段(借入金&自己資本)を記載し、借方と貸方の残高は必ず一致します。
本グラフは歯科クリニック全般の資産状況とお考えください。流動資産は現預金、固定資産は設備や備品です。また流動負債は短期借入(運転資金)、固定負債は長期借入(設備資金)です。自己資本比率が高くキャッシュも潤沢な堅実経営ではないでしょうか。
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