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002_労働時間のFAQ

【シフト制】1ヶ月単位の変形労働時間制、週40時間を超える週の設定と休日振替の注意点

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界のシチュエーションに置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

疑問な白衣の女性

当院は院長である私と、歯科衛生士3名、歯科助手・受付3名の計7名が勤務する歯科クリニックです。最近、特定の週(新患の予約が重なる月末や、連休前後の週)に診療時間が延び、スタッフの残業が常態化していることが悩みです。

そこで、「1ヶ月単位の変形労働時間制」を導入し、忙しい週はあらかじめ週45時間程度のシフトを組み、代わりに比較的予約に余裕がある週を週30時間程度に短縮することで、月全体での残業代を抑制したいと考えています。

以下の点について教えてください。

  1. 特定の週に「週40時間」を超えるシフトを組むことは、法的に問題ないのでしょうか?
  2. 急な欠員(スタッフの子供の病気など)で、事前に決めていた休日を振り替えて出勤してもらう場合、どのようなルールに注意すべきでしょうか?
  3. 忙しくてその月に予定していた休日を消化しきれなかった場合、翌月にその休みを繰り越して調整することは可能ですか?

院内では「週40時間を1分でも超えたら残業代が出るはずだ」という声もあり、スタッフに納得感のある説明をしたいと考えています。


ご相談への回答

デキる男性ビジネスマン

歯科クリニックの運営において、予約状況に合わせた柔軟なシフト管理は、経営効率とスタッフのワークライフバランスを両立させるための鍵となります。ご質問の「1ヶ月単位の変形労働時間制」は、まさにそのような現場に適した制度ですが、正しく運用するためには厳格なルールを守る必要があります。

特定の週に週40時間超の設定は可能か

結論から申し上げますと、「1ヶ月単位の変形労働時間制」を適正に導入・運用していれば、特定の週に40時間を超える勤務を設定することは法的に全く問題ありません

この制度は、1ヶ月以内の期間(変形期間)を平均して、1週間あたりの労働時間が法定労働時間(原則週40時間)以内に収まっていれば、特定の日に、あるいは特定の週に法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて労働させることができるというものです。

貴院の場合、スタッフが10人未満の「保健衛生業」に該当するため、特例として週平均44時間まで認められますが、スタッフの健康管理や採用面での優位性を考慮し、週平均40時間以内を目指す設計は非常に望ましいといえます。

ただし、この制度を有効にするための絶対条件は、「変形期間が始まる前に、各日・各週の労働時間をあらかじめ特定しておくこと」です。勤務シフト表などで「この日は10時間、この日は休み」と事前に確定させ、スタッフに周知しておく必要があります。貴院が業務の都合でその都度任意に時間を変更するような運用は、変形労働時間制とは認められませんので注意してください。

休日振替の注意点

スタッフの急な欠員などで、あらかじめ決めていた休日を変更する場合は、「振替休日」と「代休」の違いを明確に区別しなければなりません。

  • 振替休日: 法定休日と定められていた日を「事前に」労働日に入れ替え、代わりに別の労働日を休日にすることです。この場合、もともとの休日に働かせても「休日労働」にはならず、35%の割増賃金は発生しません。ただし、振り替えた結果として、その週の労働時間が週40時間(特例44時間)を超えた場合は、超えた部分に25%の時間外割増賃金が必要となります。
  • 代休: 事前の手続きなく法定休日に労働させた後で、その代わりに事後的に休みを与えることです。この場合、法定休日に働かせたという事実は消えないため、たとえ後で休みを与えても、その日の労働に対して35%の割増賃金を支払う義務が生じます。

コスト面を考えるならば、可能な限り前日までに振替日を特定する「振替休日」の運用を徹底すべきです。

未取得休日の翌月繰越について

残念ながら、変形期間中に取得できなかった休日を翌月に繰り越すことは認められません

1ヶ月単位の変形労働時間制は、その期間(1ヶ月間など)の中で労働時間と休日を完結させ、平均して法定枠内に収める制度だからです。予定していた休日が取れなかった場合、その日は「休日労働」あるいは「時間外労働」として、その月の給与計算において割増賃金を精算して支払わなければなりません。

「今月忙しかったから来月2日分多く休んでいいよ」という口約束での調整は、その月の賃金不払いを招くリスクがあるだけでなく、翌月の変形労働時間制の「事前の特定」というルールも崩してしまうため、厳禁です。


本件のポイント

  • 週平均40時間(特例44時間)の枠内であれば、あらかじめ特定することで特定週の40時間超えは適法である
  • 変形労働時間制が有効に成立するためには、シフト表等で事前に勤務時間を「特定」し、周知することが不可欠である
  • 休日の変更は「事前」に行えば振替休日となり35%割増は不要だが、事後になると「代休」となりコスト増を招く
  • 変形労働時間制における未消化の休日は、その月で賃金清算が必要であり、翌月へ繰り越すことはできない

歯科クリニックでは突発的な状況が起こりやすいものですが、ルールに基づいた「事前の計画」と「厳格な月内清算」を行うことが、未払い残業代トラブルを防ぎ、スタッフとの信頼関係を維持する最善の策となります。

当サイトは院長先生や事務長を対象に、診療所運営に関する法令や理論、実例などを、できるだけ平易な表現で簡潔明瞭に解説することを目的としています。実務に際しては、所轄の官公署にご相談の上、適切に処理されることを推奨します。なお弊社でもオンライン人事相談サービスを提供しております。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療機関の総務課長→医事課長→本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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