当サイトはアドセンス広告およびアフィリエイト広告を利用しています。

003_休日休暇のFAQ

【休職と更新】適応障害で休職中の有期雇用スタッフ。契約満了時の自然退職と再雇用の判断基準

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

疑問な白衣の女性

当院は、歯科医師である私と、歯科衛生士3名、歯科助手3名が勤務する個人経営の歯科クリニックです。スタッフは全員、1年ごとの有期雇用契約を結んでいます。

この度、勤続3年目(更新2回)の歯科衛生士が、仕事上のストレスや人間関係から「適応障害」との診断を受け、2ヶ月前から欠勤しています。当院の就業規則には、育児休業や介護休業の定めはありますが、私傷病による「休職制度」は設けていません。そのため、現在は本人の申し出により、有給休暇の残日数を消化した後は、給与を支払わない「欠勤」として扱っています。

来月末に彼女の契約満了日が近づいていますが、本人からは「まだ体調が安定せず、いつ復帰できるか分からない。でも、仕事は辞めたくないので契約は更新してほしい」と言われています。一方で、現場のスタッフからは、欠員による負担増から早期の欠員補充を求める声が強まっており、院長としては今回の満了をもって契約を終了させたいと考えています。

以下の点について教えてください。

  1. 休職制度がないクリニックにおいて、復職の目処が立たないスタッフの契約を更新しないことは、法的に「不当解雇」や「雇い止め」として問題になるのでしょうか?
  2. 契約更新を行わずに「契約満了による退職」とする場合、どのような手続きや予告が必要ですか?
  3. 退職後、彼女が療養を続ける場合に利用できる公的な保障や、会社側で注意すべき事務処理(社会保険料の清算など)についてもアドバイスをお願いします。

ご相談への回答

できるビジネスパースン

歯科クリニックのような小規模な職場では、大病院のように充実した休職制度を整えることが難しく、スタッフの長期欠勤が経営や現場のオペレーションに直結する深刻な問題となります。結論から申し上げますと、私傷病により労働契約上の義務である「労務の提供」が不可能な状態が続いているのであれば、有期雇用契約の満満了をもって雇用関係を終了させることは法的に可能です。

休職制度がない場合の扱いと「雇い止め」のリスク

まず、就業規則に「休職制度」の定めがない場合、スタッフの病気欠勤は純粋な「私傷病による欠勤」として扱われます。休職制度は法律で義務付けられたものではなく、会社が福利厚生として任意に定めるものだからです。

有期雇用スタッフについて、今回の満了をもって契約を終了させる(雇い止めする)ことの妥当性については、「労働契約法第19条(雇止め法理)」が基準となります。貴院のケースでは、すでに2回更新しており、実態として「更新されるものと期待することに合理的な理由がある」状態と考えられます。

しかし、「適応障害により復職の見込みが立たず、労働契約の本旨に従った就労ができない」という事実は、更新を拒否するための「客観的に合理的な理由」に該当する可能性が高いです。病気で働けない状態のまま、会社に無期限の雇用継続を強いることは、労働契約の根幹(労務と賃金の交換)を揺るがすためです。

「契約満了による退職」の手続きと予告義務

復職の目処が立たないことを理由に更新しないと判断した場合、以下の手続きを確実に行ってください。

  • 雇い止めの予告(30日前): 3回以上更新している、または雇入れから1年を超えて継続勤務しているスタッフの場合、契約を満了させるには、少なくとも契約期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません。
  • 理由の明示: 本人が請求した場合には、更新しない理由を証明書として交付する義務があります。この際、理由は単なる「期間満了」ではなく、「健康状態が悪化し、復職の見込みが立たず、業務遂行が困難なため」といった具体的な事実を記載する必要があります。

なお、これらは「解雇」ではなく「契約期間満了による自然退職」の扱いとなります。

退職後の保障と社会保険実務のアドバイス

円満に雇用関係を終了させるためには、スタッフの退職後の生活不安を和らげるアドバイスも重要です。

  • 傷病手当金の継続給付: 当該スタッフが健康保険の被保険者として継続して1年以上加入していれば、退職時に傷病手当金を受けている、または受ける条件を満たしている場合に限り、退職後も最大1年6ヵ月の範囲で継続して受給することが可能です。これにより、退職後も療養に専念できる環境が整います。
  • 社会保険料の清算: 欠勤期間中も社会保険料(本人負担分)は発生します。貴院がこれを立て替えている場合、退職時の給与や、別途本人に請求して清算する必要があります。生活が困窮している場合は、分割での返済を認めるなどの配慮も検討してください。
  • 再雇用の検討: 本人の意欲がある場合は、「体調が完治し、歯科衛生士としての就労が可能であると医師が認めた場合には、改めて選考の上、優先的に再雇用を検討する」といった意向を伝えておくことも、納得感のある解決に繋がります。

本件のポイント

気づきを得た白衣の女性
  • 私傷病による「休職制度」がない場合、病気欠勤は労働契約上の債務不履行の状態であり、これを理由とした雇い止めには合理性が認められやすい。
  • 3回以上の更新や1年超の継続勤務がある場合、契約満了の30日前までに「雇い止め予告」を行うことが不可欠である。
  • スタッフに「不当に切り捨てられた」と感じさせないよう、傷病手当金の継続給付制度(健康保険)などの公的サポートを丁寧に説明し、誠実に協議を行うべきである。
  • 社会保険料の立替金が発生している場合は、退職時に本人と清算方法を明確に合意し、エビデンスを残しておくことが重要である。

歯科クリニック経営において、スタッフの健康問題は「安全配慮義務」と「診療体制の維持」のバランスが問われる場面です。法的なリスクを最小化しつつ、スタッフの早期回復を願う姿勢を示すことが、院内全体の安心感にも繋がります。

当サイトは診療所運営に関する法令や制度などを、できるだけ平易な表現で簡潔に解説することを目的としています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ処理願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


お問い合わせはこちらから

リモートワークスコンサルティング社労士事務所ロゴ
社労士バッジ

  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

-003_休日休暇のFAQ