人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界のシチュエーションに置き換えてご紹介しています。
依頼者からのご相談
当院はスタッフ数8名の歯科クリニックです。平日の所定労働時間を「9:00〜17:30(休憩60分)」の1日7.5時間と定めています。休診日は木曜日と日曜日で、週休2日制をとっています。
最近、診療の延長や急患対応により、スタッフが17:30の終業時刻を過ぎて18:00まで残業するケース(1日30分程度)が増えています。また、日曜日の休診日に、地域の休日当番医として診療を行ったり、訪問歯科診療の対応をしたりすることもあります。
所轄の労働基準監督署へ提出する36協定(時間外・休日労働に関する協定)を作成するにあたり、以下の2点について教えてください。
- 終業後の17:30〜18:00までの30分間の残業は、36協定で届け出た「延長することができる時間数」にカウントしなければならないのでしょうか?
- 日曜日の休日労働は、36協定上の「時間外労働」の時間数に合算して管理すべきなのでしょうか?
院内では「所定労働時間を1分でも過ぎたら36協定の上限時間に影響する」という意見もあり、正確なカウント方法を整理したいと考えています。
ご相談への回答
歯科クリニックの経営において、労働時間のカウントを正しく理解することは、法令遵守(コンプライアンス)と適切なコスト管理の両面で非常に重要です。結論から申し上げますと、「法定内残業」は36協定の延長時間には含まれず、また「法定休日労働」も原則として時間外労働とは別枠で管理します。
「法定内残業」と36協定の関係
貴院のように1日の所定労働時間が7.5時間の場合、終業後の17:30から18:00までの30分間は、クリニックが定めた時間を超える「残業」ですが、労働基準法の法定労働時間(労働時間の上限)である「1日8時間」には達していません。これを「法定内残業」と呼びます。
36協定は、法律で定められた「1日8時間・週40時間」という法定労働時間を超えて労働させる場合に必要となる協定です。したがって、17:30〜18:00の30分間については、法定労働時間の範囲内であるため、36協定上の延長時間としてカウントする必要はありません。36協定の届出時間を圧迫するのは、あくまで1日8時間を超えた部分からとなります。
ただし、給与の支払いについては注意が必要です。法定内であっても労働した時間に対しては賃金を支払う義務がありますし、就業規則等で「所定を超えたら1.25倍の割増賃金を支払う」と定めている場合は、その契約に従う必要があります。
休日労働のカウント方法
日曜日の出勤についても、「法定休日」か「所定休日」かによって扱いが異なります。
- 法定休日労働: 法律で義務付けられた「毎週少なくとも1回」の休日に働かせること。
- 所定(法定外)休日労働: 貴院が独自に定めた週休2日のうち、もう一方の休日(例:木曜日)に働かせること。
原則として、36協定における「時間外労働」のカウントには、日曜日の「法定休日労働」の時間は含まれません。36協定の届出様式を見ても、「時間外労働」と「休日労働」は別々の欄に記載することになっています。
しかし、注意が必要なのが「36協定の上限規制」です。働き方改革関連法の施行により、以下のルールが適用されています。
- 時間外労働と法定休日労働の合計が、単月で「100時間未満」でなければならない。
- 時間外労働と法定休日労働の合計が、2〜6ヶ月を平均して「80時間以内」でなければならない。
つまり、36協定の「時間外労働の枠(例:月45時間)」そのものには法定休日労働を含めませんが、法違反かどうかの「上限チェック(100時間・80時間)」を行う際には、合算して管理しなければならないという二段構えの構造になっています。
歯科クリニックにおける「週44時間」の特例
貴院はスタッフ8名とのことですので、労働基準法上の「常時10人未満の労働者を使用する保健衛生業」に該当します。この場合、週の法定労働時間が40時間ではなく「44時間」まで認められる特例の対象となります。
この特例対象のクリニックであれば、1日8時間・週44時間までの労働は「法定内」となり、これを超えない限り36協定の時間外労働としてのカウントは発生しません。小規模な診療所ならではの有利な基準ですので、自院の適用状況を必ず確認してください。
本件のポイント
- 36協定の延長時間に含むのは「1日8時間(特例対象は週44時間)」を超えた「法定外残業」のみである。
- 所定労働時間が8時間未満(例:7.5時間)の場合、8時間に達するまでの残業は36協定の枠を消費しない。
- 法定休日(週1回)の労働時間は、時間外労働の枠とは別で管理するが、過労死防止のための「月100時間・平均80時間」の上限規制には合算してカウントされる。
- スタッフ10人未満の歯科クリニックは、週44時間まで法定労働時間内として扱える特例を活用し、正確な勤怠管理を行うべきである。
適切な労働時間の把握は、スタッフの健康を守るだけでなく、不必要な未払い残業代リスクを回避し、歯科医師の働き方改革への対応を確実にするための第一歩です。
当サイトは院長先生や事務長を対象に、診療所運営に関する法令や理論、実例などを、できるだけ平易な表現で簡潔明瞭に解説することを目的としています。実務に際しては、所轄の官公署にご相談の上、適切に処理されることを推奨します。なお弊社でもオンライン人事相談サービスを提供しております。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。
お問い合わせはこちらから

RWC合同会社&RWC社労士事務所


RWC合同会社は人事を中心とした歯科経営コンサルティング全般を、またRWC社労士事務所は労働法令や社会保険の事務代理を承ります。初回カウンセリングは無料(90分迄)ですので、下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。


