社会保険適用後も国保組合への加入を継続できる「健康保険の適用除外申請」とは

歯科クリニックの運営において、法人化や従業員の増加は経営の大きな節目となります。
しかし、これに伴い社会保険(健康保険・厚生年金保険)の強制適用事業所となることで、「歯科医師国民健康保険組合(以下、国保組合)への加入を続けられるのか?」と不安を感じる院長先生も少なくありません。
実は、強制適用事業所となった後も、所定の手続きを経ることで国保組合への加入を継続できます。
本記事では「健康保険被保険者適用除外承認申請」の制度概要と手続きの流れを解説します。
健康保険被保険者適用除外承認申請の基本を押さえる
法人化やスタッフの増員で生じる社会保険の加入義務
社会保険の「強制適用事業所」とは、法律に基づき健康保険および厚生年金保険への加入が義務付けられた事業所を指します。
歯科クリニックにおいては、以下のいずれかの条件を満たした際、被保険者要件を満たす全スタッフが被保険者となります。
- 法人組織(医療法人等)のクリニック
- 従業員数に関わらず、すべて強制適用事業所となります
- 院長(法人代表者)も被保険者に含まれます
- 常時5名以上のスタッフを雇用する個人クリニック
- 常時雇用するスタッフが5名に達した時点で、強制適用事業所となります
- ただし、個人事業主(院長)は被保険者にはなれません
適用除外承認申請で国保組合への加入を継続できる
社会保険の強制適用事業所となった場合でも、「健康保険被保険者適用除外」の承認を受けることにより、健康保険については引き続き国保組合への加入を継続することが可能です。
ただし、この特例はあくまで健康保険を対象としたものであり、厚生年金保険には同様の適用除外制度が存在しません。
したがって、強制適用事業所に該当した時点から、厚生年金保険への加入は一律で義務付けられます。
健康保険被保険者の適用除外承認を受ける要件
健康保険被保険者適用除外の承認を受けるには、対象者が国保組合の被保険者であることが前提となります。
具体的には、以下のいずれかに該当する場合、申請手続きができます。
- 法人化・規模拡大
- 国保組合に加入している個人クリニックが、医療法人化やスタッフ数の増加に伴い社会保険の強制適用事業所となった場合
- 新規開設
- 国保組合の被保険者である歯科医師が、社会保険の強制適用事業所に該当するクリニックを新たに開設した場合
- 新規雇用
- 上記1または2により適用除外承認を受けたクリニックが、新たにスタッフを雇用した場合
健康保険被保険者適用除外承認申請書の手続き
手続きの流れ
健康保険の被保険者適用除外申請は、クリニック(事業主)・国保組合・年金事務所の三者間で行なわれます。
標準的な手続きの流れは以下の通りです。
- 申請書の作成と国保組合への提出
- クリニックが「健康保険被保険者適用除外承認申請書」を作成し、加入先の国保組合に提出します。
- 国保組合によっては事前の相談や連絡を必須としている場合があるため、まずは窓口へ確認しておくとスムーズです。
- 国保組合による加入証明
- 国保組合が申請内容を確認し、対象者が組合員(被保険者)であることを証明した上で、申請書をクリニックへ返送します。
- 年金事務所等への提出
- 国保組合の証明が済んだ申請書を、管轄の年金事務所または事務センターへ提出します。
- 承認証の交付
- 申請が認められると、年金事務所から「健康保険被保険者適用除外承認証」が交付されます。
- 国保組合へ承認証を提出
- 交付された承認証の写し(コピー)を、速やかに国保組合へ提出します。
- 国保組合の資格取得手続きの完了
- 国保組合から資格確認書や資格情報のお知らせが交付されます(国保組合の被保険者資格取得手続きと並行して行う場合)。
手続きの詳細は、各国保組合によって運用が異なる場合があります。初めて申請を行う際は、あらかじめ加入先の国保組合に手順を確認することをお勧めします。
提出期限
事実発生日(厚生年金保険の被保険者資格取得日など)から14日以内に届け出る必要があります。
この期限を過ぎると、原則として遡及適用は認められません。
ただし、天災や事業主の入院、法人登記の遅延など、やむを得ない事情がある場合に限り、遅延が認められることがあります。
提出が遅れることが予想される場合は、あらかじめ年金事務所へ相談しておきましょう。
提出先
クリニックの所在地を管轄する日本年金機構の事務センターもしくは年金事務所へ、郵送や窓口持参で提出します。
なお、前述の「手続きの流れ」の通り、年金事務所への提出に先立ち、加入している国保組合の証明を受ける必要があります。
厚生年金保険の被保険者資格取得届を電子申請で行う場合でも、「健康保険適用除外承認申請書」については原本の提出が必須となります。
届出様式
所定の「健康保険被保険者適用除外承認申請書」を使用します。
申請書は日本年金機構のホームページからダウンロード可能です。
添付書類
基本的には「健康保険被保険者適用除外承認申請書」のみで手続きが可能です。
ただし、事実発生日から14日以内の提出期限を超過して提出する場合は、遅延理由書の添付が求められることがあります。
承認後の流れと資格確認書の交付
適用除外申請が承認されると、年金事務所から「健康保険被保険者適用除外承認証」が交付されます。
受け取り次第、写しを国保組合へ提出しましょう。
なお、国保組合の資格取得手続きをあわせて進めている場合は、「資格情報のお知らせ」や「資格確認書」が交付されますので、スタッフへ配付しましょう。
よくある質問
新たに採用したスタッフについても、その都度この手続きが必要ですか?
はい、入職のたびに申請が必要です。
健康保険の適用除外承認申請手続きを行うのは、クリニックが初めて社会保険の強制適用事業所となった時だけではありません。
その後も新たに社会保険の被保険者となるスタッフが増えるたびに、一人ひとりについて手続きを行う必要があります。短時間勤務のパートスタッフについても、適用除外の手続きは必要ですか?
パート・アルバイトスタッフのうち、1週の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が正職員の4分の3未満である場合は、そもそも社会保険の被保険者となりません。
そのため、原則として適用除外の手続きも必要ありません。医療法人化のタイミングで適用除外を申請し忘れた場合はどうなりますか?
原則として、14日の期限を過ぎると遡及適用は認められません。ただし、天災地変や法人登記手続きに日数を要した場合など、やむを得ない事情があれば遅延が認められることがあります。まずは速やかに、年金事務所と加入する国保組合の両方へ相談されることをおすすめします。
事務作業から解放され、治療と経営に専念できる環境へ
健康保険の適用除外承認手続きは、わずか14日という短い期限の中で、国保組合と年金事務所の2箇所を回らなければならない、非常に手間の掛かる業務です。
医療法人化や採用が重なる時期は、日々の診療だけで手一杯になり、正確な手続きを維持するのは想像以上に大きな負担となります。
スタッフを雇い入れるたびに発生するこのルーチン業務に、「毎回調べ直している」「手続きが間に合うか心配」と感じてはいませんか?
運用の仕組み化や外部への委託を検討し、先生が治療に集中できる時間を確保しましょう。
そのゆとりこそが、クリニックの円滑な運営を支える鍵となります。
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