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002_労働時間のFAQ

【兼業・副業】他院での外勤(アルバイト)。歯科医師の労働時間通算と割増賃金支払いの責任は?

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

首をかしげる医師

当院は、自費診療を中心とした歯科クリニックです。この度、大学病院の医局に所属する若手歯科医師を、週に1回(土曜日・8時間)の非常勤歯科医師(アルバイト)として採用することになりました。

この歯科医師は、平日は別の歯科クリニック(本務先)で週40時間勤務しています。当院での勤務を含めると、週の合計労働時間は48時間になります。採用にあたって、以下の3点について教えてください。

  1. 本務先と当院の労働時間は合算されるのでしょうか? その場合、週40時間を超える8時間分の割増賃金(残業代)は、どちらのクリニックが支払う責任を負うのですか?
  2. この歯科医師が日曜日に別のクリニックでも勤務し、結果として「週1日の休日」が確保できなくなった場合、当院に法的なリスクはありますか?
  3. 36協定の上限時間を管理する際、他院での労働時間もカウントしなければならないのでしょうか?

若手歯科医師が複数のクリニックを掛け持ちするのは業界の慣習ですが、最近は「医師の働き方改革」もあり、適切な管理方法を整理したいと考えています。


ご相談への回答

デキる男性ビジネスマン

歯科医師が複数の医療機関で勤務する「副業・兼業」は一般的ですが、労務管理上は「労働時間の通算」という非常に重要なルールが適用されます。これを誤ると、後から契約したクリニックが予期せぬ未払い残業代の支払いを命じられたり、労働基準法違反に問われたりするリスクがあります。

労働時間の通算と割増賃金支払いの責任

労働基準法第38条第1項では、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定められています。これは事業主が異なる場合も含まれます。

貴院のケースでは、本務先(40時間)+貴院(8時間)=週48時間となり、法定労働時間の週40時間を8時間超過しています。この8時間分の割増賃金(25%以上)を支払う責任は、原則として「後から労働契約を締結した事業主」にあります。

もしこの歯科医師が先に本務先と契約し、その後で貴院と契約したのであれば、貴院での8時間勤務は「当初から週40時間を超えることが確定している労働」となります。そのため、貴院はたとえ自院での勤務が所定内であっても、通算して40時間を超える部分については割増賃金を支払わなければなりません

法定休日の確保と安全配慮義務

労働基準法は、原則として毎週少なくとも1回の休日(法定休日)を与えることを義務付けています。労働時間が通算されるのと同様に、休日確保の義務についても、複数のクリニックでの勤務実態を考慮する必要があります。

もし当該歯科医師が他院も含めて連日勤務し、週に1日も休みがない状態が続いた場合、最後に契約したクリニックが法定休日を与えられなかったとして、法違反を問われる恐れがあります。

さらに重要なのが、労働契約法上の「安全配慮義務」です。複数のクリニックで過重労働となり、万が一その歯科医師が健康を損なったり、診療ミスによる医療事故を起こしたりした場合、各クリニックの管理者は「他院での勤務状況を把握し、健康を守るための措置を怠った」として、損害賠償責任を負うリスクがあります。

36協定と「医師の働き方改革」への対応

2024年4月から歯科医師にも適用されている時間外労働の上限規制(原則として年960時間・月100時間未満)においても、複数の医療機関での労働時間は合算して管理するのがルールです。

36協定の届出時間を超えないようにすることはもちろん、月100時間以上の時間外・休日労働(合算)が見込まれる場合には、面接指導の実施義務も生じます。外勤歯科医師を採用する際は、「他院で週に何時間働いているか」「当院での勤務が上限規制や健康管理にどう影響するか」を確認するための「兼業・副業申告書」などの提出を求めることが実務上不可欠です。


本件のポイント

気づきを得た白衣の男性
  • 労働時間は、事業主が異なる複数の歯科クリニックでの勤務であっても、法律上当然に合算(通算)される。
  • 週40時間(特例対象は44時間)を超えた労働に対する割増賃金の支払い義務は、原則として「後から契約したクリニック」が負う。
  • 法定休日(週1回)が確保できているかを確認し、過重労働による医療事故や健康被害を防ぐ「安全配慮義務」を尽くさなければならない。
  • 「医師の働き方改革」に伴う時間外労働の上限規制においても、他院での勤務時間を合算して管理・把握する義務がある。
  • 採用時には、本務先や他院での勤務曜日・時間を正確に申告させ、自院での割増賃金発生の有無や健康管理リスクを事前に判定すべきである。

若手歯科医師のキャリア形成において外勤は欠かせませんが、経営側は「他院での労働時間」を自院のリスクとして捉え、契約時に明確なルールを設けることが、健全なクリニック運営を守ることに繋がります。

当サイトは院長先生や事務長を対象に、診療所運営に関する法令や理論、実例などを、できるだけ平易な表現で簡潔明瞭に解説することを目的としています。実務に際しては、所轄の官公署にご相談の上、適切に処理されることを推奨します。なお弊社でもオンライン人事相談サービスを提供しております。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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