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001_労働契約のFAQ

【新規開設】開院前の「研修期間」は時給、開院後は月給。1通の労働条件通知書にまとめる方法

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

首をかしげる医師

来年4月1日の新規開院に向けて、歯科衛生士3名と歯科助手・受付3名の計6名を、3月1日付けで採用することになりました。

開院前の3月1日から3月31日までの1ヶ月間は、接遇研修や歯科用電子カルテの操作トレーニング、診療準備のための「研修期間」とし、この期間はフルタイム出勤ではないため「時給制」で賃金を支払う予定です。そして開院後の4月1日からは、通常の診療業務に移行し、本来の労働条件である「月給制」に切り替えたいと考えています。

労働条件通知書を作成するにあたり、以下の点について実務上のアドバイスをお願いします。

  1. 3月の研修期間(時給)と4月以降の正規採用(月給)で、労働条件通知書は2通に分けて出すべきでしょうか? それとも1通にまとめる方法がありますか?
  2. 雇用保険や社会保険の資格取得日は、研修開始の3月1日と、開院日の4月1日のどちらにすべきでしょうか? 研修期間中の賃金設定が保険料にどう影響するかも気になります。
  3. 給与体系が時給から月給へ変わることで、社会保険の「随時改定(月変)」の手続きが必要になると聞きましたが、具体的にどのような注意点がありますか?

新規開設で事務作業が山積しているため、できるだけシンプルかつ法的に確実な方法を知りたいと考えています。


ご相談への回答

できるビジネスパースン

歯科クリニックの新規開設に際して、研修期間を経て本採用へ移行するスキームは一般的ですが、労働条件の明示と社会保険事務が複雑になりやすいため注意が必要です。

労働条件通知書を1通にまとめる合理的な方法

結論から申し上げますと、労働条件通知書は研修期間分と本採用分を1通にまとめて交付するのが実務上最も効率的であり、かつ法的なトラブルも防げます。

2024年4月から施行された改正労働基準法により、契約期間中に予定されている「就業場所や業務内容の変更の範囲」を明示することが義務付けられました。研修から本診療への移行は、採用の時点ですでに確定している一連の労働契約であるため、1通の書面でそれぞれの期間の条件を並記して明示するのが適切です。

  • 研修期間(令和〇年3月1日~3月31日): 時給〇〇円
  • 本採用(令和〇年4月1日~): 基本給〇〇円、役職手当〇〇円
  • 諸手当の構成、賃金締切日、支払日などもそれぞれの期間について具体的に明記します。

このように明記することで、スタッフも「3月は研修だから時給、4月から月給」という見通しを立てやすくなり、採用時のミスマッチを防ぐことができます。

保険関係の資格取得日と研修期間中の扱い

雇用保険および社会保険の資格取得日は、原則として研修を開始した初日の「3月1日」となります。

  • 雇用保険: 31日以上の雇用見込みがあり、週の所定労働時間が20時間以上であれば、研修期間中であっても被保険者となります。
  • 社会保険(健康保険・厚生年金): クリニックが法人である場合、あるいは5人以上の従業員を雇用する個人事業所(適用業種)であれば強制適用となり、使用関係が発生した3月1日から資格取得手続きが必要です。

3月1日時点での「標準報酬月額」は、研修期間中の時給単価をもとに、1ヶ月の平均的な労働時間を見積もって算定します。開院後の月給に比べて3月の時給ベースの報酬が著しく低い場合でも、まずは実態に即して届け出る必要があります。

「随時改定(月変)」の注意点とスケジュール

4月1日から時給制から月給制へ切り替わると、これは社会保険実務上の「固定的賃金の変動」に該当します。

4月の給与(月給ベース)が3月の報酬に比べて著しく上昇し、等級が2等級以上アップした場合は、4月・5月・6月の3ヶ月間の報酬支払基礎日数がすべて17日以上(短時間労働者は11日以上)であれば、7月から「随時改定(月変)」が行われます。

この場合、通常の「定時決定(算定基礎届)」の対象外となる点に留意してください。また、クリニック側で3月分の社会保険料を4月の給与から控除(翌月徴収)する場合、3月は時給で手取りが少ないにもかかわらず、4月から本格的な社会保険料の負担が始まるため、あらかじめ控除のタイミングをスタッフへ説明しておくと親切です。


本件のポイント

気づきを得た白衣の男性
  • あらかじめ確定している条件変更(時給→月給)は、1通の労働条件通知書に期間を分けて併記することで明示義務を果たせる。
  • 雇用保険・社会保険の資格取得日は、開院日ではなく「研修開始日(入社日)」である。
  • 研修期間と本採用後の賃金差が大きい場合、社会保険の「随時改定」が発生し、7月から標準報酬月額が改定される可能性が高い。
  • 時給から月給への切り替えは「固定的賃金の変動」にあたるため、4月以降の3ヶ月間の支払基礎日数を正確に管理する必要がある。

新規開設時の多忙な時期こそ、労働条件の明示と社会保険のスケジュールを正確に整理しておくことが、スタッフとの信頼関係を築き、健全なクリニック運営の土台となります。

当サイトは診療所運営に関する法令や制度などを、できるだけ平易な表現で簡潔に解説することを目的としています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ処理願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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