人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。
依頼者からのご相談

当院に長年勤務している歯科衛生士(60歳)が、定年後も「再雇用」として継続して勤務することになりました。再雇用にあたり、勤務時間を短縮したため、月々の給与は60歳時点と比較して大きく低下します。
そこで雇用保険の「高年齢雇用継続給付」の手続きを進める予定ですが、事務スタッフより以下の点について質問を受けました。
- 賃金低下率を判定する際の「賃金」には、基本給以外に残業代や通勤手当も含まれるのでしょうか? 判定の基準となる「60歳時点の賃金」がどのように決まるのかも教えてください。
- ハローワークへの申請は、毎月行う必要があるのでしょうか? また、支給が決まった際、国から届く通知書は本人に渡さなければならないのでしょうか。
- 2025年(令和7年)4月から支給率が引き下げられると聞きました。 具体的にどのように変わるのか、実務上の注意点を教えてください。
ベテランスタッフに安心して働き続けてもらうために、正確な制度運用を理解しておきたいと考えています。
ご相談への回答

歯科クリニックにおいて、経験豊富なベテランスタッフの継続雇用は、診療の質を維持する上で非常に重要です。高年齢雇用継続給付は、60歳以降の賃金低下を補い、働く意欲を支えるための重要な制度ですが、算定基礎の範囲や法改正の内容には注意が必要です。
判定賃金の算定基礎:残業代や交通費も含まれる
高年齢雇用継続給付の支給対象となるかどうかの判定、および支給額の計算に用いられる「賃金」には、基本給だけでなく、時間外手当(残業代)や通勤手当(交通費)などの諸手当もすべて含まれます。
- 算定基礎に含まれるもの: 基本給、役職手当、残業代、通勤手当、住宅手当など、労働の対償として支払われるもの。
- 算定基礎から除外されるもの: 3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(年3回以下の賞与など)や、臨時に支払われる賃金(慶弔見舞金など)。
比較の基準となる「60歳到達時等の賃金」は、誕生日の前日の直近6ヶ月間に支払われた賃金の総額を180で除した「賃金日額」の30日分として算出されます。
申請フローと事業主の通知義務
支給申請は、毎月ではなく「原則として2ヶ月に1回」、ハローワークが指定した申請月にまとめて行います。
また、申請後にハローワークから交付される「支給決定通知書」などは、事業主が確実に本人へ手交(通知)しなければならない義務があります。これは、本人が自身の受給状況を正確に把握できるようにするための配慮であり、事業主は手続きを円滑に行えるよう助力する義務を負っています。
2025年(令和7年)4月からの支給率引き下げ
法改正により、2025年(令和7年)4月1日以降に新たに60歳に到達する被保険者から、支給率が段階的に引き下げられます。
- 改正前: 賃金低下率が61%以下の場合、支給対象月の賃金の最大15%を支給。
- 改正後(令和7年4月〜): 支給率の最大が10%に引き下げられます。
なお、改正前にすでに受給権を取得しているスタッフについては、引き続き旧来の支給率が適用される経過措置があります。再雇用のタイミングや生年月日に応じて、新旧どちらのルールが適用されるかを個別に確認することが重要です。
本件のポイント

- 支給判定の基準となる「賃金」には、基本給のほか、残業代や通勤手当も合算される。
- 「60歳到達時の賃金」は、誕生日前6ヶ月間の賃金実績(賃金日額×30)で決定される。
- ハローワークへの支給申請は2ヶ月に1回のサイクルで行うのが実務上のフローである。
- ハローワークから届く「支給決定通知書」は、本人へ確実に渡すことが事業主の義務である。
- 令和7年4月1日以降の新規受給者から、最大支給率は15%から10%に引き下げられる。
高年齢雇用継続給付は所得税が非課税となるメリットもあります。スタッフのライフプランに関わる制度ですので、丁寧な説明と正確な事務処理を心がけましょう。
本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。
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