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008_そのほかのFAQ

歯科医師(院長)とスタッフの「職場不倫」。公私の区別と適正な懲戒処分の進め方

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

疑問な白衣の女性

当院は、複数の分院を展開する歯科医療法人です。先日、元職員の配偶者から「当院の男性歯科医師(役職者)と、女性事務員が不倫している」という衝撃的な告発がありました。本人たちに聞き取りを行ったところ事実と判明したため、まずは女性事務員を別部署へ異動させ、物理的に距離を置かせました。

しかし、この対応を巡って泥沼の状態に陥っています。

  1. 不公平感への抗議: 女性事務員の配偶者から、「妻は異動で給料が下がったのに、相手の歯科医師は役職も場所も変わっていないのは差別だ。相手にも同等の処分(解雇など)を下せ」と強く要求されています。
  2. 不倫の継続: 当初は反省していた歯科医師も、時間が経つにつれ「業務上の連絡」を口実に女性事務員と接触を再開しており、再度その配偶者からクレームが入りました。他のスタッフも気づき始めており、職場のモラルが著しく低下しています。
  3. 業績か人格か: 正直なところ、女性事務員はミスが多く生産性も低いため、この機会に穏便に退職(解雇)させたいと考えています。一方で、男性歯科医師は非常に腕が良く、自費診療の売上貢献度が極めて高いため、解雇などの重い処分は避けたいのが経営者としての本音です。

配偶者が納得し、かつ法的に問題のない解決策はありますか? また、貢献度の高い歯科医師をどのように律すべきでしょうか。


ご相談への回答

できるビジネスパースン

歯科クリニックのような小規模で密接な組織において、職場不倫は単なる「個人の自由」では済まされません。放置すれば他のスタッフの離職を招き、ガバナンスの崩壊に直結します。結論から申し上げますと、「業績」と「不倫の是非」を切り離し、就業規則に基づき男女双方へ公平かつ厳正な懲戒処分を行うことが、唯一の解決策となります。

外部(配偶者)からの要求への対応

結論として、不倫相手の配偶者からの人事上の要求に応じる法的義務はありません。 懲戒処分や人事異動は、あくまでクリニック内部の就業規則に基づく管理運営事項であり、外部の人間が口を出す立場にはないからです。

ただし、クリニック側が行う処分が「女性だけ給与が下がる異動」で「男性はお咎めなし」といった不均衡なものであれば、性差別や不当な不利益取扱いとみなされるリスクがあります。配偶者を納得させるためではなく、組織の規律を守るために、双方が犯した服務規律違反に対して均衡の取れた処分を下す必要があります。

「業績が高いから許す」が招くガバナンスの崩壊

「売上貢献度が高いから解雇したくない」という経営判断は、短期的には合理的ですが、長期的には致命的な経営リスクとなります。

  • ハラスメントの助長: 特定の有力者に甘い顔を見せることは、院内のセクハラやパワハラを容認する風土を作ります。
  • 「人格」重視の評価: 米国大手企業のGE(ゼネラル・エレクトリック)では、評価を「業績」と「バリュー(行動規範・人格)」の2軸で行います。業績が高くても組織の価値観を著しく汚す人材は、組織を去ることを求められます。なぜなら、技術は後から教えられますが、個人の根底にある価値観や人格を変えることは極めて困難だからです

経営学者のP.F.ドラッカーも、「職責に不誠実な者を管理職にするな!」と強く警鐘を鳴らしています。

「生産性が低いから解雇」のリスク

不倫をきっかけに、生産性の低いスタッフを解雇しようとすることは「不当解雇」で訴えられる可能性が非常に高いです。 仕事のパフォーマンス不足は、指導教育や人事評価を通じて段階的に対処すべき問題であり、不倫というプライベートな不祥事と混同して安易な解雇を行うことは、法的リスクを増大させるだけです。


本件のポイント

気づきを得た白衣の女性
  • 不倫当事者への処分は、就業規則に則り「公平」に行う。特定の性別や職種だけを優遇・冷遇してはならない
  • 配偶者からの人事要求には応じる必要はない。当事者間の民事問題(慰謝料等)は、会社は介入せず本人同士で解決させるべきである
  • 売上貢献度が高くても、組織の規律を乱す歯科医師を放置すれば、他の優秀なスタッフの離職や「ガバナンス不全」を招く
  • 人事評価においては、目に見える「業績」だけでなく、組織の理念を体現する「人格・誠実さ」を重視する基準を確立すべきである
  • 不倫を理由とした安易な解雇は無効とされるリスクが高いため、まずは厳正な「懲戒(戒告・減給等)」を行い、改悛の情が見られない場合に初めて解雇を検討する

医療機関は「信頼」で成り立つ組織です。院長が公私の区別を明確にし、身内や有力者に対しても毅然とした態度で規律を適用することが、スタッフが安心して診療に専念できる「強い組織」を作る第一歩となります。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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