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019 事務手続

【歯科クリニック向け】60歳以上のスタッフの給与が下がったら…高年齢雇用継続給付とは?

焦って書類を書く白衣の男性のイラスト

経験豊富なベテランスタッフに長く活躍してもらうための制度

超高齢化社会を迎えた日本では、60歳を過ぎても現役で働き続ける方が急速に増えています。

それは歯科クリニックにおいても同様ではないでしょうか。

そのような中で、「60歳の定年と同時に給与を下げざるを得ないけれども、豊富な経験と技術を持つベテランスタッフに長く安心して働いてもらいたい」という悩みを抱えているクリニックも多いことでしょう。

そんな時に活用できるのが「雇用保険高年齢雇用継続給付」という制度です。

この制度を適切に活用することで、ベテランスタッフの経済的負担を軽減し、長期間にわたって貴重な人材を確保することが可能になります。

雇用保険高年齢雇用継続給付とは?

高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者を対象に、60歳時点と比較して賃金が75%未満に低下した場合に給付金が支給される制度です。

給付金には、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の2種類があります。

この制度の最大のメリットは、賃金が下がったとしても給付金により収入の一部が補填されることで、スタッフが安心して働き続けられる環境を整えられる点です。

高年齢雇用継続基本給付金

60歳以降も引き続き同じ職場で働き続ける場合など、失業給付(失業手当)を受給せずに働き続け、賃金が下がった場合に支給されます。

支給期間は60歳到達月から65歳到達月までです。

高年齢再就職給付金

一度退職した後、失業給付を受給して再就職した場合が対象です。

支給期間は再就職日の翌日から最大2年間(基本手当の支給残日数によっては1年)となります。

受給要件と受給額

受給要件

高年齢雇用継続給付金を受給するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 60歳以上65歳未満の雇用保険一般被保険者であること
  • 被保険者期間が5年以上あること
  • 60歳以後の各月の賃金が、60歳到達時等の賃金の75%未満であること
  • 高年齢再就職給付金の場合は、基本手当の支給残日数が100日以上あること、および、安定した職業に就いたこと。

受給額

賃金の低下率に応じて、60歳以降の各月の賃金額の最大10%が支給されます。

具体例として、60歳到達前の月給が25万円だった場合の受給額を見てみましょう(左=60歳到達後の月給:右=給付金の受給額)。

  • 19万円:支給対象外(賃金低下率が76%のため)
  • 18万円:4,356円
  • 16万円:16,000円

2025年4月1日より前に60歳に到達した(もしくは被保険者期間5年を満たすことになった)被保険者の支給率は、最大15%となります。

手続きの具体的な流れ

高年齢雇用継続給付の手続きは、①受給資格の確認②支給申請の2つのステップに分かれます。

受給資格の確認では給付対象かどうかを判定し、支給申請では実際の給付金支給手続きを行います。

①受給資格の確認と、初回の②支給申請を同時に行うこともできます。

受給資格の確認

提出期限

  • 高年齢雇用継続基本給付金:60歳到達日(もしくは受給要件を満たした日)以降速やかに
  • 高年齢再就職給付金:雇用された日以降速やかに(資格取得届の手続きとあわせて行うことが望ましい)

受給資格の確認と同時に初回の支給申請を行う場合は、最初に支給を受ける月の初日から4か月以内に提出します。

提出先

クリニックの所在地を管轄するハローワークへ、郵送もしくは窓口持参で提出します。

また、電子申請による提出も可能です。

必要書類

  • 高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書
  • 賃金台帳、出勤簿、労働者名簿、雇用契約書など

高年齢雇用継続基本給付金の場合は、上記に加えて以下の書類が必要です。

  • 雇用保険被保険者60歳到達時等賃金証明書(雇用保険の支給を受けずに再就職した場合は、雇用保険被保険者離職票もしくは雇用保険受給資格者証)
  • 年齢確認書類(運転免許証、住民票などの写し)
  • 金融機関口座確認書類(通帳、キャッシュカードの写し等)(給付金の振込口座を登録する場合)

様式と作成方法

高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書

様式は、ハローワークインターネットサービスのホームページからダウンロードできます。

記入すべき主な項目
  • スタッフの基本情報(雇用保険被保険者番号、氏名、資格取得年月日、個人番号(マイナンバー)など)
  • 事業所番号
  • 支給対象年月とその月の賃金額、賃金の減額があった日数(初回の支給申請を同時に行う場合)
  • 給付金の振込口座情報(初回の支給申請を同時に行う場合)
  • スタッフ本人の署名

電子申請の場合、スタッフ本人の署名は「記載内容に関する確認書・申請等に関する同意書」のPDFを添付することで行います。
記載内容に関する確認書・申請等に関する同意書の記載例(厚生労働省)

雇用保険被保険者60歳到達時等賃金証明書

様式はハローワークで入手する必要があります(複写式のためインターネットでの入手不可)。

記入すべき主な項目
  • スタッフの基本情報(雇用保険被保険者番号、氏名、住所、生年月日、60才に達した日)
  • 事業所番号・事業所名・所在地
  • スタッフが60歳に達した日以前の賃金支払状況

支給申請

提出期限

2か月に一度(奇数月か偶数月)、ハローワークから指定された支給申請期間内に提出します(初回の支給申請のみ、最初に支給を受ける月の初日から4か月以内に提出)。

提出先

クリニックの所在地を管轄するハローワークへ、郵送もしくは窓口持参で提出します。

また、電子申請による提出も可能です。

必要書類

  • 高年齢雇用継続給付支給申請書
  • 賃金台帳、出勤簿、労働者名簿などの写し
  • 払渡希望金融機関指定届と口座情報確認書類(口座を登録していない場合)

様式と作成方法

支給申請書は受給資格確認時または前回の支給申請時に次回分が交付されます。

記入すべき主な項目
  • スタッフの氏名
  • 支給対象年月とその月の賃金額、賃金の減額があった日数
  • スタッフ本人の署名

手続きのポイント

高年齢再就職給付金と再就職手当

この2つの給付金は同時に受給できません。

両方の受給資格がある場合は、スタッフにどちらを希望するか確認しましょう。

年金との併給調整

高年齢雇用継続給付金を受給している方が特別支給の老齢厚生年金も受給している場合、年金の支給額が調整されることがあります。

該当するスタッフには、年金事務所での手続きが必要になる旨を必ず伝えましょう。

60歳到達後も賃金が下がらない場合

月の賃金額が60歳到達時の75%以上である場合は、給付金の支給対象とならないため申請の必要はありません。

ただし、将来的に賃金が下がる可能性もあるため、受給資格の確認だけは事前に行っておくことをお勧めします。

給付金が支払われないケース

受給要件を満たしていても下記に該当する場合、給付金は支給されません。

  • その月の賃金が支給限度額以上の場合
  • 給付金の支給額が低額の場合

複雑な手続きは専門家に任せて、診療や経営に専念しませんか?

雇用保険高年齢雇用継続給付の手続きは、受給資格の確認から始まり、その後も2か月に一度の継続的な申請が求められます。

書類の不備や提出漏れがないよう、院長先生ご自身やスタッフの方が他の業務と並行して正確に対応していくのは、決して簡単なことではありません。

社会保険労務士による代行手続きを活用することで、正確性の確保、継続性の維持、そして何より貴重な時間の節約が可能になります。

手続きミスによる給付金返還リスクの回避や、法改正への対応も含めて、専門家に任せることで安心して本業に専念していただけます。

高年齢雇用継続給付の手続きのみといった、スポットでの手続き代行も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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高齢者の雇用確保措置導入時の規程例をはじめ、無期転換申込権、在職老齢年金、同一労働同一賃金など、実務を進める上で疑問に思う点を具体的に解説しています。

  • この記事を書いた人

福島智美

文学研究者(文学修士)から人事業界に転身。慢性期病院で給与計算や社会保険事務を担当後、リハビリ病院開設を経験。転職して山口の部下になった縁で共に起業。社会保険労務士試験合格。親族に歯科医師や薬剤師など多数。

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