この記事では、従業員やその被扶養者である家族が出産したときに健康保険から支給される「出産育児一時金」の手続きについて解説します。

本記事は全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している被保険者向けの内容となっています。
他の健康保険制度に加入している場合は、各保険者に手続きの詳細をお問い合わせください。
出産育児一時金とは?
健康保険の被保険者である従業員または家族(被扶養者)が、妊娠4か月(85日)以上で出産1をした場合、健康保険から出産育児一時金が支給されます。
- 出産には、早産・死産・流産・人工妊娠中絶も含まれます。 ↩︎
出産育児一時金の直接支払制度とは?
出産育児一時金には、直接支払制度という支給方法があります。
この制度を利用すると、出産費用として健康保険から医療機関等に直接、出産育児一時金が支払われます。
直接支払制度を利用できるかどうかは、出産する医療機関等へ確認することになります。
出産育児一時金の手続きが必要なとき
出産育児一時金の手続き方法は、直接支払制度の利用有無や出産費用の額により、以下の通りとなります。
- 直接支払制度を利用し、かつ、出産費用が出産育児一時金を上回った場合
- 手続きの必要なし(一時金の額を上回った分の出産費用を医療機関に支払うのみ)
- 直接支払制度を利用し、かつ、出産費用が出産育児一時金を下回った場合
- 「健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書」を健康保険に提出し、一時金と出産費用の差額の支払いを受ける。
- 直接支払制度を利用しない場合
- 「健康保険出産育児一時金支給申請書」を健康保険に提出し、一時金の支給を受ける。

以下では、「出産育児一時金内払金支払依頼書」と「出産育児一時金支給申請書」の手続きの詳細について、それぞれ説明します。
出産育児一時金内払金支払依頼書の手続き
直接支払制度を利用し、かつ、出産費用が出産育児一時金の支給額を下回ったときは、「出産育児一時金内払金支払依頼書」を提出して、その差額を請求する手続きを行います。
出産育児一時金内払金支払依頼書の提出期限
出産日の翌日から2年間のうちに申請します。
上記の期限を過ぎると、時効により給付を受ける権利が消滅するので注意しましょう。
出産育児一時金内払金支払依頼書の提出先
加入している協会けんぽの都道府県支部に提出します。
出産育児一時金内払金支払依頼書の様式
出産育児一時金内払金支払依頼書の様式は、協会けんぽのホームページでダウンロードできます。
様式を印刷して手書きで記入するか、ダウンロードしたPDFに直接入力して印刷することも可能です。
協会けんぽ以外の医療保険制度に加入している場合、様式や添付書類については、それぞれの保険者に確認してください。
出産育児一時金内払金支払依頼書の作成
出産手当金支給申請書は2ページ構成で、それぞれ次のように記入・作成します。
- 1ページ目
- 被保険者の情報
- 振込先指定口座
- 2ページ目
- 出産した者の情報
- 出産の状況・出産にかかった費用
- (必要な場合のみ)医師・助産師もしくは市区町村の証明
記入に不安がある場合は、協会けんぽのホームページに掲載されている記入例を参照しましょう。
記入のポイント
- 出産したのが被扶養者(家族)であっても、1ページ目には被保険者(従業員本人)の情報と、被保険者の名義の振込口座を記入します。
- 医療機関の領収・明細書に出産年月日と出生児数(死産の場合は、死産年月日と妊娠週数)が記載されている場合、2ページ目に医師・助産師もしくは市区町村の証明を受ける必要はありません。
出産育児一時金内払金支払依頼書の添付書類
出産育児一時金内払金支払依頼書には、医療機関から交付される下記2点の書類の添付が必要です。
- 出産費用の領収・明細書のコピー
- 「専用請求書の内容と相違ないこと」「参加医療保障制度の対象であること(該当の場合のみ)」が明記されたもの
- 出産育児一時金の医療機関直接支払制度合意文書(直接支払制度に係る代理契約に関する文書)のコピー
- 「代理契約を医療機関等と締結していること」と、「保険者名」が明記されたもの
また、下記に該当する場合は、追加の添付書類が必要です。
- 「医療機関直接支払制度合意文書」に出産年月日・出生児数の記載がなく、かつ、支払依頼書に医師・助産師もしくは市区町村の証明を受けられない場合
- 出生(もしくは死産)が確認できる書類
- 戸籍謄(抄)本、戸籍記載事項証明書、出生届受理証明書、母子手帳(原本提示)、住民票など
- 死産証書(死胎検案書)のコピーなど
- 出生(もしくは死産)が確認できる書類
- 記号・番号が不明のため交付申請書にマイナンバーを記入した場合
- 本人確認書類
(本人確認書類貼付台紙(協会けんぽ))
- 本人確認書類
具体的な書類の名称や、上記以外のケースで必要となる添付書類については、協会けんぽのホームページをご確認ください。
出産育児一時金支給申請書の手続き
直接支払制度を利用しなかったときは、「出産育児一時金支給申請書」を提出して、出産育児一時金の支給申請手続きを行います。
出産育児一時金支給申請書の提出期限
出産日の翌日から2年間のうちに申請します。
上記の期限を過ぎると、時効により給付を受ける権利が消滅するので注意しましょう。
出産育児一時金支給申請書の提出先
加入している協会けんぽの都道府県支部に提出します。
出産育児一時金支給申請書の様式
出産育児一時金支給申請書の様式は、協会けんぽのホームページでダウンロードできます。
様式を印刷して手書きで記入するか、ダウンロードしたPDFに直接入力して印刷することも可能です。
協会けんぽ以外の医療保険制度に加入している場合、様式や添付書類については、それぞれの保険者に確認してください。
出産育児一時金支給申請書の作成
出産育児一時金支給申請書は2ページ構成で、それぞれ次のように記入・作成します。
- 1ページ目
- 被保険者の情報
- 振込先指定口座
- 2ページ目
- 出産した者の情報や出産の状況
- (必要な場合のみ)医師・助産師もしくは市区町村の証明
記入に不安がある場合は、協会けんぽのホームページに掲載されている記入例を参照しましょう。
記入のポイント
- 出産したのが被扶養者(家族)であっても、1ページ目には被保険者(従業員本人)の情報と、被保険者の名義の振込口座を記入します。
- 2ページ目に医師・助産師もしくは市区町村の証明を受けられない場合は、別途、添付書類が必要です。
出産育児一時金支給申請書の添付書類
出産育児一時金支給申請書には、医療機関から交付される下記1点の書類の添付が必要です。
- 直接支払制度を利用していないことを証明する書類(出産育児一時金の医療機関直接支払制度合意文書)のコピー
- 「直接支払制度を利用していないこと」が明記された領収・明細書のコピーでも可
また、下記に該当する場合は、追加で添付書類が必要です。
- 産科医療補償制度の対象分娩である場合
- 出産費用の領収・明細書のコピー
- 産科医療補償制度の対象分娩であることが明記されたもの
- 出産費用の領収・明細書のコピー
- 支給申請書に医師・助産師もしくは市区町村の証明を受けられない場合(下記いずれか1つ)
- 医療機関等の医師・助産師の証明書
- 出産したことを確認できる書類
- 戸籍謄(抄)本、戸籍記載事項証明書、出生届受理証明書、母子手帳(原本提示)、住民票など
- 死産証書(死胎検案書)のコピーなど
- 記号・番号が不明のため交付申請書にマイナンバーを記入した場合
- 本人確認書類
(本人確認書類貼付台紙(協会けんぽ))
- 本人確認書類
海外で出産した場合や相続人が申請する場合など、上記以外のケースの添付書類については、協会けんぽのホームページをご確認ください。
出産育児一時金の手続きを行ったあと
出産育児一時金の支払いが決定すると、支給額や振込日が記載された「出産育児一時金(内払金)支給決定通知書」が届きます。
その後、指定した口座に出産育児一時金が振り込まれます。
なお、申請書の記入内容や添付書類に不備がある場合、協会けんぽから申請書の修正や添付書類の追加提出を求められることがあります。
その場合は、速やかに対応しましょう。
出産育児一時金の手続きを円滑に進めるためのポイント
出産育児一時金の手続きは、被保険者(従業員)本人が行うことになっていますが、実務的には会社が従業員をサポートすることが望ましいと考えられます。
産休に入ったり子が出生したタイミングで、会社側が従業員へ申請用紙の記入や添付書類の準備について案内し、必要に応じて協会けんぽへ支払依頼書・支給申請書を提出するという流れで手続きを行うとよいでしょう。
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