
この記事では、従業員の採用が決定した後に会社や事業主が行う手続きの概要について解説します。
従業員を採用するときの主な手続き
従業員の採用決定後、事業主が行う主な手続きは以下の通りです。
- 労働条件通知書・雇用契約書の作成
- 採用手続きの説明
- 人事給与や出退勤システムの採用処理
- 採用者の受け入れ準備
- 社会保険の被保険者資格取得手続き
- 雇用保険の被保険者資格取得手続き
- 住民税の特別徴収切替手続き
- 採用時の給与計算
- 退職金制度の加入手続き
- その他の手続き
以下、それぞれの詳細について説明します。
労働条件通知書・雇用契約書の作成
労働条件通知書
従業員を採用する際、事業主は労働者に対し労働条件を書面等で明確に示すよう義務付けられています(労働基準法第15条)。
この労働条件の明示は、一般的に労働条件通知書を労働者に交付することで行われます。
厚生労働省のホームページに掲載されているモデル様式などを参考に労働条件通知書を作成し、採用者へ交付しましょう。
採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。具体的には何を明示すればよいのでしょうか。(厚生労働省)
雇用契約書
雇用契約書は、労働条件の内容を具体的に明記し、労働契約が成立したことを書面で確認するための書類です。
口頭での契約も法的には有効ですが、雇用契約書を締結することで、使用者(会社・事業主)と労働者(従業員)、それぞれの権利義務が明確になり、後のトラブルを未然に防ぐことができます。
労働基準法に定められている事項が全て記載されていれば、通知書の様式には特に制約がありません。
そのため、「労働条件通知書兼雇用契約書」のように、両方の役割を果たす書面を使用しても差し支えありません。
採用者への手続き案内
採用に伴う各種手続きや提出書類について、採用者にしっかりと案内しましょう。
採用者が記入する必要があるものや、準備に時間を要する書類もあるため、採用日まで十分な余裕をもって案内することが望ましいでしょう。
案内事項の一例
- 労働条件通知書の交付
- 雇用契約書の締結
- 提出書類の案内
- 基礎年金番号が分かる書類(年金手帳、基礎年金番号通知書)
- 雇用保険証
- 住民票記載事項証明書
- 給与所得者の扶養控除申告書
- 給与所得者の源泉徴収票(年末調整の際に提出を受けてもよい)
- 個人住民税納付書(普通徴収の場合)
- 健康診断個人票(採用前3か月以内に実施したもの)
- 誓約書
- その他、社内様式(身上届、通勤手当申請書、マイカー通勤申請書、など)
- 個人番号(マイナンバー)情報の提供依頼
- 健康保険の扶養加入手続きの説明
- 初出勤日の流れ
これらはあくまで一例です。
会社や採用者の状況に応じて、過不足なく説明を行いましょう。
人事給与や出退勤システムの採用処理
人事・勤怠管理や給与計算のシステムを使用している場合は、それぞれのシステムの手順に従って採用手続きを進めます。
また、他に使用している社内システムがある場合は、採用に伴うアカウントの追加や権限設定の変更などを忘れずに行いましょう。
採用者の受け入れ準備
採用者が業務を行うために必要な備品や制服などの手配を行います。
また、必要に応じて辞令の作成といった準備も準備も進めましょう。
社会保険の被保険者資格取得手続き
採用日から5日以内に、管轄の日本年金機構事務センターへ「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を提出し、社会保険の被保険者の取得手続きを行いましょう。
また、採用者に健康保険の扶養に入る家族がいる場合は、「健康保険被扶養者異動届」も合わせて提出する必要があります。
これらの手続きに際しては、採用者から必要な情報や書類を提供を受ける必要があります。
採用手続きの説明の際に、忘れずに協力を依頼するようにしましょう。
雇用保険の被保険者資格取得手続き
採用日の属する月の翌月10日までに、管轄のハローワークへ「雇用保険被保険者資格取得届」を提出し、雇用保険の被保険者資格取得手続きを行いましょう。
住民税の特別徴収への切り替え
採用者が自分で住民税を納めている場合(普通徴収)は、特別徴収への切替手続きを行いましょう。
ただし、住民税が非課税である場合や、当年分の住民税を全額納付済である場合は、手続きの必要はありません。
採用後に初めて給与計算をするとき
社会保険料は原則、1か月遅れで徴収することとされています。
そのため、社会保険料の控除は採用月の翌月に支給する給与から開始することになります。
採用月に給与の支給がある場合、社会保険料を控除しないように注意しましょう。
例:2月採用者の2月分社会保険料は、3月に支給する給与から控除します(2月に支給する給与からは控除しない)。
また、採用後に初めて給与を支給する際は、労働条件通知書や賃金規程と照らし合わせ、支給・控除内容に誤りがないか必ず確認しましょう。
退職金制度の加入手続き
企業年金や各種共済などの退職金制度を導入している場合は、各制度の定める手順に従って、加入手続きを行いましょう。
漏れなくスムーズに採用手続きを進めよう
従業員を採用する際は、様々な準備や手続きが必要となります。
これまでご紹介した手続きはあくまで一例であり、会社や従業員の状況によって必要な手続きは異なります。
必要な手続きをまとめたチェックリストを作成するなどして、漏れなくスムーズに手続きを進められるようにしましょう。
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