就業規則なくして人事マネジメントなし

良質な就業規則は職場のモチベーションを上げる
適正な手続きを経て定められた就業規則は、職場において労働基準法に次ぐ法的効力を有します。労働基準法が使用者に対する禁止事項や遵守事項を定めた法令であるのに対し、就業規則は従業員が就業にあたって守るべき規律を明文化した職場ルールブックです。
就業規則を定めることで、職場の秩序を維持し、労働トラブルや不正を未然に防ぐだけでなく、労務管理に関する事務コストを削減することができ、結果的にミスや誤解も生じにくくなるため、労使間の関係が改善され、労働生産性も向上するメリットがあります。
10人未満の事業所なら就業規則は不要なのか?
労働基準法は、常時10人以上の労働者を使用する事業主に対して就業規則の作成と所轄の労働基準監督署への届出を義務付けています。一方で歯科クリニックの平均従業員数は事務職を含めて5人程度ですので、多くの歯科クリニックには就業規則の作成義務はありません。
しかし地域社会に良質な診療サービスを持続的に提供し続けるには、適切な人事マネジメントが肝であり、また院長先生が従業員に対して業務命令権や懲戒権を行使するには就業規則の根拠が必要であることから、事業規模の関わらず就業規則の作成は必須であるといえます。
就業規則にはどんなルールを設けるべきか?

就業規則に定める条項は法律で決まっている
それでは実際に就業規則を作成しよう…となった段階で、多くの院長先生は「いったいどんな条項を設けりゃいいんだ?」と悩まれると思います。しかしご安心ください。実は就業規則に定めるべき条項は、あらかじめ労働基準法の中で具体的に明示されているのです。
それはどのような業種や職場であっても必ず明記しなければならない「絶対的必要記載事項」と、もし自院で制度を設けるのであれば明記しなければならない「相対的必要記載事項」、そして明記するかどうかは事業主の任意とする「任意的記載事項」の3つとなります。
絶対的必要記載事項(3項目)
- 労働時間に関すること
- 賃金に関すること
- 退職に関すること
相対的必要記載事項(8項目)
- 退職手当に関すること
- 賞与および最低賃金に関すること
- 労働者の費用負担に関すること
- 安全衛生に関すること
- 職業訓練に関すること
- 災害補償や私傷病の扶助に関すること
- 賞罰に関すること
- その他全ての労働者に適用されるルール
任意的記載事項(一例)
- 昇進昇格に関すること
- 人事評価に関すること
- 福利厚生に関すること
- その他
就業規則の作成手順

就業規則を作成するための基本ステップ
就業規則は、法律(労働基準法施行規則)に定められた手順と様式に従って作成し、所轄の労働基準監督署に届出した後に、全従業員がいつでも就業規則の全文を閲覧できるような方法でもって周知しなければ、院内の就業ルールブックとして有効とはなりません。
- 素案の作成
就業規則の素案づくり(厚生労働省のモデル就業規則を使うと便利) - 法定記載事項のチェック
労働契約法や労働安全衛生法などとの照合(社労士に依頼するのが安全) - 労働者からの意見書の取得
労働者の過半数代表者から意見書を取得する(反対意見でもOK) - 所轄労働基準監督署へ届出
就業規則届、就業規則、労働者の意見書の3つを所轄の労基署へ届出する - 全労働者への周知
説明会や研修会をセットして、就業規則の内容についてしっかり周知する - 就業規則を職場に備え付ける
全文を全労働者がいつでも閲覧できるようにする(違反は30万円以下の罰金)
労働者の過半数代表者の選出は、労働者の互選あるいは投票などの民主的な方法である必要があります(院長先生の指名はNG)。また過半数代表者は、労働基準法に定める使用者以外の者から選出します。例えば主任クラス迄はOKですが、課長(科長)クラス以上はNGです。
就業規則を改正するとき…
就業規則は、法改正や社会経済情勢の変化にあわせて、定期的にアップデートすることが望ましいですが、就業規則の内容を、経営側の一方的都合でもって、労働者の不利に変更することは、原則として次の4つの要件を満たさない限り認められないので要注意です。
- 労働者の不利益の度合いが許容できるものであること
- 就業規則を変更しなければならない必要性が認められること
- 変更後の就業規則の内容の相当性が認められること
- 就業規則の変更について労使間でしっかり協議されていること
就業規則の改正も、就業規則を新たに定める時の手順に準じて行います。労働者の過半数代表者の意見書を添えて、所轄の労働基準監督署に届出し、届出後はすみやかに改正就業規則の全文を、全従業員に周知しなければなりません。
就業規則の内容によっては労使協定が必要な場合があります。特に法定時間外労働・法定休日労働を行う場合は、36協定の締結と所轄の労働基準監督署への届出が必須ですのでご注意ください。
従業員満足を高める就業規則とは?

患者満足と従業員満足は表裏一体
医療業は労働集約型産業であり対面サービス業でもあります。従業員のマインドやスキルが効率的な医療経営に大きな影響を及ぼすうえに、従業員の質が患者満足度にダイレクトに反映されるため、兎にも角にもまず人事マネジメントの質を高めてゆかねばなりません。
その第一歩となるのが良質な就業規則の確立ですが「なぜ就業規則を変えると会社は儲かるのか?(廃盤)」という書籍に、従業員満足を高め、パフォーマンスを最大化する就業規則作成のポイントが書かれていましたので、この場をお借りしてご紹介させて頂きます。
<会社が儲かる就業規則の6つのポイント>
- 自社における従業員の働き方、休みの取り方、賃金のもらい方、辞め方などのルールが明確になっていること
- 就業ルールに関する問い合わせに対して、上司や人事部、経営者が時間を取られることが無いものであること
- ルールが不明瞭であるために、社員の間に不安が広がり、優秀な従業員が離職してしまわないものであること
- 問題従業員が入社してしまった場合には、速やかに会社から去ってもらうことができるようなものであること
- 従業員として取るべき行動、取ってはいけない行動が明確で、自社のブランド化に貢献できるものであること
- どう働けば、どう報いられるのかを明確にし、会社と従業員が目指すゴールを合致させられるものであること
おすすめの書籍
前述の書籍は20年以上にわたって人材育成や組織開発の領域を探求し、就業規則への造詣も深い社労士の下田直人さんの著作でしたが、その後何度も労働関係法令が改正されたため現在は廃盤となっています。最新版は以下のとおりですので、ご興味があればぜひご覧ください。

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