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01 人事のしごと

歯科クリニックには関係ない!?労働安全管理の基本と実務

労働安全衛生=人事管理の基本

労働安全衛生の定義

良質な人事マネジメントを考える上で、労働安全衛生は避けて通れない領域です。昨今の人事マネジメント界隈では、エンゲージメントやインクルージョンといったキラキラワードが流行っていますが、労働安全衛生のスキップしてこれらに取り組むことはナンセンスです。

労働安全衛生とは、労働者が安全かつ健康的に就労できる職場環境づくりをいいます。労働安全衛生の「安全」は事故が起きないこと、「衛生」は健康障害に罹患しないことをいいます。労働安全衛生確立のために事業者に課された義務と責任は、次の法令に規定されています。

労働安全衛生の法令

労働安全衛生に関する法令は多種多様です。それらのうち次の4つの法律は、労働安全衛生管理の中核をなす代表的なものです。これらの本則に施行規則や厚生労働省の省令および通達などが合わさって、労働安全衛生管理に関する法令グループを形成しています。

  • 労働基準法
    労働者を使用する者の義務や禁止事項を定めた法律。労働安全衛生に関する条項には、労働者の健康増進のための年次有給休暇、妊産婦あるいは年少者の就労制限、労災時の経済的補償義務などがある。
  • 労働安全衛生法
    労働基準法の労働安全衛生の条項を拡充し、スピンアウトして制定された、労働安全衛生の主柱となる法律で、労働安全管理体制の構築や安全衛生委員会の運営、健康診断の実施・報告義務などを規定。
  • 労働者災害補償保険法
    労災が発生した場合の災害補償の具体的内容について定めた法律で、労働基準法の災害補償義務を補完。関連通達では過重労働による脳・心疾患あるいはストレスによる精神疾患の労災認定基準を明示。
  • 労働保険の徴収に関する法律(徴収法)
    労災保険料の徴収について定めた法律で、労働安全衛生の実施について直接規定する条項は設けられていないが、労災事故発生の多寡に応じて労災保険料率を増減するメリット制などが明記されている。

労働安全衛生の業種区分

労働安全衛生法では、労災事故の発生度合いの多寡あるいは労災事故の重篤さなどに応じ、国内の各業種を次の3区分に分類してます。

  • 屋外産業的業種(労災リスクが極めて高い)
    林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業
  • 屋内産業的工業的業種(労災リスクが比較的高い)
    製造業、ガス・熱供給業、水道業、通信業、自動車整備業ほか
  • その他の業種(労災リスクが低い)
    金融業、不動産業、飲食業、小売業、保健医療業ほか
    ※安全管理者(後述)の選任義務なし

労働安全衛生法が事業者に義務付けている労働安全衛生管理体制の構築や健康診断などは、これらの区分にもとづいて実施の内容や頻度などが異なります。

一般企業の労働安全衛生はどうなっているか?

やつれた医者のイラスト

一般企業の労働安全衛生管理体制

前章の続きです。たとえば製造業など比較的労災リスクが高いとされる業種では、従業員50人以上の事業場に安全管理者、衛生管理者、産業医を選任し、所轄の労働基準監督署に届け出る義務があります。従業員1,000人以上の大規模な工場では、総括安全衛生管理者も必要です。

上記の安全衛生管理体制の組織とあわせて、毎月1回以上の頻度で安全衛生委員会も開催しなければなりません。安全衛生委員会では事業者側と労働者側および産業医など社外専門家で構成されるメンバーが、職場に必要な安全衛生上の措置やその進捗などについて協議します。

健康診断は規模に関わらず必須

あわせて事業者は、従業員に対して一般健康診断と特殊健康診断を実施する義務を負います。前者は従業員の健康状態の把握を目的として、後者は法定の危険有害業務に従事する従業員に対し、業務に起因する健康障害の防止を目的として、それぞれ実施しなければなりません。

なお健康診断を実施したら、事業者は所轄の労働基準監督署に実施結果を報告する義務もあります(一般健康診断は従業員50人超の事業場のみ義務)。また従業員50人超の事業場では、毎年1回のストレスチェックテストを実施する義務もあります。

歯科クリニックは法的義務がない

一方で、歯科クリニックは安全管理者の選任義務のない「その他の業種」に分類されます。歯科クリニックの平均従事者数は院長先生や事務方を含めても5~6人程度ですので、衛生管理者や産業医の選任義務はもちろん、衛生委員会を開催する義務もありません。

一般健康診断は従事者数の多寡に限らず実施義務がありますが、放射線業務従事者の特殊健康診断を除き、所轄の労働基準監督署への報告義務はありません。ストレスチェックテストの実施は、50人未満の事業場においてはあくまでも任意とされています。

歯科クリニックに労働安全衛生は不要なのか?

打合せする医療職

医療業界特有の労災リスク

労働安全衛生法に定められている労働安全衛生措置の多くについて実施義務の無い歯科クリニック業界ですが、一方で医療の現場には、針刺し事故や感染症の罹患、あるいはペイハラ(患者ハラスメント)といった、医療業界特有の労災リスクがたくさん潜んでいます。

また医療業界では、医療ライセンスを有するスペシャリスト達の協働によって、はじめて良質な診療サービスを実現できます。昨今の人材不足の状況下において、労働安全衛生すらまともに確立できていないような職場に、有能な人材が集まってくるとは思えません。

労災事故はしっかり認定される

もうひとつ注意すべきは、労働基準法をはじめとする労働法令は、従業員を1名でも使用する事業場に対して適用されるということです。つまり衛生管理者や産業医の選任義務の無い小規模クリニックであっても、従事者が労災認定されれば、使用者は災害補償義務を負います。

災害補償に際しては、まず労災保険が代行しますが、それゆえに労災保険も労働者を1名でも使用する事業場であれば強制適用となり、労災保険料は全額事業主負担とされています。これらを考えると、小規模な歯科クリニックであっても労働安全衛生の確立は不可欠なのです。

まず衛生委員会を開催しましょう

ただし50人未満のクリニックが衛生管理者を選任し、所轄の労働基準監督署に届出しようとしても受理されません。健康診断の実施結果を報告しようとしても、やはり受理してもらえません(特殊健康診断は人数に関わらず報告の義務がありますのでご注意ください)。

そこで小規模な歯科クリニックにおいて、労働安全衛生を確立するために行うべきことは、まず院長先生が職場の衛生管理に関する知識を習得し、自ら中心となってスタッフと定期的な衛生委員会を開催し、PDCAを繰り返しながら職場の危険・不衛生要因を解消することです。

労働安全衛生のまとめ

安全安心な職場は人材確保のマスト

冒頭の伏線回収です(笑)。従業員満足度や定着率を高めるための最短ステップは、エンゲージメントやインクルージョンといった流行りの施策や華やかな人事イベントなどではなく、まず労務コンプライアンスと労働安全衛生の確立と基本動作の徹底に地道に取り組むことです。

私はこれまでいくつかの組織において、四半世紀にわたって人事マネジメントの実務に携わってきましたが、職員の定着率の悪い組織に共通するのは、労務コンプライアンスや労働安全衛生などの普遍的なルールが確立されておらず、基本動作がまるでできていないことです。

第一種衛生管理者テキストのすすめ

自院の労働安全衛生を確立するには、まず院長先生が知識を深めることです。そこで本記事では、院長先生に第一種衛生管理者のテキストを一読してみることをお勧めします。試験を受けて免許を取得する必要まではありません。労働衛生の概論を知るのが大切なのです。

労働衛生の全体像を認識しているだけでも、我々のような院外の専門家と連携しやすくなります。例えるなら我々社会保険労務士が、医療経営や歯科・歯科口腔外科領域の専門書を読んで、歯科クリニック業界における人事コンサルティングのニーズを探るのと一緒です。

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衛生管理者免許には第一種と第二種があり、後者は危険有害業務を除いた業種に限定されます。保健医療業は第二種衛生管理者を選任すればOKですが、歯科クリニックは「歯科医師による特殊健康診断」を依頼される側でもあるので、一読するなら第一種がお勧めです。


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  • この記事を書いた人

山口光博

社会保険労務士、人事部長経験者。かつて急性期病院の総務課長や系列クリニックの医事課長として勤務したこともある。歯科・歯科口腔外科の事務局も務め、医療機器や診療材料の購買、電カル&レセコン導入などを担当する。

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