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【歯科クリニック向け】育児中のスタッフの年金を守る手続き「養育期間標準報酬月額みなし措置」を解説

焦って書類を書く白衣の男性のイラスト

スタッフの育児支援、年金のことまで考えていますか?

産休・育休を経て職場に復帰するスタッフを迎えることは、歯科クリニックにとって大変喜ばしいことでしょう。

経験豊富なスタッフが戻ってくることで、患者さんへのサービス向上や新人教育にも大きな力となります。


しかし、育児と仕事の両立のために時短勤務や時間外勤務の免除を行うスタッフについて、気をつけておきたい点があります。

それは「時短勤務や時間外勤務の免除により給与が下がると、将来もらえる年金額も下がってしまう」という問題です。

このような不利益を防ぐため、「厚生年金保険の養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」という制度があります。

本記事では、この制度の概要と手続きの流れを解説します。

養育期間標準報酬月額みなし措置とは?

制度の基本的な仕組み

養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」は、3歳未満の子を養育する厚生年金保険の被保険者の給与が下がった場合に、将来もらえる年金額に不利益が生じないようにするための特例措置です。

通常、厚生年金保険では毎月の給与額に基づいて「標準報酬月額」が決定され、この金額をもとに将来の年金額が計算されます。

育児のため時短勤務や時間外勤務免除を行い給与が下がると、この標準報酬月額も下がり、将来の年金額も減ってしまいます

そこで「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」の適用を受けると、子の養育期間中に標準報酬月額が下がった場合、年金額の計算においては「養育開始前の標準報酬月額」がその期間の標準報酬月額とみなされます

これにより、育児による給与の低下が将来の年金額に影響しないよう配慮されています。

みなし措置の対象となる期間と条件

対象期間

この措置を受けられるのは、3歳未満の子の養育を開始した月から、子が3歳に達する日がある月の前月までです。

対象者

3歳未満の子を養育する厚生年金保険の被保険者で、養育期間中の標準報酬月額が養育開始月の前月の標準報酬月額を下回っている方が対象となります。

この措置は厚生年金保険の制度です。
国民年金に加入している場合は、この手続きは不要です。

手続きの流れ

提出期限

みなし措置の対象となるスタッフから申し出があった時、すみやかに提出します。

措置の遡及適用は、最大で申出日の前月までの2年間について認められます。

基本的にスタッフからの申出に基づきクリニックが手続きを行いますが、スタッフが産休・育休から復職する際に、みなし措置について案内することをお勧めします。

提出先

クリニックの所在地を管轄する日本年金機構事務センターもしくは年金事務所へ、郵送もしくは窓口持参で提出します。

また、電子申請による提出も可能です。

必要書類

届出様式

厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を使用します。

添付書類

  • 戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書(原本
  • 住民票の写し(原本 ※提出日から90日以内に発行されたもの

これらの添付書類は、申出書にスタッフと養育する子の個人番号を記入した場合は省略できます

様式の入手先

申出書の様式は、日本年金機構のホームページからダウンロードできます。

同サイトには記入例も掲載されているため、記入の際に参考にするとよいでしょう。

手続きのポイントと注意点

国民健康保険組合加入者の取り扱い

歯科クリニックでは、国民健康保険組合と厚生年金保険に加入しているケースがあります。

この場合でも、年金について厚生年金保険に加入していれば、養育期間標準報酬月額みなし措置の手続き対象となります。

みなし措置の適用希望について、忘れずにスタッフへ確認しましょう。

退職者の手続き

手続きは事業主であるクリニックが行いますが、退職者については本人が直接手続きを行うことができます。

養育期間が終了した時の手続き

養育する子が3歳に達した場合や、スタッフが退職して厚生年金保険の被保険者資格を喪失した場合は、自動的にみなし措置の適用が終了するため、終了の手続きは不要です。

一方、以下の場合には、すみやかに「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例終了届」を提出する必要があります。

  • 対象となる子を養育しなくなったとき
  • 養育していた子が死亡したとき

複雑な手続きは歯科クリニック専門の社労士にお任せください

この養育期間標準報酬月額みなし措置の手続きは、添付書類の準備や申出書の作成など、日々の診療で忙しい院長先生にとって負担となることも少なくありません。

当事務所は歯科クリニックに特化した社会保険労務士事務所として、社会保険の手続き代行から、給与計算、日々の労務管理まで幅広くサポートし、院長先生の負担を軽減いたします。

「養育期間標準報酬月額みなし措置の手続きだけ」といったスポットでの事務手続き代行も承っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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  • この記事を書いた人

福島智美

文学研究者(文学修士)から人事業界に転身。慢性期病院で給与計算や社会保険事務を担当後、リハビリ病院開設を経験。転職して山口の部下になった縁で共に起業。社会保険労務士試験合格。親族に歯科医師や薬剤師など多数。

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