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01 人事のしごと

歯科クリニックの経営者が知っておくべき労働契約の基本

労働契約を軽く見るとトラブルになる

相談する女性のいらすと

増加する民事上の個別労働紛争相談件数

北海道労働局プレスリリース(令和5年7月31日発表)より抜粋して転載

上記の画像は北海道労働局が令和5年7月31日に報道各社向けのプレスリリースに掲示されていた、北海道における総合労働相談件数(=労働トラブル)の発生件数と推移をまとめたグラフです。北海道だけでも毎年4万件前後の労働相談が当局に寄せられているのは驚きです。

注目すべきは総合労働相談件数に占める「民事上の個別労働紛争相談件数」の割合が激増していることです。これは労働組合と会社との間で起こる集団的紛争と異なり、労働契約や労働条件、ハラスメント、不当解雇などを巡って個別の労使間で生じた労働トラブルをいいます。

いい加減な労働契約はトラブルのもと

長年、人事業界で働いてきた経験から申し上げると、労働トラブルの多くが労働契約の不備に起因して生じているケースが多いです。具体的には労働契約に明記すべき労働条件にヌケモレがあったり、酷い職場になると労働契約そのものを締結していないといった具合です。

一方で、歯科診療をはじめとする医療業界では、有能な人材の採用と定着こそ、医療経営の生命線といっても過言ではありません。そもそも人員配置基準をクリアしなければ開設できませんし、有資格者でも知識が乏しくスキルが未熟であれば、医療事故を招く恐れもあります。

院長先生必見!労働契約の基礎知識

契約書を突きつけるヤクザのいらすと

一般の契約と労働契約はどう違うのか?

契約のルールは民法に定められています。民法は契約自由の原則にもとづき契約内容は当事者の任意としていますが、労働契約では、使用者の方が労働者よりも強い立場にあるため、労働者にとって一方的に不利な契約とならないよう労働法令で契約条項を規定しています。

労働契約のルールは労働基準法と労働契約法に定められています。労働基準法は労働契約に先立ち使用者の禁止事項と労働者に対して負うべき義務を、また労働契約法は労働契約を締結する際に労使それぞれが遵守すべき基本ポリシーをそれぞれ定めています。

労働契約法の基本ポリシー

労働基準法は昭和22年に民法の雇用契約条項を拡充して独立分離した法令です。それから65年の歳月が流れ、働き方の多様化にともない労働契約を巡るトラブルが増加したことから、平成20年に労働基準法の労働契約条項がスピンアウトして誕生したのが労働契約法です。

  1. 労使対等の原則
    労働条件は事業主と労働者が対等の立場で交渉し合意にもとづき決定すること
  2. 均等考慮の原則
    労働条件は事業者と労働者の双方のバランスを考慮して決定すること
  3. 仕事と生活の調和の原則
    労働条件はワークライフバランスに配慮した内容であること
  4. 信義誠実の原則
    事業主と労働者は労働契約を信義に従い誠実に履行すること
  5. 権利濫用禁止の原則
    事業主と労働者は労働契約に定めた権利を濫用してはならないこと

なお、実務においては、労働契約の内容を決める際に、労働基準法や労働契約法のほか、男女雇用機会均等法、障害者雇用促進法、高年齢者雇用安定法、パートタイム・有期雇用労働法、最低賃金法なども考慮しなければなりませんので、専門家に相談することを推奨します。

労働契約の前に労働条件通知書が必要

労働条件通知書のいらすと

労働契約は口頭だけでも成立する

あまり多くの人に知られていないのですが、民法では契約の際に必ずしも契約書を取り交わす必要はなく、契約は口約束だけでも成立するとしています。そして民法から派生した特別法たる労働基準法や労働契約法にも、実は契約書の作成義務は明記されていないのです。

しかし現実的には口約束だけでは事後のトラブルに発展することが多いため、労働基準法は雇入れに際して労働条件通知書の交付を、また労働契約法では書面によって労働条件を明示することを、それぞれ使用者に義務付けています(前者は必須義務、後者は努力義務)。

労働条件通知書に記載すべき事項

労働条件通知書に明記すべき事項には、労働者に必ず書面で通知しなければならない絶対的明示事項と、その勤務先にて特定の労働条件を決める場合には、書面もしくは口頭で通知しなければならない相対的明示事項の2つがあります。

  • 労働契約の期間
  • 有期契約の場合は更新の条件
  • 就労場所と従事する業務内容
  • 始業と終業の時刻、休憩時間、残業や休日出勤の有無
  • 給与の決め方と計算方法および支給日
  • 昇給の有無
  • 退職に関する事項と解雇事由
  • 退職金の支給対象者や支給額、支給方法
  • 賞与の支給対象者や支給額、支給方法
  • 労働者の費用負担
  • 安全および衛生に関する事項
  • 職業訓練の実施
  • 業務災害時の補償および私傷病への扶助
  • 表彰および懲戒
  • 休職時の取り扱い

パートタイマー・契約社員は注意が必要

パートタイム・有期雇用労働法では、パートタイマーや契約社員を雇用する場合、事業主は雇い入れする労働者に対し、前述の労働条件通知書に特定事項を追記したものを交付しなければならないと定めています。パートの歯科衛生士や事務員を雇用する際は要注意です。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 雇用改善のための社内相談窓口

もう一点注意すべきことは、使用者の都合でパート・アルバイトや契約社員を人員整理できるように、短期労働契約を何度も繰り返すようなやり方は労働契約法で禁止されています。

また労働基準法は、労働契約を3回以上あるいは1年以上にわたり継続した労働者を雇い止めしようとした場合は、解雇とみなすとしています。つまり30日以上の解雇予告期間か解雇予告手当の支払いが必要であり、不合理な解雇は無効とされることもあります。

今どきは昭和時代の常識は通用しません

×サインを出す女性

入社後の人事異動の予定も事前通知する

前述の労働条件通知書に、入社後の人事異動の予定について明記することが、令和5年の改正労働基準法で新たに義務化されました。したがって昭和の頃から連綿と続く「いったん採用し、その後の働きぶりをみて配置を決める」といった労働条件の提示は法令違反となります。

つまりこれからは有能な人材を採用し、自院に長く定着してもらうには、新規に採用したい人材の職務要件を明確にし、入社後のキャリアコースを予め計画しておくようなジョブ型雇用ベースの人事制度が主流となってゆくでしょう。

おすすめの書籍

最近はインターネットから労働条件通知書や労働契約書の無料フォーマットを入手できるようになりましたが、労働契約の基本ルールをしっかり理解せずに雛形に頼ってしまうと予期せぬ労働トラブルを招きます。まずは手頃な実務書で全体像を把握しましょう。


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  • この記事を書いた人

山口光博

社会保険労務士、人事部長経験者。かつて急性期病院の総務課長や系列クリニックの医事課長として勤務したこともある。歯科・歯科口腔外科の事務局も務め、医療機器や診療材料の購買、電カル&レセコン導入などを担当する。

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