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008_そのほかのFAQ

【職場秩序】昇格した途端に周囲を「からかう」士長(リーダー)。厳重注意から懲戒へのステップ

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

疑問な白衣の女性

当院は、複数の分院を運営する歯科医療法人です。この春、中堅の歯科衛生士を「士長(チーフ)」に昇格させたのですが、それ以来、職場の雰囲気が著しく悪化しています。

他のスタッフ(歯科衛生士や助手)から複数の相談があり、聞き取りを行ったところ、「士長が周囲をからかったり、品性を欠く陰口や不平不満を撒き散らしたりしている。彼女の態度が変わらない限り、今の部署では一緒に働けない」という切実な声が上がりました。

本人に事実確認をしたところ、驚いたことに以下のような回答でした。 「確かに昨年まではそのような言動をしていた。しかし、士長に昇格してからは自覚を持ち、言わないように気をつけている。実際、昇格後は一度もしていない」

昇格前は認めているものの、「今はやっていない」と言い張る彼女に対し、信頼はすでに地に落ちています。他のスタッフからは「そんな人を昇格させた法人側の判断もおかしい」と不満が出ており、中には「改善されないなら辞める」と言う者もいます。

  1. 本人の「昇格後はしていない」という弁解をどう評価し、指導すべきでしょうか?
  2. 現時点では就業規則違反(懲戒)とまでは言えませんが、将来の処分も見据えて、どのような「文書指導」を残しておくべきですか?
  3. このような状況を見過ごしていた分院長や現場の管理職に対し、どのような注意喚起が必要でしょうか?

ご相談への回答

できるビジネスパースン

歯科クリニックのような密接なチームで診療を行う現場において、リーダー(士長)による「からかい」や「陰口」といった不適切な言動は、単なるマナーの問題ではなく、組織のガバナンスを揺るがす重大なリスクです。結論から申し上げますと、本人の主観的な弁解を鵜呑みにせず、周囲の客観的な評価とのギャップ(認知バイアス)を指摘した上で、改善を求める事項を明確に文書化して伝達すべきです

弁解の評価と「認知バイアス」への対処

本人が「今はやっていない」と主張していても、周囲の全員が「改善が必要」と訴えているのであれば、そこに深刻な「認知バイアス」(自己評価と他者評価の大きなギャップ)が生じています。

  • 自己認識の甘さ: 本人は態度を改めたつもりでも、過去に蓄積された周囲の不信感は容易には拭えません。また、本人が「親密さの表現」と錯覚して行っている言動が、周囲には「不快なからかい」と受け取られている可能性もあります。
  • 過去の自認の重み: 「昨年まではやっていた」と認めていること自体、彼女の言動がもともと服務規律や行動規範に照らして不適切であったことの証左です。

指導に際しては、通報者の感情的な意見は除外しつつ、客観的な事実(いつ、誰に、どのような影響を与えたか)に基づいて、「あなたの認識と職場の実態はこれだけ乖離している」という事実を突きつける必要があります。

文書指導のステップ:厳重注意から懲戒へ

現時点で直ちに懲戒処分を下すのが難しい場合でも、将来の解雇や降格といった「権利行使」を有効にするためには、改善の機会を与えたプロセスを記録に残す(エビデンスの確保)ことが不可欠です。

以下のステップで「厳重注意」を行います。

  • 書面による通知(指導書): 口頭だけでなく、会社が把握した懸念点と改善を求める具体的事項を文書化して手交します。その際、SBI法(Situation:状況、Behavior:行動、Impact:影響)を用いて、客観的な事実とそれが周囲に与えた影響のみを伝えると、本人の言い逃れを防げます。
  • 事前通告: 指導書の中に、「今後も改善が見られない場合は、就業規則第◯条に基づき、懲戒処分(戒告・減給等)や士長の解任を検討する」旨を明記し、本人に署名・捺印を求めます。
  • 改善計画(MBO): 改善すべき態度を具体的な目標に落とし込み、定期的な面談で進捗を確認します。

管理監督者の責任とガバナンス

現場の混乱を放置していた管理職(分院長等)に対しても、厳しい注意喚起が必要です。

  • 管理放棄の指摘: 職場環境の悪化に気づかなかったのであれば「観察力の欠如」、知っていて黙認していたのであれば「管理放棄」です。これは他のスタッフに対する「安全配慮義務違反」にも繋がりかねない問題です。
  • 人格重視の評価へ: 経営学者のP.F.ドラッカーが説くように、技術は教えられても人格を変えることは困難です。「職責に不誠実な者を管理職にするな!」という原則を徹底し、今後の昇進評価では業績だけでなく、組織のバリュー(行動規範)を体現しているかを最重視する基準を確立すべきです。

本件のポイント

気づきを得た白衣の女性
  • リーダーの不適切な言動は「認知バイアス」が原因であることが多く、本人と周囲の認識のズレを客観的な事実で埋める作業が必要である。
  • まずは「指導書」という形で改善事項を明文化し、改善が見られない場合のペナルティを事前通告することで、将来の懲戒処分の法的有効性を高める。
  • 「処分を行う」という能動的な表現より、「就業規則に基づき処分とする」という受動的な言い回しを用いることで、院長個人との感情的対立を避け、ルール運用の客観性を強調できる。
  • 改善が見られない、あるいは関係修復が不可能な場合は、安全配慮義務の観点から配置転換も検討する。ただし「不当な動機」がないことなどの要件が必要である。
  • リーダーの選任ミスは優良なスタッフの離職(離職の悪循環)を招くため、採用・昇進の厳格化が最大の経営リスクヘッジとなる。

職場秩序の回復には、院長が「規律を乱す者には役職者であっても毅然と対応する」という姿勢を示すことが、残されたスタッフの安心感と信頼を取り戻す唯一の道です。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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