障害者の雇用義務
障害者の法定雇用率
障害者雇用促進法では、事業主に対し、常時使用する従業員数(週所定労働時間20時間以上かつ勤続1年以上)の2.5%に相当する数の障害者を雇用する義務を定めている。
この法令の雇用義務の対象となる障害者の種類は、身体障害者(1〜6級)および知的障害者ならびに精神障害者(発達障害を含む)であり、雇用すべき障害者数の算定は、障害の程度と勤務時間の長短によって1人の障害者を2人〜0.5人に換算する。
1人÷2.5%=40人なので、従業員40人以上を使用する事業主に、1人以上の障害者を雇用する義務があることになる。
障害者雇用納付金制度
障害者雇用促進法は、事業主の障害者雇用を促進するために、障害者雇用納付金および障害者雇用調整金の制度を設けている。これは法定雇用数に満たない事業主から納付金を徴収し、法定雇用数を超える事業主に調整金として配分するものである。
障害者雇用納付金は法定雇用人数に不足している人数×50,000円×未達月数、障害者雇用調整金は法定雇用人数を超過している人数×29,000円×超過月数であるが、これらは常時100人を超える労働者を使用する事業主のみ適用される。
常時使用する従業員が100人以下の事業主は、障害者雇用納付金および障害者雇用調整金の対象外だが、法定雇用人数を超過している場合には、超過人数×21,000円×超過月数の計算による報奨金が支給される。
障害者雇用納付金の申告と障害者雇用調整金(報奨金)の申請は毎年5月15日までとなっており、特に障害者雇用調整金と報奨金については、申請期限を過ぎると支給されない。
障害者雇用状況報告
障害者雇用促進法により1人以上の障害者を雇用する義務のある事業主は、毎年6月1日時点における障害者の雇用状況について、厚生労働省の所定の様式によって、7月15日までに公共職業安定所に報告する義務がある。
なお障害者雇用状況報告には障害者雇用推進者を記入する欄があり、厚生労働省では人事部長クラスなどを選任することを想定しているが、現時点では障害者雇用推進者の選任は、あくまでも事業主の努力義務となっている。
障害者雇用に関する注意事項
障害者差別の禁止
障害者雇用促進法では、事業規模や事業の種類を問わず、全ての事業主に対し、募集・採用、採用後の賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生制度など、あらゆる待遇について障害者と健常者との差別的な取り扱いを禁止している。
合理的配慮の提供義務
人材の募集や採用にあたって、障害者から障害の特性への配慮について申し出があった場合に必要な措置を講ずること、また採用後において障害者が業務を円滑に遂行できるように、障害の特性に配慮して施設を整備したり、補助者を配置することを合理的配慮の提供という。
合理的配慮の提供は事業主の義務であるが、障害者の要望が事業主にとって過重な負担となるような場合にまで、合理的配慮を提供する義務を負うものではなく、あくまでも過重な負担とならない範囲において、必要な合理的配慮を提供すればよいとされている。
障害者職業生活相談員の選任
障害者を5人以上雇用する事業場では、障害者職業生活相談員を選任し、障害者の雇用に関して次の業務を行わせなければならない。
- 適職の選定、職業能力の向上など職務内容に関する相談および指導
- 障害に応じた施設設備の改善など作業環境の整備に関する相談および指導
- 労働条件、職場の人間関係など職場生活に関する相談および指導
- 余暇活動に関する相談および指導
- その他職場適応の向上に関する相談および指導
障害者職業生活相談員は、高齢障害求職者雇用支援機構の実施する講習を受講した者の中から選任し、事業場を所轄するハローワークに届け出る。
障害者を解雇するとき
障害者は健常者に比べて再就職が困難であることが多いため、事業主が障害者を解雇しようとする時は、事業場を所轄するハローワークに解雇届を提出しなければならない。
なお障害者の解雇に関しても、通常の労働者と同じように労働契約法の解雇権濫用法理および労働基準法の解雇制限、解雇予告等の規定が適用される。
障害者雇用のまとめ
障害者の法定雇用率は年々引き上げられており、建設業など障害者雇用が難しいとされる業種について、特例的に設けられていた除外率(障害者の法定雇用率を一定の割合で免除するもの)も近い将来に廃止されることになっている。
障害者雇用はあらゆる事業場において避けて通れない課題であるが、障害者雇用をスムーズに行うポイントは、自社の全ての業務を作業レベルに因数分解し、たとえば障害の程度や稼働できる時間など、障害者ごとの特性に応じてアレンジすることである。