そもそも通勤手当はどんな手当?
通勤の定義
労働者災害補償保険法では、「通勤」を、労働者が就業するために、合理的な経路と手段によって移動する行為であるとし、具体的には、住居と就業場所との往復もしくはこれに先行あるいは後続する住居間の移動であるとし、業務の性質を有するものを除くとしている。
住居と就業場所との往復に”先行あるいは後続する住居間の移動”とは、単身赴任先のアパートから自宅に帰省する場合や、自宅から単身赴任先のアパートへ戻る行為をいう。
通勤手当の支払い義務
事業主は、労働者に通勤手当を支払う義務はない。民法によると、労働者は、事業主に対して賃金を受け取る債権を有する一方で、労働サービスを提供する債務を負っている。この債務は持参債務とされ、債務者が債権者を訪問(出勤)して債務を履行することになっている。
通勤手当と旅費交通費のちがい
事業主は労働者の通勤費を支弁する義務が無いため、労働法令や社会保険制度では、通勤手当を支給する場合は賃金(報酬)とみなすとしている。旅費交通費は業務上の経費であり、出先で労働者が交通費を立て替えた場合は、後日に経費精算する(よって所得や賃金ではない)。
給与計算における通勤手当
通勤手段と源泉所得税
税法において通勤手当は、一定額までは労働者が立替払いした通勤費を支弁するものとし、それを超える部分については労働者の所得とみなしている。通常、公共交通機関の定期代は全額が非課税とされ、マイカー通勤の場合は一定額を超える部分が所得として課税される。
No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当(国税局)/ No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当て(国税局)
通勤手当と社会保険料
労働法令および社会保険各法(健康保険法、厚生年金保険法、労働保険徴収法)において、通勤手当は報酬もしくは賃金として、保険料算定の基礎とみなすとしている。なお通勤手当を支給する旨を、就業規則(賃金規程)に明記した場合は、事業主に支払い義務が生じる。
標準報酬月額・標準賞与額とは?(協会けんぽ)/ 労働保険料の算定基礎となる賃金早見表(神奈川県労働局)
労働基準法の通勤手当
労働基準法では、平均賃金の算定においては通勤手当を含めるものとし、時間外手当など割増賃金を算定する際の基礎賃金の額は、通勤手当を除外するものとしている。なおテレワークの場合、主たる就業場所がオフィスなら通勤手当、自宅なら旅費交通費となる。
通勤手当のまとめ
法令や制度により取り扱いが違う
通勤手当は一般的すぎて、あまり深く考えたことが無い…という人は少なくない。一方で通勤手当は、賃金制度の設計や給与計算を行う上で避けては通れず、民法と労働基準法、所得税法、社会保険各法における取り扱いの相違に注目して認識を整理しておく必要がある。
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