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005_労働安全のFAQ

【電離放射線健診】レントゲン撮影に従事するスタッフ。6ヶ月ごとの特殊健診と省略基準

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

疑問な白衣の女性

当院は、歯科医師3名、歯科衛生士5名、歯科助手3名が勤務する歯科クリニックです。日々の診療では、インプラントの術中確認や歯周病の診断のために、デンタル、パノラマ、C撮影が頻繁に行われています。

最近、スタッフの健康管理について見直していたところ、レントゲン撮影の介助や準備に従事するスタッフには「電離放射線健康診断」が必要であると知りました。しかし、以下の点についてよく分からず困っています。

  1. 一般的な定期健康診断は「年1回」ですが、放射線健診はなぜ「6ヶ月に1回」も実施しなければならないのでしょうか?
  2. 被ばく線量測定(個人線量計)の結果が極めて低いスタッフであっても、毎回全ての検査項目(血液検査など)をフルで実施しなければならないのでしょうか?
  3. 健診結果の「個人票」は30年間も保存しなければならないと聞きましたが、本当でしょうか? 小規模なクリニックで30年分の書類を保管し続けるのは現実的ではありません。

スタッフからは「また血を抜かれるのは負担だ」という声もあり、法的な基準に基づいた適切な運用方法を整理したいと考えています。


ご相談への回答

できるビジネスパースン

歯科診療においてエックス線検査は不可欠な診断ツールですが、それに従事するスタッフの健康を守ることは、法律(電離放射線障害防止規則)で義務付けられた事業者の責務です。歯科クリニックにおける特殊健診の実務ポイントを解説します。

対象者と実施時期:なぜ「6ヶ月ごと」なのか

電離放射線健康診断(特殊健診)の対象となるのは、「放射線業務に常時従事し、管理区域に立ち入る労働者」です。これには歯科医師だけでなく、撮影の準備や患者の固定などで管理区域(レントゲン室等)に日常的に出入りする歯科衛生士や歯科助手も含まれます。

実施のタイミングは以下の通りです:

  • 雇入れ時 または 当該業務への配置換え時
  • その後、定期的に6ヶ月以内ごとに1回

放射線による影響は蓄積される可能性があるため、一般的な健診よりも短いサイクルでのチェックが求められています。なお、この健診は労働者数にかかわらず、実施のたびに所轄の労働基準監督署へ報告する義務があります。

検査項目の省略基準:実効線量「5mSv」が鍵

「毎回全員に血液検査を行うのは負担だ」という懸念については、一定の条件を満たせば、継続的な健診において項目を省略することが可能です。

【省略可能な条件】 前年1年間に受けた実効線量が5mSvを超えず、かつ、その年1年間に受ける実効線量も5mSvを超えるおそれがない者については、医師が必要ないと認める場合に限り、以下の項目を省略できます:

  • 白血球数および白血球百分率の検査
  • 赤血球数の検査および血色素量またはヘマトクリット値の検査
  • 白内障に関する眼の検査(※ただし令和3年の改正により、眼の等価線量が一定基準を超える場合は注意が必要)
  • 皮膚の検査

歯科クリニックでの通常勤務における被ばく線量は、防護エプロンの着用や適切な距離の確保により、この「5mSv」を大幅に下回ることが一般的です。産業医や健診医と相談の上、線量計の数値を根拠として「医師の判断」による省略運用を検討するのが実務的です。

「30年間」の保存義務と外部への引き渡し

ご質問の通り、電離放射線健康診断個人票の保存期間は法律で「30年間」と定められています。これは、放射線による健康被害(がん等)が、曝露から長い年月を経て発症するリスクがあるためです。

ただし、クリニック内で30年間ずっと保管しなければならないわけではありません。

  • 5年間保管した後、厚生労働大臣が指定する「指定記録保存機関(公益財団法人放射線影響協会)」に引き渡すことで、自院での保管を免れることができます。

この仕組みを利用することで、法的な保存義務を果たしつつ、クリニックの事務負担を軽減することが可能です。


本件のポイント

気づきを得た白衣の女性
  • 放射線業務に従事し管理区域に立ち入るスタッフには、6ヶ月ごとの特殊健診が義務である
  • 被ばく線量が極めて低い(年間5mSv以下)場合、医師の判断で血液検査等の項目を省略できる
  • 健診結果の報告は、従業員数に関わらず労働基準監督署へ行う必要がある
  • 個人票の30年間保存義務は、5年経過後に指定機関へ引き渡すことで実務的な解決が可能である
  • 「雇入れ時」や「配置換え時」の健診は省略できないため、新採用スタッフには必ず実施しなければならない

適切な特殊健診の運用は、スタッフに「当院は安全管理を徹底している」という安心感を与え、離職防止や職場環境の改善にも繋がります。線量測定の結果をエビデンスとして、効率的かつ確実な健康管理体制を整えていきましょう。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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