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006_福利厚生のFAQ

【通勤手段】歯科衛生士の訪問口腔衛生指導における「自転車通勤」許可。賠償保険料は個人負担で問題ないか?

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

首をかしげる医師

当院では、地域ニーズに応えるため「歯科訪問診療」と「訪問歯科衛生指導」に注力しています。これまで訪問先への移動には法人の軽自動車を使用していましたが、近隣の患者様や住宅密集地の訪問先も増えており、機動力の高い自転車での移動を希望する歯科衛生士が出てきました。

そこで、スタッフの私物自転車を業務(訪問)と通勤に併用することを許可しようと考えています。その際、万が一の事故に備えて、自転車賠償責任保険への加入を必須条件にする予定ですが、以下の点について教えてください。

  1. 自転車の賠償保険料をスタッフの個人負担とすることに、法的な問題はありますか?
  2. スタッフが「自腹なら保険に入りたくない」と無保険で運転し、業務中に事故を起こした場合、クリニック側が責任を問われるリスクはありますか?
  3. 自転車通勤や業務利用を認めるにあたり、就業規則や規程にはどのような運用ルールを定めておくべきでしょうか?

クリニックとしてはスタッフの利便性を尊重したい一方、組織としての安全管理体制も万全にしたいと考えています。


ご相談への回答

できるビジネスパースン

歯科衛生士が機動的に動ける自転車は、訪問歯科の現場で非常に有効な手段です。一方で、近年の自転車事故における賠償額は高額化しており、マイカー通勤と同様に厳格なルール整備が求められます。

保険料の個人負担の妥当性

結論から申し上げますと、自転車の賠償保険料をスタッフ個人に負担させることに法的な問題はありません。 自転車はあくまで個人の所有物(私物)であり、自転車を利用することで通勤時間の短縮や利便性の向上といったメリットを享受するのは本人であるため、その維持管理コスト(保険料)は受益者である本人が負担すべきという考え方が一般的です。

ただし、クリニック側が特定の車種の購入を強制したり、業務上の必要性のみから加入を命令したりする場合には、一定の費用補助が必要になる可能性がある点には留意が必要です。

「使用者責任」のリスクと回避策

最も注意すべきは、スタッフが無保険の状態で重大な交通事故を起こした場合、クリニック側が被害者に対して「使用者責任(民法第715条)」を問われるリスクがあることです。 たとえ「私用自転車」であっても、業務中の移動(訪問先への移動など)で使用している実態があれば、事業主は監督責任を免れられません。

このリスクを回避するためには、単に「保険に入ってください」と口頭で伝えるだけでなく、「保険加入を許可の絶対条件」とし、エビデンスを徴収する仕組みを構築する必要があります。

実務的な運用ルールの整備

自転車の業務利用や通勤を許可する際は、以下のステップでルール化することをお勧めします。

  • 許可申請制の導入: 自転車通勤・業務利用を希望するスタッフに対し、「自転車利用許可申請書」の提出を義務付けます。
  • 保険証券の写しの徴収: 申請時には、損害賠償保険の「保険証券の写し」の添付を必須とします。マイカー通勤規程において車検証や自賠責証書を提出させるのと同様の運用です。
  • 補償基準の設定: 保険の補償内容について、「対人・対物賠償1億円以上」など、クリニックが求める基準を明確に定めておきましょう。
  • 団体保険の検討: スタッフの負担軽減と加入漏れ防止のために、クリニックが損保会社と「団体保険契約」を締結し、保険料を給与から天引きする仕組みを導入することも有効な解決策となります。

これらのルールを既存の「マイカー通勤規程」に自転車に関する条項として追加、あるいは「自転車利用規程」として独立させて就業規則に紐付けることで、安全管理体制が明確化されます。


本件のポイント

気づきを得た白衣の男性
  • 自転車賠償保険料は、私物を利用するメリットを享受するスタッフ本人の負担としても法的に差し支えない
  • 業務中の事故にはクリニック側の「使用者責任」が及ぶため、無保険運行を徹底的に排除する仕組み作りが不可欠である
  • 「保険証券の写し」を定期的に提出させる等、マイカー通勤管理に準じた事務フローを確立すべきである
  • 自転車移動中の事故も、原則として業務遂行性と業務起因性が認められれば「業務災害(労災)」の対象となる。
  • 歯科訪問診療料の算定において、自転車やスクーターの移動費用は所定点数に含まれているため、別途患者様に請求することはできない点に注意が必要である

自転車という便利な道具を安全に活用するためには、コンプライアンスに基づいた「許可のルール」をスタッフと共有することが、スタッフとクリニック双方を守ることに繋がります。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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