人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。
依頼者からのご相談

当院は、歯科医師2名、歯科衛生士3名、歯科助手2名が勤務する歯科クリニックです。先日、5年前に当院を退職した元スタッフ(歯科衛生士)から、「ハローワークで必要だと言われたので、当時の離職票を発行してほしい」という連絡がありました。
彼女の経歴を確認したところ、退職の約2年前に結婚を機にパートタイムへ契約変更しており、その時点で週の所定労働時間が20時間未満となったため、雇用保険の資格を喪失していました。つまり、資格喪失から数えると実に7年以上、退職からも5年が経過しています。
院内の書類を確認しましたが、雇用保険関係の書類保存期間は過ぎており、当時の控えも残っていません。事務長からは「そんな昔のものは発行義務がないのではないか」と言われていますが、以下の点について教えてください。
- 5年以上も前に資格喪失・退職した元スタッフに対し、離職票を発行する法的な義務はありますか?
- なぜ今さら離職票が必要になるのでしょうか?ハローワークで5年前の書類を求められる特殊なケースがあるのですか?
- 当院にデータや控えが残っていない場合、どのように対応すべきでしょうか。ハローワークに照会する方法などはありますか?
ご相談への回答

歯科クリニックのような小規模な職場では、過去のスタッフから突然の書類請求を受け、当時の記録が見当たらず困惑されるケースは少なくありません。結論から申し上げますと、書類の保存義務期間は過ぎていますが、元スタッフが「教育訓練給付」などの特例を利用しようとしている場合、ハローワークを通じて再発行や照会に協力することが実務上望ましい対応となります。
離職票の発行義務と書類の保存期間
雇用保険法上、事業主には雇用保険に関する書類の保管義務が課されています。具体的には、被保険者に関する書類は「その完結の日から4年間」、その他の書類は3年間と定められています。
今回のケースでは、資格喪失から7年、退職から5年が経過しているため、法的な保存義務期間はすでに満了しています。したがって、当時の資料が残っていない場合に、事業主が自力で離職票を再作成する義務は法的にはないと考えられます。
5年後に離職票が必要となる「特殊なケース」
なぜ今さら離職票が必要になるのか、考えられる主な理由は以下の2点です。
- 教育訓練給付金の受給(最大20年の延長特例): 通常、教育訓練給付金は離職後1年以内に受講を開始する必要がありますが、妊娠、出産、育児、疾病、負傷などの理由で引き続き30日以上教育訓練を開始できない場合、最大20年まで受給資格期間を延長できる特例があります。元スタッフが資格取得のためにスクールに通おうとしている場合、当時の「被保険者番号」や「被保険者期間」を証明するために離職票が求められている可能性があります。
- 失業給付の受給期間延長特例(最大4年): 病気や出産などで引き続き30日以上就業できない場合、受給期間を最大4年まで延長できる仕組みがあります。5年前だとこれにも該当しませんが、当時の加入履歴(被保険者番号)を確認して、後の職歴と通算するためにハローワークから持参を指示された可能性もあります。
データがない場合の実務対応
クリニックにデータや控えが残っていない場合、最もスムーズな解決策は「ハローワークへの照会」を案内することです。
- ハローワークでの再交付申請: 離職票や被保険者証の再交付、および被保険者期間の照会は、本人が管轄のハローワークへ出向くことで直接行うことが可能です。本人の身分証明書があれば、過去の加入履歴をデータで確認し、再発行を受けることができます。
- クリニック側の協力: もしハローワークから「事業主の証明」を求められた場合は、当時の賃金台帳(源泉徴収簿)など、残っている資料の範囲内で証明を行うことになります。しかし、資料が一切ない場合は、ハローワークに対し「保存期間経過により資料がない」旨を伝え、行政側の記録に基づいた処理を依頼することになります。
本件のポイント

- 雇用保険の被保険者に関する書類の保存義務は「4年」であり、それを過ぎた古い離職票の作成義務は原則としてない。
- ただし、教育訓練給付金の20年延長特例など、古い加入履歴の証明が必要になる法的なケースは存在する。
- 離職票の再発行や加入期間の確認は、本人がハローワークで直接手続きすることが可能である。
- クリニックに控えがない場合は、元スタッフに対し「直接ハローワークで再交付の手続きができる」旨を丁寧に伝え、当時の被保険者番号がわかるもの(被保険者証の控え等)があればそれを提供することが親切な対応となる。
元スタッフが新たなキャリアアップを目指している場合、当時の雇用保険記録は彼女にとって貴重な資産となります。クリニックとして過失がないのであれば、行政手続きの進め方をアドバイスしてあげることで、良好な関係(あるいは円満な解決)を維持できるでしょう。
本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。
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